ちょっと寄り道
夫の歌から(主に娘がモデルの歌)
水無月はや畳の上に寝(ね)みだるる吾 子(あこ)の誰かをときどき踏むも
(1983年 子等 小学生)
目の見えぬ我(われ)に少女の見つけ来し葛咲くといふそはどこの道
(1986年 子等 小学生)
銘銘が部屋を持ちたる喜びに湧く三人子(みたりご)の声の明るさ
(1990年 家 新築)
ほととぎす萌ゆるを妻が言ひし後(あと)長女の初潮耳うちに告ぐ
(1990年 子等 小中学生)
子ども等(ら)が食(く)はず寝しゆゑ口赤く夜を笑へる実柘榴(みざくろ)はあり
しもやけの姉の足にとわが少年烏瓜(からすうり)二つ提(さ)げて帰るも
(1992年 子等 小中学生)
大学に娘(こ)を入(い)るる今日沈丁花の咲き初(そ)めて寒き日と記憶せむ
(1996年 娘 18歳)
帰省する娘(こ)に見せばやと花植うる妻の心の通ずるかどうか
(1997年 娘 19歳)
病(や)んで無給(むきゅう)の我慢(がまん)の我(われ)を父として生(う)まれ来(き)しなりがんばりやなり
泣き虫の我(わ)があひるの子成人(せいじん)しその飾(かざ)る髪(かみ)我(わ)が目に見えず
(1998年 娘 20歳)
帰省せし子らに食(く)はさむ自然薯(じねんじょ)をとろろとろとろすり鉢に擂る
(2003年 子等 社会人)
(私、まだ、生まれていないころよ)