リーマンショックで世界経済が崩壊し始めて以来、世界中の国が安全資産として円を購入してきました。ドバイショック、ギリシャ信用不安、欧州金融不安と金融不安が再燃する度に、世界の諸国は円買いに走りました。しかしながら、日本及びその通貨である円には、金融危機の時に避難所となるほどの安全性と信用力があるのでしょうか?
 
ところで、平成22年度予算政府案一般会計歳入歳出概算によれば、歳入概算額の合計は92兆2,992億円であり、そのうち租税及び印紙収入の概算は37兆3,960億円、その他収入の概算は10兆6,002円で合計47兆9962円、それに公債金が44兆3,030億円です。すなわち、予算総額の約48%は借金に依存しています。これは520万円の年収のサラリーマンが毎年480万円を借金しているのに匹敵します(財務省ホームページ参照)。
 
一方、現在、国の借金は総額約870兆円あると言われています。すなわち、収入が概算で約48兆円の国が総額約870兆円の借金を負っている訳です。これは年収入の約18倍であり、年収520万円のサラリーマンが9425万円を借金しているのに匹敵します。この場合、仮に520万円の年収のサラリーマンが毎年年収の半額の260万円を返済したとすると、完済するのに36年以上かかり、もし毎年年収の4分の1の130万円を返済したとすると、72年以上かかります。利息を算入すればもっと負担は大きくなり、完済に100年以上もかかるでしょう。事実上完済不可能な額です(http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan003.pdf)。
 
そして、よく言われるのが、国債の保有者の99%は日本国籍者であり、これが日本国債の安定性の理由として誇張されます。しかしながら、国債の保有者の99%が日本国籍者であるということは、この金融国際化の時代に債務を支える基盤及び資金源も日本一国に限定されており、それ以上に拡大する可能性がないということを意味します。また、2010年度末における国債発行残高見込みは約637兆円であり(2009年12月25日朝日新聞)、仮に1.5%の利息を支払うとすると、10兆円以上の利息支払義務が生じます。すなわち、収入概算が48兆円及び公債金44兆円で10兆円の利息返済義務がある訳です。同時に、自民党の福田内閣、阿部内閣及び麻生内閣、民主党の鳩山内閣及び管内閣と2008年9月26日に福田内閣が成立してから現在までの2年未満の間に5名の内閣総理大臣が擁立され、日本は政治的にも極めて不安定です。こんな借金まみれの自転車操業で政治的に不安定な国家の安全性や信用力が高いはずがありません。ですから、円高には日本の安全性や信用力以外にも何か理由があるはずです。
 
そこで、考えられるのが、円高により米国やEUの貿易収支を改善することにより景気の浮揚を図り、不景気を脱出するために日本の経済に負担を転嫁されているのではないかということです。ところで、JETRO(日本貿易振興機構)の2008年の貿易収支統計によれば、日本とNAFTA(米国、カナダ及びメキシコ)の間の輸入総額は、2745億1千万USドル、日本とEU(25カ国)の間の輸入総額は、4129億2千万USドルでした。一方、日本とNAFTA(米国、カナダ及びメキシコ)の間の輸出総額は、5514億7千万USドル、日本とEU(25カ国)の間の輸出総額は、3679億7千万USドルでした。したがって、日本の欧米との貿易は大幅に輸出超過の黒字であり、円高になればなるほど欧米の貿易収支は黒字に傾き景気浮揚効果が生じるのに対し、日本の貿易収支は赤字に傾き景気低迷効果が生じることになると考えられます。そこで、欧米の金融不安再燃の度に円高になるのは、金融危機の時に避難所となるほどの安全性と信用力があるからではなく、むしろ金融不安再燃による景気低迷効果を日本に転嫁することに意義があるのではないかと思われます。