ワールドカップの舞台から、フランス代表オリーセ選手のあの動きを題材にお話しします。ボールを持った瞬間に相手を置き去りにする、あのボディフェイント。やってみたいと思いませんか?これができたら、本当に半端ないです。
結論から言います。あの動きの正体は、2つです。ひとつは、股関節で「捉える」こと。もうひとつは、腸腰筋と肋骨がしなやかに動くこと。もちろん技術も判断力も必要ですが、今日お伝えしたいのは、そのすべての土台になる「体の使い方」そのものです。
まずはこの動きから ― 胴体の独立
動きを連続で見ると速すぎるので、ゆっくり分解していきます。
大前提になるのが、首の根元から下、つまり胴体を独立して動かせるかどうかです。膝を軽く緩めて、鎖骨とみぞおち、そしておへそのあたりを、それぞれバラバラに動かせる。しかも頭と骨盤は動かさない。この状態がつくれると、あのしなやかな動きの入り口に立てます。
さらに、一番やってはいけないのが、膝に入ってしまうことです。膝がグッと沈んで、そこで支えようとする。これでは絶対にできません。股関節で捉えて、膝は曲げない。ここがすべての分かれ道です。
具体的には、鎖骨を左に、みぞおちを右に落とす。今度は逆に、みぞおちを反対側へ落とす。このとき肋骨と腸腰筋がキュッと縮んでいます。それでいて膝は開かず、曲がらない。支えているのは股関節です。左右、左右と連続させていくと、あのオリーセ選手のような胴体の動きになっていきます。
土台が膝重心のままでは、この動きは一生手に入りません。胴体がガチガチでも同じです。逆に言えば、ここを理解できた人にだけ、世界基準の入り口が開きます。
ディフェンスの「一歩の遅れ」も膝で決まる
同じ場面を守備側から見ると、もっとはっきりします。
抜かれる瞬間、ディフェンダーの最後の一歩が膝に入っているんです。膝に入ると、そこで一瞬固まって、一歩遅れる。だから振られてしまう。これが股関節で捉えきれていれば、体はもっとついていけたはずです。
攻撃も守備も、勝負を分けているのは同じところ。膝で受けるのか、股関節で捉えるのか。それだけなんです。
手前でも奥でも、膝の人は膝
サッカー日本代表・佐野海舟選手がバスから降りる動画では、コメントで「手前だから」「遠いから」「高さが違うから」と言われます。でも、そこは本質ではありません。
手前でも、膝で処理する人は膝で処理します。奥でも、膝の人はやっぱり膝です。逆に股関節で捉えられる人は、手前でも奥でも、膝を曲げずにそこで捉えます。距離やコースの問題ではなく、そもそも体のどこで受けているか。ここに差が出ます。
その動きを支える「立ち姿勢」
では、股関節で捉える体は、どんな立ち姿勢から生まれるのか。ポイントを整理します。
骨盤は自然に前傾し、足の裏はフラットに接地する。胸郭が開いて、肩は下がり、やや背中側に収まる。そして首はまっすぐ。この姿勢が土台にならないと、先ほどの動きは手に入りません。
反対に、骨盤後傾(中立)、猫背・巻き肩の姿勢では、胴体も背骨もガチガチに固まってしまう。そうなると膝で無理やり動くしかなくなり、あの膝パターンから抜け出せなくなります。
なぜ「頭を振るフェイント」ではダメなのか
頭を大きく振ってかわす選手もいます。でも、あれには決定的な弱点があります。視野が消えるんです。
胴体の動きでかわしている選手は、実はずっと前を見続けています。ボールも相手も視界に入れたまま、背後まで感じ取って動いている。ところが頭を振ると、その一瞬、視野が消える。実際にやってみるとよく分かります。
オリーセ選手は、ずっと見ています。だからこそ、こっちに来たボールを落とし、また逆へ運び、相手の動きを見ながら選び続けられる。頭ではなく胴体で動くから、目が生きたままなんです。
どうやってこの体をつくるのか
理屈だけで終わらせたくないので、実際のアプローチにも触れておきます。
まず、肋骨と腸腰筋、そして胴体まわりの「癒着」を取り除いていきます。そのうえで腸腰筋へ正確にアプローチする。ここが要です。
道具としては、バランスボードを使います。いろいろな乗り方をしていくのですが、はじめは違和感のある母趾側、股関節重心の立ち方・歩き方から入ります。胴体が長く使えるようになるにつれて、重心の位置がだんだん上がっていき、先ほどお伝えした理想の姿勢が手に入っていきます。
レベルが上がると、チューブを3種類使います。狙うのは背骨、腸腰筋、骨盤。そこへアプローチする体操を1日10分。この積み重ねの過程で、ステップ練習なども加えていきます。特別なことを一気にやるのではなく、正しいところに、毎日少しずつ。これが遠回りに見えて一番の近道です。
キックの質も「縮み」で決まる
シュートも同じ原理です。
ボールを蹴る瞬間、脇腹がキュッと縮んでいるか。これが可動域を決めます。手前にボールが来ても、そこでグッと縮めて調整できる。これはPKと同じ感覚です。逆に胴体が硬いと、足でしか蹴れません。
視聴者の方から「脇腹が縮むようにシュートしてみたら、足の振り幅がものすごく広がった」という声がありました。まさにそれです。これはやった人にしか分からない世界で、やってみると本当に別物になります。
ボレーシュートやミドルシュートも同じで、胴体が硬く膝重心の人は、トラップのときに頭が流れてしまいます。縮めて股関節で捉えられると、頭は流れず、キュッと収まる。日本にボレーやミドルが少ない理由も、実はこのあたりにあると考えています。
余談ですが、私自身もサッカーで全中優勝を経験しています。日本代表・谷口彰悟選手のひとつ上の世代で、熊本県高校サッカー選手権決勝では、彼をマークしました。日本代表選手は、足先の技術はもちろん一流ですが、私がお話ししているのは胴体や重心といった土台の話です。さらにパフォーマンスが向上できるということです。
これはスポーツだけの話ではない
ここまで読んで、「サッカーの話でしょう」と思われたかもしれません。でも、股関節で捉えるというこの質は、そのまま健康と美容の鍵でもあります。
たとえば腰痛。目指すべきは、腰椎に圧力がかかっていない姿勢です。膝を少し緩めてふわりと立ち、重心が股関節に乗っている。このとき腰椎には力が入っていません。重心が股関節にあって、腰まわりを腸腰筋で支えているからです。逆に、いわゆる「反り腰」で膝をピンと張ると、腰に力が集中し、太ももがパンパンに張ってしまう。だから脚も痩せません。
膝を緩めて母趾のほうにわずかに乗せ、少しだけ前傾する。それだけで太ももから力が抜けていきます。これが、どこにも負担のない股関節重心の質です。癒着を取り、腸腰筋と背骨をやわらかくしていくと、重心が自然に上がり、理想の姿勢に近づいていきます。
お子さんの姿勢について
お子さんの床座りについても質問をいただきました。
大事なのは、骨盤を後傾させないことです。しっかり骨盤を立てて、まっすぐではなく、ほんの少し前傾させる。この状態でタブレットを見れば、姿勢は崩れません。骨盤が後傾すると背骨まで曲がってしまうので、まず座り方から整えてあげてください。体育座りも同じで、後傾はNG。骨盤を立ててやや前へ寄せると、ぐっと良くなります。横座りが崩れやすいのも、骨盤が後傾しやすいから。骨盤さえ立てられれば大丈夫です。
そして今、小学校1年生から4年生を対象にしたゴールデンエイジ向けのプログラム 姿勢レスキューRegulusを準備しています。既存の個別プログラムより少しお手頃な金額で、期間は18ヶ月。ポイントは、お父さん・お母さん自身が教えられるようにしていくことです。ぜひご家族でこの動きを手に入れてほしいと思っています。9月から10月ごろのスタートを予定していますので、もう少しだけお待ちいただけると嬉しいです。
最後に
技術、判断力、メンタル、チーム戦術。この領域は、日本も本当に素晴らしいものを持っています。だからこそ、次に伸ばすべきは、胴体と重心という「体の土台」だと私は考えています。
まずは姿勢・骨格診断から始めてみてください。ドリブルをされている方には、ドリブル診断もしています。動画や写真を送っていただければチェックします。
股関節で捉え、胴体で動く。その一歩を、ここから一緒に手に入れていきましょう。
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