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トラウマについての知識を正しくもつ
・精神疾患を有する人の 51~98% にトラウマがある
・トラウマは扁桃体,海馬の成長阻害など脳発達を障害し,情動反応の調節異常を来す。
特に幼少期のトラウマ体験は,成人後にも興奮や攻撃性を呈しやすくなるなどの影響を及ぼす
興奮・攻撃性の予防
環境整備
● 施設環境は利用者の視点から,安全性,プライバシー,尊厳を常に保つことができるよう整備され,併せて,性別,文化的・社会的背景等にも配慮するべきである
● 十分な個人空間とは別に,1人で静かに過ごすことのできる部屋,レクリエーションルーム,面会室が確保されることが望ましい
● 患者の利用する閉鎖された空間には,最低2箇所の出入口を確保すべきである(隔離室を除く)
● 行動制限下という理由だけで電話の使用が禁止されてはならない
● 個人の所有物を安全に管理できる鍵のかかるロッカーが提供されることが望ましい
● 攻撃性や暴力の発生に影響を与える物理的環境要因(過密な人の数,高湿度,気温の高低,不適切な空調,臭気,騒音,頻繁な人の出入り)の低減に努めるべきである
● バリアフリーの視点から療養環境を整備することが望ましい
● あらゆる場面において,患者を待たせる時間は最小化すること。待たせなくてはならない場合には,ストレスを緩和するための工夫をすべきである(予定待ち時間を知らせる,くつろいで待つことのできる空間の提供,対応する職員の明確化など)
● 職員の接遇トレーニングを徹底し,わかりやすい十分な情報提供,適切なインフォームドコンセントを実践すべきである
● 医療チームを構成する職員を頻繁に入れ替えることは避けるべきである
攻撃性・暴力の予測
行動面の変化
● 落ち着きがない
● 急な行動を起こす
● 活発に歩き回る
● 同じことを何度も何度も繰り返す
● つきまとう,追いかける
● 立ちはだかる,にじり寄る
● 態度が乱暴である
● 物を投げるなど物にあたる
● 脅かすような素振り,挑発的
また,患者に固有の注意すべき徴候として,普段のその人らしい言動がみられなくなる,反対にいつもしたことのない言動がみられるかどうかを観察することも重要である。
攻撃性・暴力への介入
心理的介入:ディエスカレーション
ディエスカレーションとは,心理学的知見をもとに言語的・非言語的なコミュニケーション技法によって怒りや衝動性,攻撃性をやわらげ,患者を普 段の穏やかな状態に戻すことをいう。
興奮状態・攻撃性の高まった患者に対しては,ディエスカレーションテク ニックが他の介入に先立って用いられるべきであり,他の介入が必要になった際にも,リスクアセスメントと併せてディエスカレーションテクニックの使用が続けられるべきである。
周囲の環境の管理
● 応援の招集を判断し,必要以外の人を移動させる
● 近くにいる他の患者や職員に対して状況を説明し,協力を求める
● 家具などを移動して必要な空間を確保するか,別の安全な場所に移動する
● テレビやラジオは消す
● 武器になる可能性のあるものは取り除く。患者が武器を持っている場合は安全な場所に置いてもらうよう,交渉する。挑発的な態度・振舞いを避ける
● 凝視を避ける。ただし,完全に目をそらさずアイコンタクトは保つ。
● 淡々とした表情を保つ
● 高慢,威圧的な印象を与えることを避けるため,姿勢や態度に注意する。特に,腰に手を当てたり,腕組みをしない
● ゆっくりと移動し,急な動作を行わない。身体の動きは最小限に し,身振り手振りが多過ぎることや,そわそわと身体を揺すったり,身体の重心を移動させるのを避ける。相手のパーソナルスペースを尊重し,自分自身が安全なポジションを保つ 。
● 患者に対応する前に,暴力発生を誘発したり,けがの原因になるあるいは武器として使用される可能性のある所持品(ネクタイ,スカーフ,装飾品,ペン,ハサミ,バッジなど)を除去する
● いかなる時も相手に背を向けない
● 通常より広いパーソナルスペース(最低でも腕の長さ2本分以上)を保つ
● 対象の真正面に立つのを避け,およそ斜め 45°の立ち位置とする
● 両手は身体の前面に出し,手掌を相手に向けるか,下腹部の前で軽く組むなど,相手に攻撃の意思がないことを示し,万一の攻撃・暴力発生に備える
● 出入口を確認し,自分と対象の双方の退路を保つ位置に立つ。出入口やドアの前に立ちふさがらない
● 壁やコーナーに追い詰められないようにする
● 警告なしに相手に触れたり,接近しない
言語的コミュニケーションスキル
● ラポールを築くように試み,共に問題解決する姿勢を強調する
● 脅すのではなく現実的な条件を提示して交渉する
● 穏やかに,はっきりと,短く,具体的に話す
● 努めて低い声で静かに話す
● 相手が意見を表現できるように助け,注意深く聴く
● 苦情や心配事,欲求不満については理解を示すが,肩入れし過ぎたり,その場限りの約束をしないように注意する
● 批判を避け,感情を話すことを認める。先取りして「あなたの気持ちはよくわかります」などと伝えるのは逆効果である
● 飲み物や食べ物を摂るよう勧める
行動制限
精神科医療における隔離・身体的拘束は,不穏や興奮,攻撃性・衝動性が強く,自傷・他害の切迫した状況などに対し,症状への対処,安全な治療環 境の確保を目的に行われる治療的介入とされる。
しかし同時に心理的副作用を有し,治療関係の構築にとって阻害因子となる可能性をはらみ,患者の人権と尊厳にかかわる極めて重大な課題を内包する。
また,隔離の実施では心 理反応による精神症状の一時的悪化と,それに伴う種々の行動リスク,身体 的拘束の実施では,深部静脈血栓症・肺塞栓症,廃用症候群,褥瘡,絞扼事 故の発生リスクなど,種々の有害反応の可能性を伴う。
したがって行動制限の基本的な考え方における決定的な特徴は,まずこれを行わないようにして,別の対処方法を試みること,つまりは一次予防を始点とする点である。
あらゆる代替法が無効か,あるいは有害な場合に限り, 適切なプロセスによって実施されなければならない。
やむを得なく実施された場合には,入念な観察を行って継続的に適切性を保ち常に最小化されなけ ればならない(二次予防)。
また,実施された行動制限については,その後の適切な医療の実現に向けた事後検証が望ましい(三次予防)。
事故後のサポート
1)被害者の保護・ケア
死者や重傷者が発生したような極めて深刻なインシデントでは直接,間接に関与したほとんどの者に心理的影響が及ぶ。
また被害者本人だけでなく, 身近な同僚,上司,部下には二次受傷による心理的反応がしばしば出現する。
二次受傷とは,被害者と精神的にかかわりをもつ者に生じるトラウマとそれ による心身反応である。
一般的に被害者と心理的距離が近かったり,事故の発生に何らかの自責感を抱いていたりすると二次受傷が生じやすい。
ただし, 暴力の影響は極めて個人差が大きく,インシデントの客観的な規模とは必ずしも一致せず,攻撃行為や言語的暴力のほうが,身体的暴力を受けた場合よりも深刻な精神的ダメージを負わせることもある。
また,ストレス反応は事故直後よりも勤務終了後~翌日以降に顕在化することが多く,精神科医療従 事者の特性にも留意したサポートが求められる。
原則的には,攻撃や暴力のターゲットとなった者は,直ちに攻撃者の視界に入らない場所に保護し,攻撃者が十分静穏化したことが確認されるまで再接近を禁じるべきである。
受傷している場合は速やかに,必要な検査,医師 による診察や治療,処置を行うこと。
職員については,業務遂行の継続が可能かどうか,複数の職員が受傷した場合などは他部署からの応援が必要か, 管理職による判断と調整がなされなければならない。
また,事故に直接関与した職員とそれ以外の者では事故に対する関心や態度の差が生じることは避けられない。
このため,事故の被害に遭った職員が,事情をよく知らない同僚から不用意な励ましや助言,事故に関する質問,事故回避の可能性につい てのコメントなどを受け,かえって孤立感や無力感を抱いたり,同僚や組織 に対する怒り,不信感を深めることのないように配慮することが望ましい。
事故により病気休暇を取得する場合,職員が確実に支援されるよう,管理者は休暇中ならびに復職にあたってのモニタリングを行い,積極的かつ慎重に対応することが望ましい。
また,職員が暴力の被害者になった場合,その職員が加害者になる可能性も高まるため,インシデント発生直後の加害者への直接ケアには,被害に遭った職員を関与させることは避けなければならない。
2)事故後の心理的ケア
インシデントにかかわった職員・患者,インシデントを目撃した他の患者・面会者などには,インシデントへの関与の度合いによらず,危機介入の必要性を査定すべきである。
事故後の心理的ケアは関係者の心理的な問題が遷延するのを防ぐ目的で個人および集団で実施し,そのプロセスにおいて関係者のニーズが査定され,必要なアフターケアが提供されるのが望ましい。
深刻なインシデントが関係者にもたらす心理的影響を放置すると,業務能力の低下,人間関係の悪化,士気の低下,燃え尽きや離職といった形で職場 内の問題に発展する可能性があることに十分留意する。
加害者への対応
危機的状況が終息した後,加害者となった患者については日常の活動への復帰に向けてのかかわりと再発防止のための取組みとが必要となる。
これには日常の生活に戻るために行うデブリーフィング(debriefing)と,さらに再発予防のための治療的な介入がある。
最終的には加害者が起こった出来事から学習し,再発防止へのモチベーションを高め,日常生活に戻った後に は再発予防のための取組みが行われる。
これには認知行動療法による怒りのセルフマネジメントや危機的状況に対して本人との契約に基づいたケアプランの作成などがある。
参考文献:精神科救急医療ガイドライン
https://utsunaoru.site
https://ameblo.jp/reirasite/
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