「夕食後、話がある」その話を聞いて、何なんだ、と思いながら家族全員が居間に集まった。

 「父さん母さん。裕太。沙耶子も、よく聞いて。じつは・・・」

 「東京に進学するって話だろ」父さんのすばやい答え方に、勉は少し戸惑った。

 「先生にそのこと相談したの。そしたらね、成績が今ものすごくよくて、東京の大学にいっても問題ないだろうって、先生そういったの」これを行ったのはお母さんだった。

 「ほんと!?」

 「ああ。だから向こうでたくさんがんばって、父さん母さんを楽にさせてくれよ」

 あまりの話に、勉は涙が出るのを隠せなかった。「じゃあ、これでいいんだね。裕太も、沙耶子も」

 「うん」と弟と妹の元気な返事が聞こえてきた。

  

 

 受験が終わった。結果が出た。勉は飛び上がって喜んだ。合格していたのだ。

 家族もみんな喜んで、八百屋もその日だけ全部値段が安くなっていた。

 そして、出発の日。家族や近所の人もみんな駆け付け合格と上京を祝ってくれた。

 

 勉は3番線のホームから手を振って、列車が来るのを待っていた。


 第一章 終わり 第二章へ


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 やっと終わりました第一章。

 来月から第二章をお送りいたします。

 そう思って駅のホームを見るともう電車は言った後だった。

 どうしよう、と思いながら改札口の前を回っていると、

 「どうなさいましたか」と、駅員が聞いてきた。

 そんなどうしようもない時だった。改札口の前から勉の名前を呼ぶ声がした。先輩である柿本だ。事前にそちらに伺うと、連絡していたようだ。

 「せんぱあい」大声を出しながら、大きく手を振った。勉にとっては、神様、いや、救世主といっても過言ではないくらいだった。

 先輩に切符をなくしたことを話すと、笑いながら、切符代を立て替えてくれた。

 「ははは、お前はやっぱりおっちょこちょいだなあ」

 「ほっといてくださいよ」勉は眉を寄せながら嘆いた。

 「もうすぐ着くから着いてから話そう。」

 新築のように新しいアパートに柿本は住んでいた。

 部屋について、柿本は「散らかってるけど気にするな」そう言って冷蔵庫からジュースのペットボトルを取り出し、コップに注いだ。しかし、どこにも散らかっている様子はなかった。むしろ、きれいといったほうが正しい。そう言おうと思ったが、言わぬまま心にしまっておいた。

 「で、相談てのは?」ジュースの入ったコップをテーブルに置き、自分も座って話を切り出してきた。勉は、相談したいことと、自分の思いを詳しく正確に話した。

 想いをすべて伝えると、勉はすっきりしたようにコップに口をつけゴクゴクとジュースを飲み干した。

 その間、ずっと柿本は何かを考えるようにうんうんうなっていた。

 今まで考えていた柿本の目が勉に目を向けた。

 何10秒かの沈黙が続いた後、ようやく柿本が口を開いた。

 「お前の考えは間違ってない。でも、家族の反対を押し切ってまで、東京の大学に通う理由は何なんだ」

 真剣な目で言ってきた。そして続けた。「これを言おうか迷っていたんだ。お前の頑張りがものすごく伝わってきてな」

 勉はしばらく黙った後、口を開けた。

 「俺、できたら東京のほうで働きたいんです。うちはあんまり裕福じゃないし。東京で働いて、家族を楽にさせてやりたいんです」真剣な目で柿本を見た。「それが・・・、反対を押し切ってまで東京で勉強する理由です」

 すると、今まで真剣な顔をしていた柿本の顔が、笑顔になった。

 「そうか・・・。それが理由か。偉いなあ。お前も」

 そう言って、黙ってからまた口を開いた。

 「俺も最初はそうだったんだ。今俺が通ってる大学へ進学するといったら、家族の猛反発にあったよ。俺はもう泣きそうになったんだ。もうどうしようもなくてさ、俺の先輩に相談したんだ。先輩は俺の想いに反対しなかった。でも、その後の言葉。これがすっごく心に響いてさ」そこまで言うと、はあ、とため息をして続けた。

 「『俺はお前の想いには反対しない。だけど、反対を押し切ってまで行くのにはかなりの覚悟がいる。もし仮に家族が賛成してくれてもだ。思いっきりがんばらないといけない。その覚悟が、お前にはあるか?』ってね」

 そこまで言うとまたため息をついた。

 すると今まで静かに聞いていた勉が立ち上がり、真剣な目になった。

 「俺、なんだかわかったような気がします。先輩のおかげです。ありがとうございます」

 そう言って頭を下げた。柿本は少しびっくりしたような感じだったが、「がんばれよ」と励ましてきた。

 

 「今度は切符、なくすんじゃないぞ」

 「わかってますって」

 元気な会話の後、勉は江ノ電に乗って帰っていった。

 勉は窓をずっと眺めていた。夜景がきれいだ。

 藤沢駅に着き、まっすぐ家に帰っていった。時計は6時を指していた。

 親になんと言おうか、などと考えながら自分の部屋に入っていった。


続く


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すみませんずっと更新してなくて。

肺炎のため入院してました。

誰もいない2番線のホームに勉は列車が来るのを待っていた。

そろそろだろう頃、前から列車が来て勉の目の前で止まった。少し前に行き過ぎたようだった。

 深緑の色にかかったクリームのライン、それはまさしく江ノ電だった。

 少し戻って一番前のドアの前に立ち、ドアが開くのを待った。

 ドアが開いた。しかし突然誰見知らぬ人がひょっと出てきた。

「あ、すいません」

いえいえ、と言いつつもその人の目は少し勉を睨んだようだった。しかし勉はそれを気にせずに中に入っていった。中は誰もおらず、その車両の中は勉の貸しきり状態となっていた。

それでも彼は何も気にしない。バッグの中から携帯音楽プレイヤーを取り出し、バンドASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」の中の「藤沢ルーザー」にポインタを合わせ、ヘッドホンを耳に入れて再生ボタンを押した。

「うわあっ」

勉は大きな声を上げた。その声は車両中に響いた。さいわい誰もいなかったが、隣にも聞こえたようでドアが開き、

「大丈夫ですか」

「ああ、大丈夫です。すみません」

今日はずっと謝ってばかりだ。

落ち着いてヘッドホンを耳から外して、プレイヤー画面の音量画面をみてみると、音量が最大値になっていた。勉にはまったく心当たりは無かった。そのとき、勉の頭の中には弟である裕太の顔が浮かび上がった。

 「裕太、あいつめ・・・」

そう口に出そうと思ったが、心の中だけでつぶやいておくことにした。それでも、腹中は煮えたぎっていた。が、それはすぐに納まったようだ。の

音量と曲を元に戻して再び再生ボタンを押した。エレキギターの激しい伴奏が始まった。

ボーカルの声にあわせ口パクで歌った。勉にとってはいいストレス発散になった。

勉の乗った江ノ電は江ノ島駅を過ぎ、いくつかの駅に止まった。勉の貸しきり状態であった車両にも何人か乗ってきたが、途中ですぐに降りた。多分観光だろう。

途中小さな子を連れた親が乗ってきた。4歳くらいの小さなその子供は、楽しそうにガラス越しに外の景色を見てはしゃいでいる。

自分にもそんな頃があったと思いながら、勉はいつの間にか寝ていた。

鎌倉駅に着き、放送アナウンスが聞こえると勉は目を覚まし、ホームに出て改札口へ行きながら右ポケットの中を探った。

勉はハッとした。切符が無い。左ポケットを探してもない。どうやら電車の中だろう。

実は、この小説には、もうひとつテーマがあります。

バンドの「ASIAN KUNG-HU GENERATION」のニューアルバム「サーフ ブンガク カマクラ」の中の曲名です。

アルバム中の曲名をテーマに書くので多少入らない駅もあると思いますが。

メンバーに交渉中なのですが果たしてどうなのか。結果が決まり次第、題、および各章の題名を決めて行きます。

では、まもなくはじまります。

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                             プロローグ

 神奈川県の藤沢-鎌倉間を結ぶ鉄道。町の中を走るこの鉄道は、湘南観光には欠かせない存在となっている。

 人々はそれを江ノ電と呼ぶ。そして誰もが美しい気分になれる鉄道でもある。

 それがどんなに悲しい気分で乗ったとしても。

 それがどんなにつらく、苦しい気分であったとしても。

 この鉄道は、それらのマイナスな気分を忘れさせてくれるような美しい景色を見せてくれる。

 この物語は、実際にあった出来事ではないが、この江ノ電を中心に繰り広げられるいろんな人物の出来事を、この鉄道の各駅各章で紹介して行く物語である。

                            ~第一章~

 とある公園のベンチに座っている一人の青年。

 藤沢勉は果てしなく広がるこの大空を、ただじーっと見つめていた。

 彼は来年の春に、大学受験のために東京へ行く事を考えていた。勉はずっとそれを主張するが、家族はそれに大反対。

 「ただでさえ勉強ができないのに、どうしてそんなところへ行くの」

 「東京でお前がやっていけるなんて考えられない。それより後継ぎはどうしたんだ。お前にもいずれはこの店を継いで行かなくてはならないんだぞ。絶対にやめろ」

 「どうして東京なんて行くんだよ。兄貴。ここで十分だろ」

 「東京は怖いところなんだよ。お兄ちゃんがそんなところで一人で暮らすなんて危ないからやめたほうがいいわ」                       

 八百屋の長男はいろいろ考えているうちに、母、父、弟、妹の昨日の家族全員のお説教がステレオ感覚で聞こえてきた。勉はそれを手で振り払おうとするなり、ベンチに寝転んだ。

 「俺だって・・・、そんな軽い気持ちで考えてるわけねえじゃねえか。だいたい・・・」

 そんな風に愚痴をこぼしているうちに、いつの間にか十二時のサイレンがなった。と同時に勉の腹の虫が鳴いた。

 もちろん軽い気持ちで大学のことを考えているわけではない。

 あれは、高校の文化祭の昼休みのことだ。突然後ろから大学の先輩が話しかけてきた。勉もそちらを向いた。

 「藤沢。お前大学はどこにするつもりなんだよ」

 「えっ。それはちょっと、まだ・・・」

 はははと笑った後、高校の元先輩は答えた。「相変わらず何も考えてないんだな。やっぱり能天気さは変わってないな」

 「余計なお世話ですよ」しかし顔は笑っている。

 「いい大学があるんだ。俺が通ってるとこなんだけどさ」そういって先輩は大学のパンフレットを渡して言った。

 「相談ならいつでもいいぞ。メールでも言いし、電話でもいい。携帯は変わってないから心配するな」

 この言葉を思い出すと、家に向かっている足をくるりと変えて江ノ電の藤沢駅の方向へ足を向けた。

 藤沢駅に着くと切符を買い、足早にホームへ向かった。

 休日とはいえ、時間帯のせいか、人が少ない。朝早く出かけたのだろう。時計は十二時十六分を回ったところだった。


(次回へ続く)

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はじめまして。レゴどらです。このブログでは毎週小説を連載しております。よかったらご感想をコメントでお願いします。

ちなみに、じつは、もう一つブログを持っています。そちらも小説を連載しています。よかったらどうぞ。


さて、ここで最初に連載する小説のテーマは「江ノ電」です。福岡住在なのですが、旅行で乗ったことがあります。各章ごとに、各駅を中心にした話を書こうと思っております。まあ、明日までお待ちください。