はじめに

気をつけ。

背筋を伸ばして、胸を張って、肩を後ろに引いて、膝をピンと伸ばして、かかとを揃える。

小学校で、この号令を何年もやりました。朝礼で、体育で、卒業式で。全員でやりました。

あれが、日本人の姿勢を壊しました。

姿勢矯正トレーナー Regulusの星子豊英です。今日は「知る力」の話です。何が間違っていたのかを知る。その1番目が、この気をつけ姿勢です。

なぜやると体が崩れるのか。代わりにどうすればいいのか。最後までお付き合いください。


気をつけをやると、体に何が起きているか

実際にやってみてください。

胸を張って、肩を引いて、かかとを揃えて、膝をピンと伸ばす。

この状態でしばらくいると、首や肩に力が入り、腰が痛くなり、太ももや膝にも力が入ります。これは重力に逆らっている、体に負担のある姿勢です。

この状態を何分も維持しろと言われたら、筋肉で支えるしかありません。

朝礼で立っていて気分が悪くなった子、いませんでしたか。あれは根性の問題ではありません。呼吸が浅くなっていたんです。

腸腰筋や胸椎が硬いのに、無理に胸を張ると、肋骨が固定されます。すると横隔膜が働きにくくなり、息が浅くなって、血が回らなくなる。

姿勢を正そうとして、呼吸を止めていたわけです。


気をつけが、反り腰をつくる

胸を張ると、肋骨の前が上がります。上半身が後ろに引かれるので、腰で支えるしかなくなる。

これが、反り腰です。

反り腰を治そうとしている方は本当に多い。ストレッチ、骨盤矯正、ピラティス、いろんなことを試してきたはずです。でも、原因は腰にはありません。

原因はもっと前、あの日の号令にあります。そして私たちは、大人になった今も、「姿勢を正しなさい」と言われるたびに、あの動作を繰り返してきました。


なぜ日本中でこれをやったのか

ここで疑問が出ます。なぜそんなことを、全国の学校で何十年もやってきたのか。

答えは単純で、あれは健康のための姿勢ではないからです。

気をつけは、集団を揃えるための号令です。全員を同じ形に並べて、同じタイミングで動かす。そのための姿勢です。

つまり目的が違います。体にとっていいかどうかは、最初から考えられていません。

これは誰かが悪いという話ではありません。そういう目的で作られた姿勢を、私たちが「いい姿勢」だと思い込んだ。それだけです。

前回の動画でお話した、まさに天動説と同じです。間違っていたというより、中心の置き場所が違っていた。


大人になっても、名前を変えて続いている

問題は、これが子供や学生の頃で終わってはいないということです。

大人になってから言われることを思い出してください。

「姿勢を正して」
「胸を張って」
「気をつけ」
「膝をピンと伸ばして」

全部、気をつけです。名前が変わっただけで、やっていることは同じ。

写真を撮るとき、人前に立つとき、面接のとき、朝礼や終礼のとき。「ちゃんとした姿勢をしよう」とした瞬間、多くの方は気をつけに戻ります。

そして整体やジム、ピラティスなどでも、似たようなことを言われます。

「骨盤は中立」
「胸を張って、肩は後ろ」
「膝をピンと伸ばして」

これも同じ形です。

腸腰筋や胸椎が硬いのに、そして胴体が癒着しているのに、無理に姿勢を作ろうとする。だから首、肩、腰、膝に負担を抱え、足もパンパンに張るので脚痩せしません。骨盤底筋も緩んでいます。

これが体の痛みや不調につながり、痩せないことにつながります。


子どもは、全員できていた

ここで、希望のある話をします。

3歳から6歳ぐらいの子供を見てください。誰も「背筋を伸ばせ」と言っていないのに、骨盤は前傾し、膝が緩んで、自然と立って歩いています。そしてしゃがむのも上手です。

腸腰筋や胸椎が柔らかいから、何分もしゃがんだまま遊び続ける。

大人でこれができない方は多いと思います。腰が痛い、膝が痛い。でも、「できなくなった」のであって、「元々はできていた」ことです。

中心の位置、つまり重心がずれてしまったからです。

子供は骨盤が前傾し、股関節に重心がある姿勢を取ります。そして腸腰筋や背骨もしなやかに動きます。だから力を使わずに立てますし、深くしゃがめる。

私たちも誰もが全員、そこにいました。


では、どうするか

今日は「知る力」の会なので、方法の詳しい話は次回以降に回します。

ただ、ひとつだけ試してください。

膝をピンと伸ばして、かかとを揃えて、胸を張って立つのではなく。

膝を少し緩めて、足の母趾球側に体重を乗せて、上半身を少しだけ前傾してください。

すると、手が軽くなる感覚が芽生えると思います。

緩めて、母趾球側。

これが、骨盤が前傾して股関節に重心がある姿勢です。

腸腰筋や胸椎が硬くて癒着が多い方は、このぐらい前傾しないと手が軽くなりません。これが重力に逆らわない、人間本来の重心の位置です。

胴体の癒着を取り除き、腸腰筋や背骨を動かして活性化していくと、骨盤が前傾で股関節重心のまま、上体が起こせるようになっていきます。

見た目は反り腰ですが、腸腰筋が柔らかいから腰椎に力は入っていません。これが、反り腰との違いです。


まとめ

姿勢は、作るものではありません。余計なことをやめると、勝手に戻ります。

今日は「知る力」の1回目でした。

気をつけという姿勢は、集団を揃えるための号令であって、体のための姿勢ではなかった。そして私たちは、それを今も正しいと思って繰り返している。

最後にもう一度。

続けている間だけ調子がいいのは、楽になっただけ。何もしなくても崩れないのが、変わったです。

今日の話も同じです。これは楽になる方法ではなく、変わる方法です。


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