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焦燥・興奮に対する薬物療法
精神科救急の現場では,内向き(自殺の方向)あるいは外向き(暴力の方向)の攻撃性を制御することが第一の仕事である。
投与経路の選択
焦燥・興奮を呈する患者に対して薬剤を投与する場合,患者が診療に協力できるか拒否するかによって二分される。
(1)診療に協力できる場合は内服投与すること。
拒否する場合は非経口的な投与経路,すなわち筋注あるいは静注が選択される。
(2)筋注による鎮静は,身体管理をしにくいため,重篤な身体疾患の潜在が否定的であること,および脱水や筋原性酵素の高値といった生理学的異常の程度も軽度であることを踏まえて行うことが望ましい。
(3)静注による鎮静は,眠らせる必要がある場合に行う。
昏迷,拒絶(拒食・拒薬),摂食量の不足
昏 迷
(1)救急場面において昏迷患者を眼前にしたとき,潜在する身体疾患に関する精査と全身管理を最優先するべきである。
(2)検査で異常が見出せないとき,昏迷の背景が精神病性であるかどうかを積極的に鑑別するために,benzodiazepine 系薬剤の静注による治療的診断法を実施することが望ましい。
拒絶(拒食・拒薬),摂食量の不足
(1)拒食患者に対して,全身状態の改善・維持を図るために,水分・電解質投与のための輸液,胃管からの流動の栄養投与,拒絶性の迅速な改善の ための ECT といった方法を状況に応じて選択するべきである。
(2)拒薬の場合,内服するか注射を受けるかの選択を促す問いかけをすべきである。
精神病性障害急性期の薬物療法
1.第一選択薬
(1)特定の副作用に脆弱性を有する患者には,各抗精神病薬の副作用特性に応じて選択されるべきである。
(2)特定の副作用に脆弱性を有しない患者には,二重盲検のみでなく評価 者盲検 RCT を包含したメタ解析を参照しつつ,高い有効性,臨床効果が 期待できる抗精神病薬を選択すべきである。
(3)急性精神病状態で非自発入院水準の患者に対して,第一選択薬は risperidone あるいは olanzapine が望ましい。
(4)怠薬再発例では,過去の治療で有用性の高かった抗精神病薬を第一選 択薬として検討すべきである。
(5)治療歴において2種類以上の非定型抗精神病薬を十分な量・期間用いても効果が得られなかった,いわゆる治療抵抗性統合失調症に対しては, clozapine を検討すべきである。
2.抗精神病薬への治療反応の早期予測
(1)抗精神病薬への治療反応は,開始から2週間程度での早期反応から予測して,その後の方略を検討してもよい。
3.早期反応不良例における抗精神病薬の切替えと併用
(1)効果の不十分さから抗精神病薬の切替えや併用を検討する前に,副作用の問題がなければ上限量まで増量して反応をみることが望ましい。
(2)抗精神病薬への早期反応不良例において,その抗精神病薬を継続するより切り替えてもよい。
(3)抗精神病薬への早期反応不良例において,別の抗精神病薬を併用することもあり得る。
参考文献:精神科救急医療ガイドライン
https://utsunaoru.site
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