「たかがバランスボード」と思われがちな、一枚の板。

けれど、そこにどう乗るかで、身体はまったくの別物になります。

今回は、バランスボードという道具を通して「中心軸とはどこなのか」「股関節重心とはどういう状態なのか」を、構造から整理してお話しします。

たかがバランスボード、されどバランスボード

まず前提として、バランスボードは「身体を変えてくれる道具」ではありません。

道具が身体を変えるのではなく、道具が“今の自分の癖”を教えてくれる。

これが正しい捉え方です。

そのうえで言うと、バランスボードは 股関節重心を手に入れるための道具 になります。乗ることが目的ではなく、乗った時に何が起きているかを観察するための道具、ということですね。

「乗れる」と「止まる」は、まったく別物

つま先はまっすぐ、一拳分ほどの均等な位置。

そこから目指す最終形態は、完全静止です。

ボードの上でピタッと止まる。ブレない。これが「股関節に重心があり、中心軸がある」という状態の定義になります。

ここで多くの方が誤解されるのですが、乗ること自体は、基本的に誰でもできます。

一般の方でも、子どもでも、高齢の方でも、乗ろうと思えば乗れる。

問題はその先です。

ブレているということは、重心が揃っていないということ。

つまり、身体のどこかに負担がかかっている。どこかに力が入っている姿勢だ、ということなんです。

微妙に動いているだけでもダメ。極端に聞こえるかもしれませんが、そのくらいシビアな話です。

教科書の姿勢では、なぜ止まらないのか

一般に「良い姿勢」として認知されているのは、こういう形です。

  • 膝がピンと伸びている

  • 重心が少し後ろにある

  • 胸を張って、壁立ちのようにまっすぐ

医学生の教科書に載っている姿勢ですね。

ただ、これは 骨格バランスのみを考慮した姿勢 なんです。

実際にこの形でボードに乗ってみると——止まりません。私自身、止めようと思ってもブレてしまいます。

骨だけで組み立てた設計図だから、現実の身体では成立しない。そういうことです。

内臓の重さを勘定に入れると、膝が緩んで少し前になる

では、股関節重心とは何か。

内臓の重さまで考慮に入れると、膝が「すっ」と少し緩んで、重心がわずかに前に来ます。

力を抜いて、すっと。

するとボードが止まります。ビタッと。

この違いなんです。

「胸を張って、膝を伸ばして」と習ってきた姿勢が、なぜあんなに疲れるのか。答えはここにあります。姿勢を保とうとして力で立っているからです。

重力と喧嘩しない位置に身体を置く。力で立つのをやめたとき、身体は勝手に整いはじめます。

中心軸の4点チェック

中心軸があるかどうかは、この4点が縦一直線に揃っているかで判断します。

  1. 首の根元

  2. みぞおちの中心

  3. 骨盤の中心

  4. 足首の根元

ここがビタッと揃う。これが「中心軸がある」という状態です。

そのうえで、

  • 骨盤は前傾

  • 足の裏はフラット

  • 肩は下がって、背中側に位置し、胸郭が開く

この条件が揃います。

肩の位置を見れば、一発でわかる

これは断言できるのですが、腸腰筋が活性化している人は、肩が必ず下がって背中側に来ます。

構造的に、そうなるんです。癒着がなく腸腰筋が働いていれば、肩は勝手にその位置に収まる。

逆に言えば、猫背・巻き肩があると、肩がグッと上がって前に出る。

なで肩の方でも、だいたい巻いています。「肩は低いけれど、巻いている」という状態ですね。

だから肩の位置を見れば、胴体深部が動いているか、一発で判別できます。

止まらない人は、まず「前傾」から

腸腰筋と背骨が硬い方、癒着が多い方は、まず前傾から入ります。

少し前傾しないと、止まらないんです。

でも、それでいい。まずはそこからです。「前傾して止まった」——それも立派な股関節重心です。

そこから、1日10分の体操を継続して癒着を取り、腸腰筋と背骨を柔らかくしていく。

すると、だんだんと上体を起こせるようになっていきます。柔らかくなるから、起きるだけ。ただそれだけです。

もちろんその過程で、猫背・巻き肩・反り腰・ストレートネック・O脚・X脚を並行して解消しながら、そこに持っていく必要があります。

股関節で捉える、4つの条件

「股関節で捉えている」という状態は、次の4つが全部揃って初めて成立します。

  1. 骨盤の向き

  2. 足の裏

  3. 上半身の角度

  4. 膝の曲げ具合

どれか一つでは成立しません。

面白いのは、骨盤が中立でも「捉えている」状態はあるということ。

たとえば下り坂。あれは少し注意が必要な場面で、身体を持っていかれやすい。骨盤を少し起こすと中立になりますが、股関節では捉えたままでいられます。

逆に、この微妙な角度が崩れると、途端に膝に負担が入ります。

この微妙な角度こそが、いちばん重要です。

普段の姿勢は「ふんわり」でいい

では日常でどう立つのか。

すっと、ふんわり立つ。 力を入れずに、です。

膝がピンと伸びる瞬間は、ほぼありません。

ピンと伸びて後ろに重心がある瞬間は、日常の中に存在しないと思ってください。

ちょっと膝が緩んで、ちょっと前にある。これが股関節で捉えている姿勢です。

痛みを取るために、やるのではない

ここは誤解されやすいところなので、はっきりお伝えします。

「この痛みがあるから、これをやる」ではありません。

この姿勢を目指していく過程で、結果として痛みや不調が整っていく。

なぜなら、これが人間が本来持っている構造だからです。

順番が逆なんですね。対症的に何かをするのではなく、本来の構造に戻していく。その副産物として、身体が楽になっていく。

最後に

バランスボードをお持ちでない方は、楽天市場などで「アジャスタブル バランスボード」と検索すると出てきます(他社製品ですが、角度が調節できるタイプがおすすめです)。

まずは乗ってみて、自分がどう揺れるかを観察してみてください。

そこに、今のあなたの重心のクセが全部出ます。

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