実は、この小説には、もうひとつテーマがあります。
バンドの「ASIAN KUNG-HU GENERATION」のニューアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」の中の曲名です。
アルバム中の曲名をテーマに書くので多少入らない駅もあると思いますが。
メンバーに交渉中なのですが果たしてどうなのか。結果が決まり次第、題、および各章の題名を決めて行きます。
では、まもなくはじまります。
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プロローグ
神奈川県の藤沢-鎌倉間を結ぶ鉄道。町の中を走るこの鉄道は、湘南観光には欠かせない存在となっている。
人々はそれを江ノ電と呼ぶ。そして誰もが美しい気分になれる鉄道でもある。
それがどんなに悲しい気分で乗ったとしても。
それがどんなにつらく、苦しい気分であったとしても。
この鉄道は、それらのマイナスな気分を忘れさせてくれるような美しい景色を見せてくれる。
この物語は、実際にあった出来事ではないが、この江ノ電を中心に繰り広げられるいろんな人物の出来事を、この鉄道の各駅各章で紹介して行く物語である。
~第一章~
とある公園のベンチに座っている一人の青年。
藤沢勉は果てしなく広がるこの大空を、ただじーっと見つめていた。
彼は来年の春に、大学受験のために東京へ行く事を考えていた。勉はずっとそれを主張するが、家族はそれに大反対。
「ただでさえ勉強ができないのに、どうしてそんなところへ行くの」
「東京でお前がやっていけるなんて考えられない。それより後継ぎはどうしたんだ。お前にもいずれはこの店を継いで行かなくてはならないんだぞ。絶対にやめろ」
「どうして東京なんて行くんだよ。兄貴。ここで十分だろ」
「東京は怖いところなんだよ。お兄ちゃんがそんなところで一人で暮らすなんて危ないからやめたほうがいいわ」
八百屋の長男はいろいろ考えているうちに、母、父、弟、妹の昨日の家族全員のお説教がステレオ感覚で聞こえてきた。勉はそれを手で振り払おうとするなり、ベンチに寝転んだ。
「俺だって・・・、そんな軽い気持ちで考えてるわけねえじゃねえか。だいたい・・・」
そんな風に愚痴をこぼしているうちに、いつの間にか十二時のサイレンがなった。と同時に勉の腹の虫が鳴いた。
もちろん軽い気持ちで大学のことを考えているわけではない。
あれは、高校の文化祭の昼休みのことだ。突然後ろから大学の先輩が話しかけてきた。勉もそちらを向いた。
「藤沢。お前大学はどこにするつもりなんだよ」
「えっ。それはちょっと、まだ・・・」
はははと笑った後、高校の元先輩は答えた。「相変わらず何も考えてないんだな。やっぱり能天気さは変わってないな」
「余計なお世話ですよ」しかし顔は笑っている。
「いい大学があるんだ。俺が通ってるとこなんだけどさ」そういって先輩は大学のパンフレットを渡して言った。
「相談ならいつでもいいぞ。メールでも言いし、電話でもいい。携帯は変わってないから心配するな」
この言葉を思い出すと、家に向かっている足をくるりと変えて江ノ電の藤沢駅の方向へ足を向けた。
藤沢駅に着くと切符を買い、足早にホームへ向かった。
休日とはいえ、時間帯のせいか、人が少ない。朝早く出かけたのだろう。時計は十二時十六分を回ったところだった。
(次回へ続く)
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