テレヴィジオンに映ずる、格闘の半裸がふたり。
そのいずれかが上になったり下になったりと見苦しいのはさておいて、わが男性性もまたさておくと、その裏返ったり捲れあがったりする都度に耳許かまびすしく、「マウントポジション」の嘶きよ。
ほう、マウントポジションというのが有利なのだな。と頭上に見えざる不等号、ヒエラルキーを描きひき続き鑑賞していると、どうやら能動と受動の不等式が瞬く間、受動側より腕を捻られたりなんかして理が逆転するものだから、これは奥が深いのだなと。
そのようにしてわが腕の下より先程までの酩酊、前後不覚、一切が偽りであったとの厚顔ぶりすら通り越して、「実は」で始まった女性の内実とは、既婚、別居、息子、実家、不倫、仕事、恋愛、選択、しろ、みたいな有様で、自分はばねの利いた椅子に双方深々と腰を落とし、アルコール飲料などちろちろ舐めながら「実は」の愚痴を聴き、それは決して下心を起こさぬことでむしろ先方より自家発電される信頼に、自ずと、文字通り、衣裳が解けてゆく、そんな「実は」が好きなのであって、「実は」で始まる実話だなんて。
なんて詰まらない発想なんだ。
「不毛な関係なのに実も蓋もない話をするなんて」
「そうだろ、内実を語られてもそこに実は成るまい」
「それって上手いんですか?」
「美味くはない。熟れすぎて、腐っとるよ」
ちょうどその時、男の娘は野菜に犯されていた。