アカデミー賞主演女優のグレイ・スケリー。フランスを訪ねていた時、フランスの南海岸側で、右隣のイタリアの国境がすぐそばにあるモナコという小さな国にあるお城で、撮影をすることになりました。モナコ側からすれば、グレイス・ケリーが訪ねてきたというだけで、大きな宣伝になります。
接待役は、王子さまでした。
当時は、インターネットなんてなかった時代。どんな王子なのかだなんて調べられなかったし、そもそも、モナコとうい国があることさえも知りませんでした。
その朝は、ドライヤーで乾かせなかった髪と、一緒にアメリカから来た友達の犬色のバラ模様のドレス、帽子の代わりの花満載のヘヤバンドというアカデミー主演女優賞の女優としては、いかがなもんか?という姿。絶望的な彼女に、付き添いの男性たちは、
「あなたは十分に美しい、なので大丈夫」と太鼓判を押しました。
こうして、フランスのホテルからモナコのお城へ運転手付きの車で、撮影班2台の車を従えて、城へ向うことに。
彼女は、モナコでの撮影の後、フランスに戻ってお偉いさんに会うとの約束があったことから、道中は、かなりスピードを出していました。
彼女は、車の運転に関してはとても臆病で、普段、自分で運転するときは、制限速度を絶対に守るタイプ。
城は、小高い山の上にあり、細い曲がりくねった、でも舗装した道を王子との約束の3時に間に合うように、飛ばす、飛ばす。道端のガードレールの下は崖でしたが。
◎ 道はどこ? 反対側? どんな道?
当然ながら生きた心地がしないのと、車酔いでの苦しみとの闘いで、息も絶え絶えにお城に到着。
車から降り、大地に足をつけ新鮮な空気を吸い、ひと心地ついたあと、出迎えた人々の間に不穏な空気が漂っていることに彼女は気がつきました。王子様が、約束の時間にお城にいなかったのです。
当時は、黒電話の時代。ケータイで今どこにいるのかなんて連絡を取り合えない。こちらも当惑している接待係に、お城の中をご案内しますと導かれ、城内に入りました。
お城は、中世の時代に建てられたもので、どの部屋も、ため息をつくほどに華麗に装飾され驚きの連続でした。
でも、でも、王子が来ない・・・。
約束したのに。
わたしが5時半までにホテルに戻らなければいけないことを知っているのに・・・。
恐怖の山道を我慢して、気持ちが悪くなって死にそうになったのに、あなたはいない。
侮辱された・・・。
もんもんとしていましたが、もうこれ以上、待っているわけにはいきません。フランスに戻ると伝えようとした時です。
王子が、城に到着したことの知らせが入りました。スポーツカーで。
「お待たせして申し訳ありませんでした」
そう笑顔で彼女の前に現れたのは、はっとするほどにチャーミングな男性でした。ちょっと背が低かったけど。
「城の中をお見せします」
「ありがとうございます。でも、もう見せていただきました」
「でも、動物園はまだでしょう?」
??
◎ 写真 あれ? 本には、犬色のバラ模様とあったのですが・・・
このドレスの持ち主の友達は、このドレスが似合うということでしょうか・・・。
続く・・・