はじめに

壁に背中をつけて姿勢をチェックする。かかと、お尻、背中、後頭部、全部が壁につけばいい姿勢。学校でも整体でもジムでもピラティスでも、そう教わります。

あれ、やめてください。

今日はその話をします。ただ壁立ちが間違いという話だけではありません。壁立ちも、気をつけも、姿勢矯正ベルトも、全部ひとつの勘違いから出ているという話です。

もしあなたが長年、整体やストレッチを続けてもすぐ戻ってしまうなら、今日の話でその根本的な理由と解決策がすべて分かります。そして最後に、じゃあ何をすればいいのか、5つに整理してお渡しします。

少しだけ遠回りをさせてください。なぜあなたの姿勢が変わらないのか。実は何百年も前の天文学の歴史と、まったく同じ罠にはまっているからです。


天動説と地動説

昔、人類は地球が宇宙の中心だと信じていました。天動説です。太陽も月も星も、全部が地球の周りを回っている。

ただこれで観測していると、おかしなことが起きます。惑星が途中で逆向きに動いて見える。順番に進んでいたはずの星が、ある日止まって戻っていく。

天動説の人たちは、この説明のために計算をどんどん複雑にしていきました。円の上にもうひとつ円を描いて、そこにまた円を描いて、何十個も円を足してなんとか説明しようとしました。

それがある日、一気に簡単になります。地動説です。中心を地球から太陽に置き換えました。それだけです。何十個も足した円が、全部いらなくなった。

大事なのは、知識が増えたから解決したのではないということ。中心を置き換えただけなんです。

姿勢も、まったく同じ話をしていきます。


姿勢の天動説

今、姿勢を良くするために、いろんなことが言われています。

背筋を伸ばす。胸を張る。肩を後ろに引く。骨盤は中立に。かかとから接地する。お腹に力を入れる。壁立ちでチェックする。体幹やインナーマッスルを鍛える。ストレッチをする。マッサージに通う。整体に通う。矯正ベルトをつける。インソールを入れる。骨盤チェアに座る。

多いですよね。多すぎませんか。

さっきの天動説と、まったく同じ形です。うまく説明できないから円を足していく。うまくいかないから方法を足していく。

なぜ足し続けることになるのか。中心の置き場所が間違っているからです。

今の姿勢の常識は、腸腰筋や背骨がガチガチなのに、無理に上体を起こそうとする。だから背中の筋肉で支えるしかない。支えるために鍛えろという話になる。鍛えても足りないから器具で固定する。固まって痛くなるからほぐしに行く。ほぐすと楽になる。でも次の日には戻る。だからまた通う。

これが姿勢の天動説です。


置き換える先は股関節

置き換える先は股関節なんです。膝ではなく、股関節に体の中心を置く。それだけです。

股関節に重心が乗り、腸腰筋と胸椎が柔らかいと、上半身を背中の筋肉で支える必要がなくなります。力で立つのではなく、構造で立つ。

これは特別な技術ではありません。皆さん、子供の頃は全員できていました。小さい子は、誰も「背筋を伸ばせ」と言われていないのに、ちゃんと立っています。しゃがむのも上手です。鍛えていません。重心の位置がずれていないだけです。

ではいつずれたのか。ひとつはっきりとした原因があります。

それは、この「気をつけ」です。胸を張って、背筋を伸ばして、重心は後ろ側に行く。首、肩、背中、腰、すべてが緊張します。姿勢を良くしようとして練習した動作が、重心をずらしていたわけです。

年齢のせいではありません。中心がずれているからです。


「楽になる」と「変わる」は違う

ここで、今日いちばんお伝えしたいところを話します。

私はマッサージや整体を否定するつもりはありません。技術の高い方は本当に大勢いらっしゃいます。急な痛み、怪我、病気は医療機関に行くべきです。それは通うのが正しい。

その上で、区別してください。

続けている間だけ調子がいいなら、それは楽になっただけです。何もしなくなっても崩れないのが、変わったです。

  • 矯正ベルトを外したら戻る → 楽になっただけ

  • 通うのをやめたら戻る → 楽になっただけ

楽になることが悪いのではありません。必要なときもあります。ただ、楽になることをいくら積み重ねても、変わることにはなりません。別の話なんです。

もしあなたが何年、何十年も通い続けているのなら、それは効果がなかったのではなく、変わるためのものではなかったからです。

このチャンネルは、後者の話だけをしていきます。


姿勢の五つの力

では、変わるために何をするのか。このチャンネルでやることを5つに整理しました。姿勢の五つの力と呼んでいます。この順番に進みます。

一 知る力

何が間違っていたのかを知る。まさに今日の話です。気をつけ、壁立ち、骨盤を中立に、かかとから接地する。これらがなぜ逆効果なのか。ここが分からないまま何をやっても、天動説のまま円を足し続けることになります。

二 測る力

自分の体を、自分で測る。自分で分かるようになる。これには6つの指標があります。手の重さ、胸を独立して動かせるか、胴体を90度ねじれるか、胸椎が反るか、肩甲骨が動くか、中心軸の4点が揃っているか。全部、道具なしでその場でできます。これができると、自分の体の変化を自分で確認できるようになります。

三 緩める力

土台を作る。何十年も動かしてこなかった場所は、癒着して固まっています。腸腰筋、胸椎、肩甲骨、骨盤。ここが動くようにならないと、そもそも重心を移せません。

**ここからが重要です。**多くの人がこの3つ目で止まっています。緩めるまでは「楽になる」。4つ目に進んで初めて「変わる」が始まります。

四 使う力

日常のすべてを股関節重心にします。立つ、座る、しゃがむ、歩く。パソコン、スマホ、寝る、家事、走る、スポーツ。1日は24時間あります。10分のトレーニングより、残りの23時間50分のほうが体を作っています。ここが変わって初めて、体が変わります。

五 続ける力

何もしなくても崩れない状態にする。毎日やらないといけないうちは、まだ終わっていません。やらなくても戻らなくなったら、卒業です。私は皆さんに卒業してほしいと思っています。


もう一度言います。

知る、測る、緩める、使う、続ける。

3つ目の「緩める」までが「楽になる」。「使う」「続ける」に進んで初めて「変わる」です。


なぜ私がこの話をしているのか

最後に、少しだけ自分の話をさせてください。

私はもともと消防にいました。13年間、救急隊とハイパーレスキュー隊で、災害と救急の現場にいました。

現場では、人が壊れる瞬間を何度も見ます。救急車を呼ぶほどではないけれど、もう自分で立ち上がれなくなっている方。何年も腰が痛いまま、痛み止めを飲みながら暮らしている方。転んで骨折して、そこから寝たきりになっている方。

そういう方に共通していたのが、姿勢でした。急に壊れたのではなく、何十年もかけて少しずつずれて、最後に限界を超えている。救急は、その限界を超えた人を運ぶ仕事です。

ただ私は、運ぶ前に何とかできることがあるんじゃないか。そうずっと思っていました。

2020年に重心力トレーニングと出会って、「中心を置き換える」という発想を知りました。自分の体で確かめて、これだと思いました。2023年3月に消防を辞めて、今は3,000人以上の方を指導してきました。オリンピック選手、医師、日本代表選手、芸能人、経営者、小学生、一般女性、一般男性。全員に、同じことを言ってきました。

中心を置き換えましょう。


まとめ

次回から、姿勢の五つの力をひとつずつやっていきます。まずは知る力から。気をつけが何をしていたのか、壁立ちがなぜ意味がないのか。ここを崩していきます。

最後にもう一度。

続けている間だけ調子がいいなら、それは楽になっただけ。何もしなくなっても崩れないのが、変わる。

このアカウントが話すのは、後者だけです。


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