皇帝プルシェンコの華麗なる復活劇 | アリスのブログ ~羽生結弦選手と日々のこと~ 

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number ソチ五輪EXPRESSより~
皇帝プルシェンコの華麗なる復活劇。
少年のような笑顔と、永遠の向上心。





フィギュアスケートの皇帝エフゲニー・プルシェンコが、新境地の演技で歴史に名を刻んだ。新種目の団体戦で、ショート、フリーともに4回転を成功させるとチームに金メダルをもたらす。ショートは羽生結弦の次点、フリーは首位と、怖いモノなしの状況だ。このまま個人戦も表彰台、いや、金メダルさえ圏内とウワサされ始めた。プルシェンコ復活の軌跡を追った。

 2014年2月3日、プルシェンコはソチ空港に降り立った。ロシアメディアが取り囲んだが、「すべては団体戦の試合後に」と言い、目線だけで記者を一喝。インタビューには答えなかった。

 普通の選手なら、気合いを入れて練習を開始するところだが、皇帝は3日、4日とオフをとる。選手村内をリラックスした様子で散歩し、「全ての準備は整っている」と話した。

「everything is good」という別格のオーラ。

 初めてメディアの前に現れたのは5日の昼間。羽生結弦、町田樹らと一緒のメインリンクでの練習だった。リンクサイドでウォーミングアップしていると、'92年アルベール五輪王者のビクトール・ペトレンコが挨拶に来る。まるで皇帝に謁見といった様子で、プルシェンコの方が姿勢を崩さない。

 そして初練習が開始すると、たった5分後に3回転ジャンプを成功、7分後にトリプルアクセル、10分後に4回転トウループ、そして曲かけ練習で4回転+3回転を成功。開始から20分ほどで早々と練習を切り上げた。「everything is good(すべて順調)」とひとこと残し去って行く。準備といい、気合いといい、別格のオーラを漂わせていた。

 迎えた6日の団体戦・男子ショート。4回転トウループ+3回転トウループ、トリプルアクセルと立て続けに成功させると、もう会場はプルシェンコのものだった。もうこの後は、プルシェンコが片手を上げるだけで歓声、投げキスをすれば悲鳴という状況。ノーミスで演技を終えると、拍手の嵐で会場がエコーのようになった。

「この演技を7歳と1歳の息子に捧げたい」

「正直なところ辛かった。ホームでのオリンピックで自分を信じて滑るというのは難しいものだ。たくさんの観客がいるし、何か凄いことを期待されてもいる。

 集中する必要があるし、それにまだ1日目なんだよね。今日はいい演技だったと思うけど、これからまだ何日も続くのは大変だ。今夜は幸せだよ。クリーンなプログラムをした。4-3が決まって幸せだ。

 観客の反応も凄かったね。それは助けになるし嬉しいんだけど、今日はちょっとうるさかったかな。アッチからもコッチからも手拍子しか聞こえなくて、ノックダウンされそうだった。でも4回目の五輪だからね。楽しいよ。すごく新鮮な気分だ。31歳になってまだ試合に出て、10代の選手と競い合った。この演技を7歳と1歳の息子に捧げたい」

復活への第一歩を記したプルシェンコは、上機嫌だった。

 2日空けて9日のフリースケーティング。この時点では北米メディアは「ショートは完璧でも、フリーはスタミナが足りないだろう」という予想だった。実際、12月のロシア国内選手権ではフリーでミスが多く、若手に破れ2位になっている。

曲はなんと「ベスト・オブ・プルシェンコ」!

 ところが、皇帝は大舞台ほど強かった。フリーの演技前、両手の指を胸の前で「カッ」と開き、全身にエネルギーを充填していく様は、まさに超人的。冒頭の4回転、そして3回転ルッツ、トリプルアクセルと成功させると、会場のボルテージが上がった。

 曲はなんと「ベスト・オブ・プルシェンコ」。'06年トリノ五輪で金メダルを獲得したフリー「ゴッドファーザー」に始まり、'10年バンクーバー五輪の「タンゴ・アモーレ」、'02年の「アルビノーニのアダージョ」など、ロシア国民がこの十数年にわたって観てきた名曲が連なる。曲調が変わる度に「待ってました」とばかりに歓声が起きた。

 後半のジャンプが2回転になる部分はあったが、転倒や着氷ミスはなく、一糸乱れぬパフォーマンス。演技を終えたプルシェンコは、いつにない澄んだ瞳で、満場の客席を見上げた。薄いブルーの瞳に、うっすらと光るものさえあった。

「自分の演技にもチームの結果にも大満足だ。ショートもフリーもベストを尽くすことが出来たし、かつてない大歓声を浴びた。とにかく今日はチームのために滑って気持ちが良かった」。

 得点は168.20点で首位。団体戦なので総合点は出さないが、ショートとフリーの合計は259.59点で、トリノ五輪もバンクーバー五輪も上回るポイントだった。

「彼はカリスマであり、ロシアのパワーだ」

 この後に滑ったユリア・リプニツカヤの活躍もあり、団体戦はロシアが金メダルを獲得。プルシェンコにとって4つ目の五輪メダル、そしてロシアにとってソチ五輪最初の金メダルだった。プーチン大統領自らが「よくやった」とプルシェンコ達を祝福するのを観ながら、アレクセイ・ミーシンコーチは自慢げにこう言った。

「今日は無理なリスクをさけて4回転は1本にした。彼はカリスマであり、ロシアのパワーだ。誰も彼にようにはなれない。大多数の人間が彼に憧れ、一部の人間がねたむ存在なんだ」。

 皇帝は存在を証明した。しかし団体戦が最終目標ではない。

「今日のフリーは、羽生結弦もパトリック・チャンもいない。だから4回転は1本で十分だと考えた。個人戦のフリーでは4回転を2本入れたい」

 それにね、といってプルシェンコは少年のような笑顔で続けた。

「あと僕は、トリプルアクセル+3回転フリップというジャンプを練習してあるんだ。これはまだ世界で誰も跳んだことのないジャンプだからね」

 永遠の向上心が彼のエネルギー源なのだろう。驚異の31歳は、13日からの男子シングルに全ての闘志を捧げる覚悟だ。

http://number.bunshun.jp/articles/-/784988

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