「昨年11月に某自動車販売店にてプリウス(総支払額150万円、走行距離1.7万km)を(H211024日契約)購入しましたが、バッテリーがメーカー基準電圧以下であったため交換を求めたところ5ヶ月経ってやっと代替え品が届きました。交換の際(331日)トランクルームに水がたまっていることが発覚し無償修理を要求しましたがあいまいな回答ばかりで話が先に進まず売買契約解除し返金を求めるように方針を変更しようと考えております」との事案ですが、売主の瑕疵担保責任(民法570条)の追求が考えられます。
 
売主の瑕疵担保責任(民法570条)とは、「売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合に売主に課せられる担保責任」のことをいい、売主の過失を要件としません。ここで「隠れた瑕疵」とは、「売買取引において買主が通常要求される程度の注意義務を尽くしても発見できない、売買契約の趣旨に適合しない目的物の品質や性能に起因する欠陥」と定義されます。要するに、買主が売買契約時にその欠陥の存在を知らず、かつ知らないことに過失がないこと(買主の善意・無過失)を意味します。そこで、本件における「バッテリーがメーカー基準電圧以下であった」こと及び「トランクルームに水がたまっていること」は「隠れた瑕疵」に該当すると考えます。
 
ところで、売主の瑕疵担保責任の規定(民法570条)は、民法566条1項を準用しており、契約の目的を達することができない場合にのみ契約の解除を認めています。この場合、同時に損害賠償の請求もできます(民法566条1項後段の反対解釈)。そして、契約の解除をすると、契約当事者双方は、原状回復義務(民法545条1項)を負いますから、買主(あなた)はプリウスの返還義務を負い、売主は売買代金の返還義務を負います。また、買主によるプリウスの返還義務と売主による売買代金の返還義務は同時履行の関係に立ちます(民法571条)。ただし、「契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内」にしなければなりません(民法566条3項、恐らく昨年の11月から起算)。
 
次に、買主は、「特定物の売買が解除された場合には、その間買主が所有者としてその物を使用収益した利益は、売主に償還」しなければなりません(最判昭34年9月22日民集一三-一一-一四五一)。一方、売主は、受領した時から受領した金銭に対する利息を支払わなければなりません(民法545条2項)。したがって、あなたは、「使用収益した利益」と「金銭に対する利息」の差額を売主に返還することになります。また、諸経費及び税金は、損害賠償として売主に請求できると考えます。ですから、あなたが実際に支払う金額は僅少であると考えます。