文部科学省が「歴史総合」の設置を発言してから10ヵ月が経つ。
今年3種類の世界史を担当し、昨年は日本史も担当した私からすると、今の教科・科目編成に限界を感じている。
そもそも、世界史の教科書を週4時間で終わらせることは不可能だ。
日本の7~8割の高校生が使用している山川出版社の『詳説世界史』。
4部16章からなるこの教科書。小単元である項目は、293個ある。
私は、歴史を「面白い」と感じる深さで授業をするには、1項目1時間必要だと考えている。
高校の標準授業数は、1単位あたり35週間である。
つまり、教科書を終わらせるには、293項目÷35標準時数=8.4時間が必要である。
さらに定期試験と返却、行事や天災などで授業は思い通りにならないため、実際には10時間程度が必要である。
また、日本史についても255項目÷35標準時数=7.3時間が必要である。
よって、世界史の編成を考え直すことは急務と考える。
では、次期学習指導要領をどのように変えればよいのか。
次の2点を取り上げる。
Ⅰ.歴史総合の位置づけ
Ⅱ.世界史の編成
Ⅲ.大学入試
Ⅰ.歴史総合の位置づけ
学術会議などでは、「前近代や近現代をやるべき」との声がある。
しかし、「世界史A」でもルネサンスから始めて、複雑になる帝国主義の手前で終わるのが現状である。
飛ばしたとしても、短い期間で世界大戦の本当の意味を理解するのは困難である。
現在歴史教育に求められていることは、近代の幕開けや明治維新の先生方のお話ではない。
それよりも、「なぜ中国は領海侵犯を繰り返すのか」「なぜイスラム国は残虐な行為を繰り返すのか」といった、ごく最近の歴史を知ることが、最優先であると私は考えている。
生徒から見て、おじいさん、おばあさんが生まれたくらいから現在に至る歴史をよく理解することが、今後の社会の展望を予測すると同時に、それ以前の歴史への興味が沸くと思われる。
そこで私は、歴史総合は「4単位」(3単位に減少可)とし、今の世界史Bと日本史Bの「二つの世界大戦」「戦後史」を単純に統合することから始めると良いと考える。
学術会議などの記録では、歴史総合は「2単位」となるとあるが、前近代を入れればより不可能であることがわかる。
以下は、山川出版社の教科書のこれらの部分の目次と項目数である。
世界史
第14章 二つの世界大戦 7時間
1.第一次世界大戦とロシア革命 7時間
2.ヴェルサイユ体制下の欧米諸国 8時間
3.アジア・アフリカ地域の民族運動 8時間
4.世界恐慌とファシズム諸国の侵略 6時間
5.第二次世界大戦 6時間
第15章 冷戦と第三世界の独立
1.戦後世界秩序の形成とアジア諸地域の独立 6時間
2.米ソ冷戦の激化と西欧・日本の経済復興 3時間
3.第三世界の台頭と米・ソの歩み寄り 8時間
4.石油危機と世界経済の再編 4時間
第16章 現在の世界
1.社会主義社会の変容とグローバリゼーションの進展 4時間
2.途上国の民主化と独裁政権の動揺 2時間
3.地域紛争の激化と深刻化する貧困 5時間
4.現代文明の諸特徴 3時間
合計69時間
日本史
第10章 二つの世界大戦とアジア
1.第一次世界大戦と日本 5時間
2.ワシントン体制 4時間
3.市民生活の変容と大衆文化 3時間
4.恐慌の時代 4時間
5.軍部の台頭 5時間
6.第二次世界大戦 10時間
第11章 占領下の日本
1.占領と改革 6時間
2.冷戦の開始と講和 5時間
第12章 高度成長の時代
1.55年体制 5時間
2.経済復興から高度成長へ 4時間
第13章 激動する世界と日本
1.経済大国への道 4時間
2.冷戦終結と日本社会の動揺 4時間
合計59時間
単純に合計しても、世界史69時間+日本史59時間=128時間である。
128時間÷35標準時間数=3.7時間である。
もちろん、現行の日本史Aのように、世界大戦に入る前の「プロローグ」は必要になる。
しかし、世界史と日本史の重複部分などを再編する過程で数時間削り、その分を調べ学習などに使えば、4時間あれば、とても充実した授業が展開できそうである。
(つづく)