1章・・・1・・・



真っ青な空に真っ白な入道雲がうかんでいる。


外はセミの鳴き声で、車の音さえかき消されている。


車の音といっても、大都会の道路とは違い、


もともとそんなに交通量は少ないのだけれど・・・



田舎の夏の光景は美しい。


そう、千奈美は思う。


千奈美は自分の部屋の窓から、外を眺めた。


夏休みの補習を終えたらいし、高校生が自転車で千奈美の家の前を通過している。


真っ白な生地に深い紺のラインのセーラー服を着た、二人の少女が通る。


懐かしい制服。


6年前、自分もあの制服を着ていたのかと思うと、なんだか違和感を感じた。


今思い出すと、あの頃の毎日はとてもキラキラ輝いていたように思える。


もっとも、あの頃だって、辛いことなんてたくさんあったのだけれど・・・。



千奈美はそっと、カーテンを閉めベットにもぐりこんだ。


クーラーの風が少しだけ、千奈美の前髪をゆらす。


庭の植物さえも、太陽の光が眩しすぎると感じている外に比べ、


千奈美の部屋は、昼間にもかかわらず、常に薄暗い。


青い空も、木々たちの濃い緑も、太陽の光も以前は大好きだった。


けれど、今は・・・


その全てが、自分を追い込んできているような気がして、


見ることも感じることも、苦痛だ。



『何もかもが、自分より輝いて見える・・・』



千奈美は、ふとそう感じ、カーテンの隙間から差し込む光さえも遮るように、


布団にもぐりこんだ。