金曜日の深夜。
終電になんとか間に合ったが駅からのバスがない。
母親はまだ起きている時間だろう。
だが迎えを呼ぶのも悪いと思い、タクシーに乗り込むことにした。
駅の南口。深夜料金でも2000円かからないから、まあいいだろう。
待ち構えていたタクシーに乗り込み、
すこし酒とタバコで荒れたノドをゴッホンと咳をして姿勢を正した。
少し高めの声で
「ええっと、金森までお願いします。」
そう告げた私にタクシードライバーは
「はいよ~ん。」
と機嫌よく答えてくれた。
見た目60歳過ぎの定年退職で始めたようなタクシードライバー。
名前は「森さん」。
森さんは自前の最新ナビを搭載した立派な白いセダンを運転している。
ナビの画面には日テレが映っており、森さんはつい先ほどまでテレビを見て
時間をつぶしていたのだろう。
ついついテレビ画面を見てしまう。
「久しぶりだな~金森行くの。」
と森さんは陽気な声で話始めた。
「へ~。そうなんですか?・・・・・。」
「うん。だってここバスができちゃったでしょ。
だからお客さんいなくなっちゃったんだもん。」
と友達だったっけ?と不思議になるほど仲良さげな口調。
金森行きのバスが開通したことの不満を私に訴える。
私が22年間暮らすこの町は大きく2つの地域に分かれる。
北口と南口。
北口は住民が多く駅から離れた場所に公営の団地があり、駅を往復するバスの数も多い。
だが、私が暮らす南口は駅から徒歩15分以内で通える範囲にしか住宅がない。
なぜなら徒歩15分の場所に隣県との境目がある。
わかりやすくそこにと川が流れており、川の向こうは隣の県だ。
つまり、これまで南口にはバスがなく、住民の交通手段は自転車や徒歩だった。
しかしここ数年の高齢化対策によってバスが開通することとなり、
タクシーの利用が急激に減ったのだとタクシードライバーの森さんは話す。
「困りますね。確かにバスの利用が増えましたよね。
でも、バスは夜遅くまでやってないから夜なら
お客さんいるんじゃないですかー?」
と私なりにフォローしてみたが、
無駄だった。
「だってさ~お客さんいたの昼間だもん。」
と、少し悲しそうな森さんの声。
同情したくなる。
「やだね~もう。バス。やめさせてよ。」
と挙句の果てに私にお願いしてきた。
バスにお客さんを奪われたタクシードライバーの森さん。
どう答えてあげたらいいのか?酔っ払いで帰宅しながらも
頭をフル回転させ、タクシー経営の未来をどう救えるのかを考える私。
必死に頭を悩ませていた私におじいさんが口を開いた。
「ねえねえ、「お願いランキング」って知ってる?」
と、びっくりするくらいの切り替えの早い質問を投げてきた。
「あー、はい。知ってます。好きで良く見ますよ。」
と私は酔っ払ってはいたが、なんとか言葉のキャッチボールについていけている。
「いいよね。あれ。面白いんだよね。ふふふ。」
とおじいさんはすっかり嬉しそうである。
金森にバスが開通したことなどもうどうでもいいのだろう。
今はとにかく「お願いランキング」が重要なのだ。
「今日のランキングにね、出てたんだけどね、
ごはんに●●をかけて、その上に納豆かけるんだって。」
「え~~~!まずそうですね。」
「美味しいんだって。」
「そうなんですか・・・。想像できませんけどね。」
「でも本当に美味しいんだって。」
と言って5秒ほど黙った後、
「やだよね。僕はごはんに納豆かけて食べるのが一番いいと思うよ。」
と、これまたびっくりするような返しに
「そうですね。」
とうなずくしかできない。ここも同調しておくしか道はないのだ。
さらに気分が高揚してきたのか、森さんは
「やっぱり作ってもらうお弁当は美味しいね~。いや~最高だね。」
と今度はお弁当の話題に切り替えた。とにかく切り替えのスピードが早い。
「お弁当作ってもらえるんですね。幸せですね。」
「そうだよ~愛し合ってるもん。」
と可愛い口調で話すおじさんに、わたしはだんだん興味が湧いてきた。
さらに話を聞いてみると、この森さんは個人タクシーで売上が多かろうと
少なかろうと上司がいるわけでもないので、奥さんに「コラッ」と叱られ
さえしなければ良いのだという。
実は今日も昼にお弁当を食べ、ハッ!と気がついたら夕方になっていたそうだ。
そんな南国のような働きっぷりで大丈夫か・・、と心配してみたものの
「78歳まで働くよん。」
となぜ78歳なのかは不明だが
やる気満々で心配無用!といった感じである。
とにかく森さんの
「よん」
という陽気な口調に、個人タクシーの明るい未来を感じたのだった。
終電になんとか間に合ったが駅からのバスがない。
母親はまだ起きている時間だろう。
だが迎えを呼ぶのも悪いと思い、タクシーに乗り込むことにした。
駅の南口。深夜料金でも2000円かからないから、まあいいだろう。
待ち構えていたタクシーに乗り込み、
すこし酒とタバコで荒れたノドをゴッホンと咳をして姿勢を正した。
少し高めの声で
「ええっと、金森までお願いします。」
そう告げた私にタクシードライバーは
「はいよ~ん。」
と機嫌よく答えてくれた。
見た目60歳過ぎの定年退職で始めたようなタクシードライバー。
名前は「森さん」。
森さんは自前の最新ナビを搭載した立派な白いセダンを運転している。
ナビの画面には日テレが映っており、森さんはつい先ほどまでテレビを見て
時間をつぶしていたのだろう。
ついついテレビ画面を見てしまう。
「久しぶりだな~金森行くの。」
と森さんは陽気な声で話始めた。
「へ~。そうなんですか?・・・・・。」
「うん。だってここバスができちゃったでしょ。
だからお客さんいなくなっちゃったんだもん。」
と友達だったっけ?と不思議になるほど仲良さげな口調。
金森行きのバスが開通したことの不満を私に訴える。
私が22年間暮らすこの町は大きく2つの地域に分かれる。
北口と南口。
北口は住民が多く駅から離れた場所に公営の団地があり、駅を往復するバスの数も多い。
だが、私が暮らす南口は駅から徒歩15分以内で通える範囲にしか住宅がない。
なぜなら徒歩15分の場所に隣県との境目がある。
わかりやすくそこにと川が流れており、川の向こうは隣の県だ。
つまり、これまで南口にはバスがなく、住民の交通手段は自転車や徒歩だった。
しかしここ数年の高齢化対策によってバスが開通することとなり、
タクシーの利用が急激に減ったのだとタクシードライバーの森さんは話す。
「困りますね。確かにバスの利用が増えましたよね。
でも、バスは夜遅くまでやってないから夜なら
お客さんいるんじゃないですかー?」
と私なりにフォローしてみたが、
無駄だった。
「だってさ~お客さんいたの昼間だもん。」
と、少し悲しそうな森さんの声。
同情したくなる。
「やだね~もう。バス。やめさせてよ。」
と挙句の果てに私にお願いしてきた。
バスにお客さんを奪われたタクシードライバーの森さん。
どう答えてあげたらいいのか?酔っ払いで帰宅しながらも
頭をフル回転させ、タクシー経営の未来をどう救えるのかを考える私。
必死に頭を悩ませていた私におじいさんが口を開いた。
「ねえねえ、「お願いランキング」って知ってる?」
と、びっくりするくらいの切り替えの早い質問を投げてきた。
「あー、はい。知ってます。好きで良く見ますよ。」
と私は酔っ払ってはいたが、なんとか言葉のキャッチボールについていけている。
「いいよね。あれ。面白いんだよね。ふふふ。」
とおじいさんはすっかり嬉しそうである。
金森にバスが開通したことなどもうどうでもいいのだろう。
今はとにかく「お願いランキング」が重要なのだ。
「今日のランキングにね、出てたんだけどね、
ごはんに●●をかけて、その上に納豆かけるんだって。」
「え~~~!まずそうですね。」
「美味しいんだって。」
「そうなんですか・・・。想像できませんけどね。」
「でも本当に美味しいんだって。」
と言って5秒ほど黙った後、
「やだよね。僕はごはんに納豆かけて食べるのが一番いいと思うよ。」
と、これまたびっくりするような返しに
「そうですね。」
とうなずくしかできない。ここも同調しておくしか道はないのだ。
さらに気分が高揚してきたのか、森さんは
「やっぱり作ってもらうお弁当は美味しいね~。いや~最高だね。」
と今度はお弁当の話題に切り替えた。とにかく切り替えのスピードが早い。
「お弁当作ってもらえるんですね。幸せですね。」
「そうだよ~愛し合ってるもん。」
と可愛い口調で話すおじさんに、わたしはだんだん興味が湧いてきた。
さらに話を聞いてみると、この森さんは個人タクシーで売上が多かろうと
少なかろうと上司がいるわけでもないので、奥さんに「コラッ」と叱られ
さえしなければ良いのだという。
実は今日も昼にお弁当を食べ、ハッ!と気がついたら夕方になっていたそうだ。
そんな南国のような働きっぷりで大丈夫か・・、と心配してみたものの
「78歳まで働くよん。」
となぜ78歳なのかは不明だが
やる気満々で心配無用!といった感じである。
とにかく森さんの
「よん」
という陽気な口調に、個人タクシーの明るい未来を感じたのだった。