兼定の鍔


そうです、

『歴女同盟』の今週号はスクープ

うひゃひゃ。

なんたって、

「和泉守兼定の鍔の秘密」の特集号ですからね。



兼定↓は、この写真にも写ってますね~。
歴女同盟

 新人物往来社『聞きがき新選組』表紙


この兼定、

刀に関しては多くの方が調べていますが、

意外なことに、

その鍔の研究は少ないのよね。


兼定の鍔↓には、

二つの柄が散りばめられています。

左上の五弁の形をした陽刻から、

「梅の柄じゃない?」などと言われてました。
歴女同盟
        和泉守兼定の鍔の写し

( 画像は弐葉堂様HPよりお借りしました。)



歴女同盟
いえいえ、

これは正しく、七夕の鍔なんです。

きっぱり。



左上の陽刻

鍔にあった二つの柄のうち、

先ず、左上の柄ですが、
五弁の花のような形↓ですよね、確かに。

歴女同盟

         兼定の鍔左上の陽刻 

(画像は弐葉堂様HPよりお借りしました。)





でも、拡大写真↑をよ~く見てサーチ下さい。

若干かなりピンボケカメラですが、

葉脈が刻まれてるのがわかります。


だから、
この五弁の花びらのようなものは、

歳さんが好きな梅の花ではないんです。



歳さんが梅を愛でたことは有名です。

彼は俳句に梅の花を詠みました。

だけど、

彼の愛刀の鍔の柄は梅の花ではありません。

コレは葉っぱなんです






右下の長四角

鍔の左上にある図が葉っぱと判ったら、

次は右下の図柄。


この謎の右下の長四角の謎を解きましょう。  

コレが何かを解いて下さったのは

刀剣博物館の鑑定家の先生です。


この長四角の図柄をご覧になって、

刀剣博物館の先生は即座に、

墨ですよ。」と答えて下さいました。


言われてみれば、成る程と解りますね。

参考に、本物の墨の写真を並べておきました↓。

歴女同盟
歴女同盟

       兼定の鍔左上の陽刻             墨のイメージ

               (左写真は弐葉堂様HPよりお借りしました。)




これで、

兼定の鍔の二つの柄が明らかになりました。

「葉っぱ」と「墨」です。




兼定の鍔の解題

では、

「葉っぱ」と「墨」の柄があると、

なんで「七夕」の意匠になるのか?



この辺りの謎解きはさすがにプロ。

刀剣博物館の先生の解題はお見事でした。



昔、七夕の願い事は五色の短冊ではなく、

葉っぱに書たそうです。

「葉っぱ」と「墨」は「七夕」の定番の柄だとか。



博物館の先生は参考にと、

歳さんの鍔とは別の

「七夕」の鍔の写真を見せて下さいました。

その写真の鍔には、筆の柄も付いていましたッケ。



どうやら、

「七夕」という意匠は、

鍔の柄として珍しいものではなく、

兼定の図柄の組み合わせも

一つのパターンだったみたいです。




七夕は留守模様

こうした「七夕の鍔」のように、

古典文学や古事逸話を題材としながら、

主人公が登場しない図柄を、

留守模様」と呼ぶそうです。

これも、刀剣博物館の先生から教わりました。



そのものズバリの柄じゃなくて、

ちょっと謎解きの楽しみを提供する「留守模様」。

いいですねー、こういう遊び心って。



以上が、

10年前に刀剣博物館を訪れ、

『碧血碑』※にリポートした内容です。

(※新選組研究大家菊地明先生が編集・刊行する同好誌。)


葉っぱを特定!

ここから下は、

10年の月日を経て、

今回のブログ・アップのために、

「七夕の願い事を書く葉っぱ」について、

テレビネットで、調べ直してみたものです。



近頃は、

ネット検索の環境が整い、

瞬時に情報が集まります

世の中、便利になりました。


そこでヒットしたのが、

藤原俊成女のこの歌↓です。

 

 たなはたの とわたるふねの 梶の葉に

          いくあきかきつ 露のたまづさ



昔の人が七夕の願い事を書いたのは

梶の葉っぱでしたとサ。
と、いうことで、

兼定の鍔の葉っぱは「梶の葉」に決定グー

本物の梶の葉の画像↓をアップしましたので、

ご覧ください。

歴女同盟

                梶の葉

(「季節の花300」よりお借りした画像です。)




梶の葉は六日に笹に吊るしたあと、

場所によっては、海に流していたそうです。

とわたるふねの 梶の葉に」というのは、

流される葉を小舟に見立てたのかしら。




ところで、

梶の葉と似た植物に、こうぞがあります。

丈夫で安価な和紙の材料には、

楮の木の皮を使ったそうです。

梶と楮↓はお仲間なんですね。

歴女同盟

                梶の葉

(「季節の花300」よりお借りした画像です。)



楮・梶の葉ですが、面白いんですよ。

モンステラのように、葉の形が変化します。

アーモンド型だった葉の先が次第に分かれて、

モミジ型になるんですよ。

ほらね↓。

歴女同盟                    

          いろいろな形の梶の葉

(「季節の花300」よりお借りした画像です。)

                   


一枚の葉をデザイン化するには、

アーモンドよりモミジ型の方が絵にしやすい。

それで、兼定の鍔の梶の葉は

モミジ型なんでしょう。



江戸時代の七夕

あと、蛇足のようですが・・、一応。

歳さんの頃は消費生活も向上してますから、

江戸時代後期の庶民は

七夕の願事を短冊に書くのが普通でした。



広重の絵↓を見ると、

江戸後期の七夕がよく解ります。

歴女同盟

    市中繁栄七夕祭[名所江戸百景]

           歌川広重 1856~58


風にたなびく飾り↑が涼しげ。

さすがは広重ですね。



どうですか、

この繁栄ぶり↓。

これが開国直前の江戸でした。
歴女同盟
市中繁栄七夕祭・部分[名所江戸百景]

           歌川広重 1856~58



これが歳さんたちの頃の七夕だったのね。

情緒満点で、ただもうため息だわ。


歳さんの場合は多摩にいたから、

願い事を書いた短冊は

淺川に流していたのでしょうか・・・。


               つづく

                 ごまめ