【能登半島地震と東京一極集中】高齢化、耐震化・道路強化の遅れという「過疎化」こそが地震被害を凄ま | ☆恋する夫婦のROCKn' RIDE!☆

☆恋する夫婦のROCKn' RIDE!☆

バカ夫婦のおノロケ經世濟民ブログです♪

「新」経世済民新聞 2024年1月5日…

藤井聡先生の寄稿より転載致しましたヾ(・∀・)ノ

 

 

 

 

能登半島地震の被害の甚さは、時間が経つ毎につれて明らかになってきました。

 

多くの家屋、ビルの倒壊や木造家屋の密集地域における大火災、津波、土砂災害による直接被害に加えて、道路の寸断による救護、救援の停滞、電気、水道、ガス等のライフラインの寸断による停電・断水等に伴う避難所、被災地の生活上の被害とそれが誘発する「二次被害」の拡大…。

 

今我々に必要なのは、こうした被害を少しでも軽減すべく、四の五の言わず、徹底的に迅速かつ大規模な救護、救援、そして復旧復興であることは間違いがありません。

 

しかし、それと同時に、ここまで被害が拡大してしまった、政策的原因がどこにあったのかの「検証」を急ぎ、今後二度と、ここまで被害が拡大しないようにするために、一体我々は何をすべきなのかを考える「再発防止」の対策(つまり国土強靱化)が、今、絶対的に必要不可欠であることもまた事実です。

 

【脆弱性1:建物の「耐震化率」の異様な低さ】
まず第1に、今回ここまで被害が広がった重大な原因は、建物の耐震性の低さです。

 

今、日本では新しい建物を建てる場合、震度7が訪れても全壊しないようにという基準の耐震性が義務付けられています(新しい耐震基準ということで、新耐震、と呼ばれています)。

 

そして、そうした新耐震の基準の建物の割合は今、全国で87%に至っています。

 

ところが、例えば、今回激甚被害があった珠洲市では、新耐震の建築割合は、わずか51%だったのです。

 

ちなみに、新耐震の家屋は31.1%しか倒壊しない一方、新耐震化していない家屋は実にその75.5%が倒壊するというデータが過去に報告されています。つまり、新耐震化していなければ、その倒壊率は実に2.4倍にもなってしまうわけです。

 

そして、全国平均ではもはや今、13%しか耐震化されていない脆弱な建物は残されていない一方、珠洲市では49%ものが脆弱なまま残されていたのです。

 

つまり、脆弱な未耐震の建物の割合は、珠洲市では全国の3.8倍もあったのです!これが、今回の地震被害を圧倒的に拡大する帰結をもたらしたのです。

 

脆弱性2:道路ネットワークの大きな脆弱性
そして第2に、能登エリアにおける「道路ネットワークの脆弱性」が、震災被害をさらに拡大してしまっています。

 

そもそも「半島」地形の地域は、特定方向からしかアクセスできない、つまり、アクセスルートが限定的であり、したがって、通常の非半島地域よりも一部の道路の寸断でアクセス不能となってしまうという極めて脆弱な条件を抱えています。それにも関わらず、その限られたアクセス道路が脆弱で、通行止めになってしまえば、瞬くまでに、どこからもアクセスできないという状況となってしまいます。

 

実際、1月4日現在、輪島市はそのようにアクセス路が経たれ、震災直後から孤立的状況に陥っています。結果、被災者に対する救護救援も、被災者の避難も不能・困難となり、被害はさらに拡大することとなるわけです。

 

能登半島には「能越自動車道」や「のと里山海道」等の高規格の自動車専用道路は存在しているのですが、いずれの道路も、今回震央となった珠洲市や輪島市等の半島北部地域においては完成(到達)していませんでした。

 

もしもそれが能登半島の最も被害が大きかった輪島まで完成しており、そして珠洲まで到達していたら、半島の道路ネットワークはもっと強靱であったに違いありません。

 

実際、北陸自動車道は被災エリアに位置していたにも拘わらず、その他の一般の道路に大きな被害が出ていたにも拘わらずその被害は限定的で、したがって、被災後驚く程迅速に供用開始となり、今も救護救援に大きく役立っています。

 

したがって高速道路の整備が完了していなかった半島北部の道路ネットワークは著しく「脆弱」な状況におかれていたわけです…この、半島という特殊な地形も含めた当該エリアの道路ネットワークのいわゆる極端な脆弱性が今回の地震被害をさらに拡大してしまったわけです。

 

脆弱性3:極端な高齢化
そして最後に、今回の「人的被害」を拡大しているのが、このエリアの「高齢化」の問題です。

 

少なくとも今までの報告を踏まえますと、今回の人的被害の多くは、建物の倒壊によってもたらされています。

 

そしてその場合、重要となってくるのが、瓦礫の下敷きになった人達に対する「救出」なのですが、例えば、阪神淡路大震災では、救出者35,000人の内、実にその「8割」にあたる27000人が家族や隣近所の人々に救出(つまり“共助”)されているのです。

 

ところが、この「救出」作業は、高齢者においては非高齢者よりもより困難なものとなっています。したがって、高齢化社会では、こうした建物倒壊が支配的な死因となる地震においては、救出がより困難なものとなってしまうのです。

 

そして、今回の被災地は、相当な高齢化社会となっていたのでした。

 

例えば珠洲市の高齢化率(65歳以上割合)は、県内で最も高い51・7%と、全国平均の29.0%の実に1.8倍もの水準に至っていました。

 

このことは、瓦礫の下敷きになった方々の内、救出される方の割合が大きく減少してしまう、つまり、死亡してしまう割合が格段に高くなってしまうということを意味しているのです。

 

別の言い方をすると、高齢化社会は、共助能力が限定的で、その意味において「脆弱」な社会だと言うことができるわけです。

 

……

 

以上まとめると、今回の地震は、M7.6という地震エネルギーの大きさとは全く別に、

 

脆弱性1:建物の「耐震化率」の異様な低さ
脆弱性2:道路ネットワークの大きな脆弱性
脆弱性3:極端な高齢化

 

という、政府もよる政策によっていくらでも変える(=改善する)事ができる要素によって、その被害が格段に肥大化してしまっているのです。

 

そしてこの三つはいずれも、この地域における「過疎化」によって導かれたものです。

 

過疎化が進行していなければここまで極点に高齢化は進まなかった一方で、ここまで激烈な投資停滞が起こらず、耐震化率は自ずと高まっていたわけです。そして、政府がこの過疎化に対する対策に熱心であれば、道路ネットワークもさらに強靱化されていたことでしょう。

 

そして地方の過疎化は東京一極集中の完全なる裏返しである以上、今回の震災被害の肥大化はとどのつまり、東京一極集中が導いたと結論付けることができるのです。

 

おそらく、この結論だけを耳にした東京の方々を中心とした一般国民は、荒唐無稽な話しのように思われるかも知れません。

 

しかし、既に本記事をここまでお読み頂いた方には、東京一極集中さえなければ、ここまで被害が拡大しなかったであろうことは明白であるという「事実」をご理解いただけることでしょう。

 

さらに付言するなら、過疎化が進んでいなければより多くの建設業者が存在していたでしょうから、より迅速な復旧復興も遂げられたでしょうし、過疎化が進んでいなければ家屋の耐震強化のみならずあらゆる側面における強靱化のための民間の取組が進められたことでしょう。そうした点も踏まえれば、この結論は至って合理的なものだと言うことをさらにご理解いただけるのではないでしょうか。

 

 

今、被災地において必要なのは、繰り返しますが、救護救援、復旧復興です。しかし、そうした取組に全力を国家として投入すると同時に、この地震から我が国の脆弱性を検討すればするほどに、東京一極集中によってもたらされた地方部の過疎化とインフラ未整備が、極めて深刻な問題の源泉となっていることが明確に浮き彫りとなっているのです。

 

国家の強靱化のためにも、可及的速やかに東京一極集中対策を図らねばなりません。それこそが、これから幾度となく日本各地に襲いかかる能登半島地震の様な自然災害の被災者、被害者を減らすために、求められているのです。