2013年5月21日及び22日に開催された国連拷問禁止委員会の席上、アフリカ・モーリシャスの委員から、日本の刑事手続における自白偏重の傾向及び異常に高い有罪率(地方裁判所レベルにおいて99.9%、簡易裁判所を含めた第一審レベルにおいて99.98%)に関して、日本を「日本の刑事手続は中世のようだ」と非難する発言がありました。
これに対し、日本の上田秀明人権大使は、以下のような発言をしました。
“Certainly. Japan is not in the middle age. We are one of the most advanced country(countries) in this field.”(会場からの苦笑) “Don’t laugh. Why are you laughing?””Shut up! Shut up!” “We are one of the most advanced country (countries) in this field. That is our proud(pride). Of course, there are still shortages. Of course, shortcomings. Every country has shortages and shortcomings.・・・”(http://www.youtube.com/watch?v=PUDUi3iT0wU)
「勿論、日本は中世ではない。我々は、この分野において最も進んだ国の1つである。」「笑うな。どうして笑っている。黙れ!黙れ!」「我々は、この分野において最も進んだ国の1つである。それが我々の誇りである。勿論、不十分なことはある。勿論、至らない面はある。どの国も不十分なことや至らない面は有している。」(筆者訳)
ここで細かい文法上の間違いはネイティブでもあるので不問に付すとしても、”shut up”は、日本語では「うるせえ」位に該当し、国際会議の公式の場の発言としては極めて不適切です。この発言には会場にいた委員も驚いて沈黙してしまいました。これは悲劇というよりも喜劇です。すなわち、1933年2月24日、国際連盟総会において、満州国における日本の行動に関するリットン調査団によるリットン報告書を受け、満州における中国の主権を認め、日本の占領を不当とする決議案を賛成42の圧倒的多数で可決する決議が為されました。これに対し、松岡洋右は、「この会議で採択された勧告を日本が受け入れることは不可能である」と勧告に反発し、日本の代表団を全員退場させ、翌年国際連盟を脱退してしまった事件を思い起こさせるからです(1933年3月28日)。
当時の日本は、科学技術も知識も進んだ強国だ自負して自信過剰になっていました(実際には、統計上は対米英戦遂行は極めて困難でした)。同様に、上田人権大使も、アフリカの発展途上国に人権問題を非難されたと思い、プライドを傷つけられたための発言だったかもしれません。さすがに、松岡洋右も"shut up"(うるせえ)とまでは発言しませんでしたから、その意味で上田人権大使の対応はあまりにも滑稽でした。注目すべきは、日本政府が国連の拷問禁止委員会の勧告を拒否して刑事手続上の問題はないと公式に反論した一方で、上田大使は改善すべき点があると認めていることです。ここで日本政府は、長年に渡り国連の刑事手続における人権状況の改善勧告を拒否してきたことを真摯に直視するべきです。