「正しい姿勢」と聞いて、多くの方が思い浮かべるのは、膝がピンと伸びて、骨盤が中立に立った、背筋のまっすぐな姿勢ではないでしょうか。

実は、その姿勢こそが体に負担をかけている。今日はその理由を、できるだけ言葉にして、そして実際に体感していただきながらお伝えします。

教科書の「正しい姿勢」は、骨だけを見ている

世間で認知されている「正しい姿勢」は、骨格バランス、つまり骨だけを考慮した姿勢です。

しかし、人間には内臓があります。この内臓の重さ(約4.6kg)が加わることで、教科書どおりの姿勢からは、少し膝がゆるみ、上半身がやや前のめりになります。骨盤の向きも、中立から内臓の重さによってわずかに前傾していく。これが、人間が本来とるべき姿勢のイメージです。

バランスボードで「負担」を見える化する

この違いを、姿勢矯正で使うバランスボードを使って検証してみます。

まず、骨格バランスのみを考慮した、医学生の教科書に載っている姿勢。膝はピンと伸び、骨盤は中立。この状態でボードに乗ると、重力に逆らうため、止めようとしても少しブレてしまいます。重力に逆らっている=体のどこかに力が入っている、あるいは負担がかかっている状態だと考えてください。

次に、内臓の重さを考慮し、股関節に重心がある姿勢へ切り替えます。少し膝をゆるめ、上半身をやや前傾に。するとボードがピタリと止まります。

重力に逆らっていない、つまり体への負担がどこにもない姿勢。ふんわりと浮いたような姿勢と動きが手に入ります。これが、レグルスで目指す股関節重心の姿勢です。

まずは「股関節重心」を体感してみてください

言葉だけではイメージしづらいと思うので、その場でできる体感法をご紹介します。

つま先はまっすぐ、足の間は拳ひとつ分。まずは膝をピンと伸ばしてまっすぐ立ち、その姿勢のまま両手を振ってみてください。片手だけでも構いません。

手の重さを感じながら、少し膝をゆるめ、母趾(親指)の付け根に体重を乗せるイメージで動かします。感覚としては、お尻の上を後ろに突き出すような感覚です。手を振りながら、お尻を突き出すように体重を乗せるために、上半身を少し倒していきます。

注意点は、指先ではなく母趾の付け根に乗せること。

うまくいくと、振っている手がスッと軽くなる位置が見つかると思います。手が軽い=首・肩・腰・太もも、どこにも負担がかかっていない、ということ。これが、重力に逆らっていない股関節重心の姿勢です。

上半身を倒す角度には個人差があります。腸腰筋と背骨の柔軟性、そして胴体の癒着の程度によって変わるからです。癒着が多く、腸腰筋や背骨が硬い方は、しっかり倒さないとこの軽い感覚はつかめません。

おまけ:噛み合わせも変わる

この姿勢のとき、実は噛み合わせも変わります。カチカチと噛んでいただくと、噛みやすいはずです。最初の「膝を伸ばした姿勢」に戻すと、手も重くなり、噛み合わせにも少し抵抗を感じる。これが重力の違いです。

「一生前傾のままなの?」――いいえ、違います

ここで、「じゃあずっと前かがみで過ごすの?」と思いますよね。

そうではありません。だからこそ、1日10分の体操で胴体の癒着を取り除き、腸腰筋と背骨の柔軟性を高めていきます。あわせて、バランスボードに乗ったり、立ち方・歩き方・座り方を股関節重心に矯正していく。

そうすることで、骨盤が前傾し、母趾・股関節重心のまま、腰が張らずに上半身を起こせるようになっていきます。

1ヶ月、半年、そして1年後の姿勢

1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月。半年、8ヶ月、10ヶ月、そして1年。

少しずつ柔軟性が高まると、最初にお見せした「骨盤が前傾なのに、上半身はまっすぐ起きている姿勢」に近づいていきます。これがいわゆるゼロポジション。レグルスで目指す、どこにも負担のない姿勢です。

この姿勢を言葉にすると――

  • 肩が下に下がり、背中側へ移る(癒着がなく腸腰筋が柔らかいから、この位置に収まる)

  • 背骨が柔らかいことで、首の下がまっすぐになる

  • 骨盤が前傾なのに、胸郭が開く

胸郭が開くことで呼吸が深くなり、血流が促され、睡眠の質・基礎代謝・自律神経の安定にもつながっていきます。

「反り腰」との決定的な違い

注意したいのが、先ほどの軽い位置のまま、母趾重心で無理に胸を上げようとすると、腰が張ってしまうこと。これは腰椎に圧力がかかった状態――いわゆる反り腰です。

腸腰筋と背骨の柔軟性がないまま上半身を起こすと、必ず腰椎に負担が出ます。逆に言えば、柔軟性さえ高まれば、腰椎に圧力をかけずに上半身を起こすことが可能になる。ここがゼロポジションと反り腰の分かれ目です。

段階的に強度を上げていく

腸腰筋・背骨・骨盤へのアプローチは、強度を上げながら進めます。レベル4からはチューブを1種類、レベル5からは2種類のチューブを使い、レベル8に向けて少しずつ強度を高めていきます。

体操は段階を追うごとに難しくなりますが、小学生でも、正しく行えばしっかり習得できます。これは人間本来の姿勢と構造に沿った動きだからです。

姿勢を変えることは、体づくりそのもの

股関節重心を取り戻していくと、

  • 痛みや不調へのアプローチ

  • 姿勢の改善

  • 自然な体型の変化

  • スポーツ動作への応用

これらを総合した「体づくり」につながっていきます。胸と骨盤を分離させたり、3点(鎖骨・みぞおち・おへそ)を独立して動かしたり、膝をゆるめて母趾・骨盤前傾のまま胸椎から反ったり――こうした動きが手に入ります。

まずは、今日お伝えした股関節重心の感覚を一度体感してみてください。

裏を返せば、毎日無意識に重力に逆らっているからこそ、体への負担が高まり、痛みや不調、痩せにくさにつながっている、という現状でもあります。

その一歩目として、ぜひ今日、手を振りながらの体感を実践してみてください。

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