ところで、口などから入ったヘルペス ウイルスは、どうやって神経細胞の核に行きつくのでしょう?
看板: 「ここが神経細胞の核です」という目印があるのだろうか?
考えるに、口などから入ったヘルペス ウイルスは、血液やリンパ液、神経に乗って、からだ中、くまなく巡回する。その途中、DNAやRNAを作っている場所があると、
「DNA/RNAを複製する道具がたくさんある場所を発見。ここに居座れ」という指令が、ウイルス内のどこかから発信されたのか? それとも、たまたま偶然、そこにとどまった結果、生涯安泰保証が獲得できてしまったのか?
通常の細胞核は、時間がたつと、分裂し、最後には、崩壊してしまう。そのため、そこに駐在していたウイルスは、放り出されて、別の居場所をさがすため、体内を巡回しなければならない。でも、運よく神経細胞の核にとどまったウイルスは、そこで、宿主が他界するまで居続けることができる。
こうして「ヘルペスは、宿主細胞の中で休眠(潜伏)状態でとどまるため、感染は生涯続きます。」ということになる。
楽天地 細胞核。だったら、ウイルスだけでなく、バクテリア=細菌もそこに入り込めるのか?
核の構造
図は核です。核の表面は、脂質でできた外膜と内膜の2重構造で守られています。DNAやRNAを作るときの材料であるたんぱく質は、隔膜孔という穴を通り抜けていきます。
核の表面にひきめしあう穴
穴の構造です。こんな構造物が、すべての穴にある、
このとき、よほど小さなもの以外、単独では通り抜けられません。DNAやRNAは長いので、輸送体(ガイド or 先導車?)が必要になります。この穴は、出口であり入り口でもあるとのことで、先導車があるとはいえ、どうやってからまってつっかかることなく通過できるのか、まだわかっていません。
図は、核の中で作られたRNA (赤い紐)とそれにくっついたたんぱく質の一連が、脱出用の案内役(左側の赤い楕円形)と共に、2重膜の間を通り抜けていくかを表しています。
B は、紐の両端から脱出している様子で、今にも穴にひっかかりそうです。
さて、質問の答え、細菌は、この2重膜にある穴の中を通り抜けられるか?ですが、大きすぎて無理です。好中球やマクロファージなど、ウイルスをのみこむ白血球も、大きすぎて通れない。
つまり、核は、DNAやRNAにとって最も安全な場所になります。ウイルスのを含めて。
ここで、再び、興味深いことを発見しました。
「老化の過程では、核–細胞質間輸送を効率的に行うために必要なRanの濃度勾配が崩壊し、核タンパク質を運ぶために必要な 核–細胞質間輸送因子 が核内に集積、さらに核輸送の関門となる核膜孔の機能低下が起きる。したがって、核–細胞質間輸送を支える機構の機能が全般的に低下していると考えられる」
老化すると、核の中にあるウイルスのRNAは、核の外に出たくても、ガイドや先導車が核の中にたむろして動かず、さらに、外へ出るときに通過する穴の機能が落ちることから、外に出づらくなる。つまり、もしも、ヘルペスウイルスが原因で炎症が起きているとしたら、高齢化すると、炎症が軽くなる、あるいは、なくなるかもしれないということになります。
前回、高齢化すると、神経細胞が衰え、やがてなくなっていく、それにより、神経細胞の中で休眠していたヘルペスウイルスの居場所が減り、その数も減っていくのではないかと書きました。
もしも二つの説が本当であれば、高齢になれば、自然と炎症が軽くなっていくはず。
2010年のアメリカの研究で、若年層と高齢者の両方に同じ治療をした場合、高齢者のほうが寛解しやすいと報告しています。理由は、年を取ると免疫システムが弱まるため。大腸炎は、過剰に増えすぎた白血球が引き起こしますが、高齢化すると、白血球の製造がさかんにならなくなるため、炎症が軽くなるのではないかとの説明です。
2015年の別の研究では、40歳以前と以降に初発症した場合、後者のほうが入院率が低いとあります。
民族によって結果は異なるのかもしれませんが、年を取っていくにしたがって症状が軽くなる、そう思うだけで、こころがやわらぎます。
Colitis patients diagnosed later in life tend to have better disease outcomes
Impact of the age of diagnosis on the natural history of ulcerative colitis
参考:
RNAのサイズ 直径 2.6 n m、長さ約300 nm (平均)