定年退職したおじさんが再就職したのは、 

今の私の職場を支える、下請けの警備会社だった。


かつての「正社員」としての威厳は、

もうどこにもない。 おじさんの今の

仕事は、社内の雑用、郵便配達、ゲストを乗せる

車の運転。 そして、集まってきたゴミの検品だった。


立場は、完全に逆転していた。


私を見るなり挨拶をして下を向き、

そそくさと持ち場へ向かうおじさん。 


その一方で、私は世界中からのゲストを

毎日アテンドしている。


かつて私を支配し、怯えさせていた男が、 

今は私たちの依頼する雑用をこなし、

ゴミをチェックし、郵便物を運ぶ。 

そして、私が案内するゲストを車に乗せている。


驚いたように、申し訳なさそうに、私に何度も

頭を下げているその姿。


その光景を見たとき、確信した。 

あの癌の苦しみも、4年間の葛藤も、すべてはこの瞬間のためにあったんだと。


「勝った!」と声高に叫びたいわけじゃない。

 けれど、私は勝ったのだ。 

あの時、自分に言い聞かせた言葉が、

現実になってしまったのだ。

おじさんとは今仲良しだニヤリ

ナメクジに塩をかけて、生命を弄ぶことでしか

自分を保てなかった、 あの和式トイレの

暗闇にいた女の子。 

おもちゃのダイヤをポケットに

詰め込んで泣いていた、あの小さな私。


大丈夫だよ。 今、その手は世界のリーダーたちの

背中を、誇り高く、優しく導いている。


私はもう、誰かにかけられた呪いの中にいない。

 私は、私という本物の光で、

この世界を歩いていく。


(完結)