オランダも団塊世代の人口が多く、出生率は1.66人(2016年)と日本の1.42人(2018年)とやや高いものの、高齢化社会が否めません。

 

「今の高齢者は年金を受給して不自由なく暮らせるけれど、私たちの時にはそんなの望めないわ」

とオランダ人の友人(30代)が嘆いていました。

 

日本に比べると福祉先進国であるオランダですが、

以前核家族化、高齢化社会を肌で感じる出来事がありました。

 

 

***

 

 

まだオランダで「宅配ポスト」なるものを聞いたことがないので、

おそらくオランダはほとんどそうだと思いますが、

不在時の荷物は、ご近所に預けられます。

ご近所も不在であれば、郵便機能を請け負ったスーパーなどで保管されるか、配送センターに戻されます。

 

 

ある日、私がすこーし不在にしたその間に、

郵便局から荷物が来てしまいました。

人生そんなもんです、笑。

 

そのため、不在票に「ハウスナンバー13に預けました」とありました。

 

そのハウスナンバーに住むのはとても品のいいおじいちゃまとおばあちゃま。

息子を見ると、いつも笑顔と挨拶をくれていました。

ベルを鳴らして、出てきたおばあちゃまに不在票を見せながら、

荷物を取りに来ましたよ、と告げたところ、

「まあようこそ!入って入って。お茶しましょう」

 

正直、いつも言葉は交わしても、お招きいただいたことはなかったので、

いきなりおうちに上げていただくなんて、どうしてかな、とハテナが浮かびまくりです。

荷物を取りに来ただけなんだけどな〜と思いつつ、

年配の方とお知り合いになれるなんて光栄だと思い、

息子と一緒に少しお茶を楽しませていただくことに。

 

品のいいご夫婦らしく、お家の中もきちんと整理整頓されて美しい。

幼い時の息子さん、娘さんかな、と思われる写真や、

お孫さんかな、と思われる写真もあり、

たどたどしいオランダ語で会話を頑張ったのですが、

なんだか会話がうまく続きません。

 

30分ほどして、

「あの・・。私の荷物を預かってくださっていると思うのですが。」

と伝えると、おばあちゃまたちは何も預かってないと一点張り。

確かに、整理整頓されたお部屋を見渡しても見当たらない。

 

 

丁寧にお礼をしてお家を出ようとすると、

おばあちゃまは私と息子にハグとキスをくれました。

「また来てね」

 

嬉しいながらも、私の荷物を大捜索開始!

ご近所に聞いて回りますが、見つかりません。

郵便局の人がハウスナンバーを書き間違ったとしか思えません!!

すると、おばあちゃまの隣のお家が、「23」だということに気づきました。

「なるほど、配達の人、絶対「13」と「23」を書き間違ったね」

ほぼ確信して、23のベルをプッシュ。

 

出てきたお父さんに尋ねると、

「おーい、誰か荷物預かった〜?」

と室内の家族へ呼びかけます。

しかし、みんなの返事は、NO。

私、いよいよ不安になってきました。。

 

お父さんに現状を伝えていると、

お母さんも出てきて言いました。

 

「前にもあったのよ」

 

え。。。

やっぱり、盗難とかですか。。いいご近所だと思ってましたが。。

 

 

「隣のおばあちゃんたち、年齢も80以上のようだし、ボケてるみたいなの」

 

 

えーーーーーーーーー!!!!!

 

 

「うちも同じことがあったから、郵便局に、"13”には預けないでください、って電話しておいたんだけどね。」

 

そう言って、そのお母さんは、13のベルを押し、出てきたおばあちゃまにニコニコ笑顔で話しながら、部屋の中にずかずかと入って行きました。

 

しばらくして出てくると、

 

 

あったーーーーーーーーーーー!!!!!ありがとうございます!!!

 

 

おばあちゃまは、実状がのみこめないようで、きょとんとなさったままでした。

 

 

 

会話が続かず、

おばあちゃまたちが何度も同じ質問を繰り返してきたことに、ようやく合点がいきました。

何を聞いても、話題を変えるかのごとく全く違う返答が返ってきたのです。

 

 

 

オランダでは、じいじばあばが孫のお世話をする姿を本当によく見かけます。週に1,2日、じいじばあばの日があって、オランダの女性が産後すぐに社会復帰をする手助けとなっています。

 

あのお部屋の写真から察するに、お孫さんはいるようですが、遠いところに住んでいるのでしょうか。

オランダの仲睦まじい、手を取り合う三世代の家族の姿が私の目には頻繁に映りますが、核家族化が進んでいるのは間違いないようです。

他にも、いろいろな疑問が頭を駆け巡ります。

そして、もちろん、自分たちの親のことも駆け巡ります。

 

 

その後、ハウスナンバー13のお家には、

「ここに荷物を預けないでください」

と言う張り紙が貼られました。

 

 

なんだか切ないお話です。

私に何かできることがあれば、とおばあちゃまたちを思う今日この頃です。