鳥取県の地元紙


日本海新聞より


転載させて頂きます




当時に引き

戻される

つらさ


有名人の自死

報道影響


若林一美


新型コロナウイルス禍が

深刻化した2020年以降


若者や女性の自死が

増えたという。


有名人の自死が大きく

報じられることもあった。



そういうニュースが

流れるたび、


自死で子を亡くした

遺族の方たちは



『(亡くした)当時に引き

  戻されてつらい』

  と訴える。


 普段はふたをしている

 記憶がよみがえり


『その時、その瞬間』に


 戻ってしまうからだという。



 53歳の時、


19歳の次男を自死で

亡くした女性は、


常に息子のことを忘れず

暮らしていた。


2年ほど前、


有名な俳優が自死した

との報道に、


心がかき乱されてしまった。


その俳優が司会を務めて

いた番組は、


生前に収録した分は

放送するという。


それを知った彼女は、


俳優が亡くなる直前の

映像を見れば


『子を自死で失った自分なら、

 死の影のようなものが

 見いだせるのではないか』


 と思った。


だからといって亡くなった

事実は変わらないが、


息子の死の直後に抱えた


『なぜ、どうして』


という問いへの、


答えの片りんでも見つ

かるのではないかと、


考えたのだという。


彼女は俳優が亡くなる

直前に収録された番組を、


時間を巻き戻すような

感覚で見届けた。


だが


『結局、何も分かりません

 でした』と、彼女は肩を

 落とした。


 息子との別れから26年が

  たっていた。


俳優本人のことは、

その人にしか分からない。


だが世間では憶測や

うわさが飛び交うことが

珍しくない。


自死した人に対して


『自分に負けた弱い人』


といった偏見や、


本人を知らない人からの

決め付けがあり、


遺族の思いとはかけ

離れている。


別の母親は、


こんなふうに感じている。


『息子の生き方を認めて

 あげたい。本当の気持ちは

 誰にも分からない。


その苦しみは限界を超えて

しまったのです。


誰に恥じることもなく、


立派に生き切ったのです』



(『ちいさな風の会』世話人)


(土曜日に掲載)


自分は息子を自死にて

喪って5年と5ヶ月が

経ちました。


他人がみたら


この5年が、あっと

いう間の5年だったんだ

ろうなあ


最近声をかけてきて

くださった方々から

そう感じとる自分がいます


自分は息子の生き方を

認めてあげたい


まだまだ


そんな気持ちには

なれない自分がいます




これだけは言えます


息子は誰に

恥じることなく


立派に生き

切ったのです