今回は食材費カットについて。
店長が交代してすぐに出た指示が
「食材費の削減」だった。
「無駄を省け」とか
「廃棄処分を減らせ」とか
そんなまともな指示じゃあない。
「オーダーの肉の量を減らせ」
と言うものだった。
この指示が出た頃の俺は、
昼間や夕方にも出ていたのだが、
そんな指示には耐え切れず、
俺が肉を担当した時は、
きっちりとマニュアル通りに計っていた。
半ば強制されかけたので、
「夜中専門」に戻った。
不思議なもので、
この指示は夜中の方には通達がなかった。
夜中は「反店長派」が多いから、
迂闊なことは出来なかったんだろう。
と、思っていたら、店だけでなく、
会社全体にこの傾向は広がっていた。
グランドメニューの刷新により、
それまでは
「1人前100gが基本です」
と書かれていたのが全て省かれた。
基本の量を隠すことにより、
肉の量が減らし放題になったわけだ。
しかも全店舗規模でだ…。
これらの作為は主として大皿に
見られた傾向だったが、
1人前ずつの肉にも現れ始めた。
1人前ずつ真空パックでくるものも、
数袋まとめて開けておいて、
1人前の量を減らすことまで始めたのだ。

その結果…。
客足は見事に遠退いた。
この先、どうなっていくんだろう…。
ところでこの「焼き肉(ファミレス?)屋」は
実におかしなことをやっている。
店長は利益増加を狙って経費削減のために、
「人件費カット」「食材費カット」を打ち出した。
先ず、人件費カットだが、
それまでの営業時間を1時間短縮して、
閉店までの人件費を1日あたり4時間分削除した。
平均時給1000円としても、
1日4人分が浮くことになり月にして12万。
その他にも、各時間帯でも1人ないし2人のカット。
この辺はちょっと俺には数字は分からないので省略。
更におかしいのは、長時間勤務の場合。
今までは残業手当てというのか、
8時間オーバーした場合は25%支払われていたのが、
それを惜しんでダブルシフトなるものに代わったこと。
どういうことかと言うと、
一度退勤してから、約1時間の休憩後に出勤すると言うもの。
それをアルバイトが不満も言わずにしたがっているのがおかしい。
俺も以前は長時間勤務をしたこともあるが、
馬鹿らしいのでそれは断ることにした。

食材費カットについては後日。
どれくらい前になるかな?
異変が生じたのは店長が代わってからだ。
赴任早々にアルバイトから、
「仕事の出来ない店長」
といっせいに不満が出始めた。
それも深夜のメンバーほぼ全員。
俺はホールのことは分からないけど、
それでも可笑しいと思うことはある。
やたらと女子高生のバイトが増えたこと。
噂では店長の趣味とか??
このことにより、
他の多くが出勤を削られることになった。
ちょっと忙しくなると、所謂
「パンク」状態になるらしい。
それもそのはず。
仕事の出来ない店長と、
女子高生じゃあ店は切り回せない。

これを受けて、
一番に反発を示したのが
深夜のキッチンNo.2だ。
店長シカトの策に出た。
これに腹を立てた店長は、
彼の出勤を少しずつ減らしていく。
こうなるとNo.2も黙ってはいない。
強烈に抗議をしたのが利いたのか、
彼の出勤は一層減らされることになった。

続く



昼間の方のバイトが危うくなってきた。
経営者の期待通りの売上げが伸びず、
ついには出勤日カット、時間数カット
が全員に言い渡された。
それを承諾すると月に4万の減収。
これではやっていけない。
元々3人しかいないバイトのうち、
俺を含めて二人が辞めた。

その後暫くはパチスロなどで凌いだが、
所詮は博打、そう長くは続かない。

携帯で見つけたサイトで職探し。
たまたま見つけたところに即メール。
ほんの数分で電話があり、
直ぐにでも説明会に来て欲しいとのこと。
登録制のバイトだった。
これまでにも何度か登録したが、
実際に仕事を斡旋してくれるところは少なかった。

どこでもあるのが、経験者優先。
これじゃあ、新人はいつになっても仕事ができない。
勿論、年齢的なこともあるのだろう。

でもまあ、取り敢えずは登録だけしておいて、
後は様子を見ようと出かけていった。

説明会にいたのは俺だけだった。
若い奴から一通りの説明を聞くと、
奥のほうからちょっと偉そうな人が出て来て、
こっちの今後の都合を聞いてきた。

夜のバイトの方が改装工事中で、
休みだったので出来る日が続いた。
よほど人手がたりなかったのか、
その場で1週間先まで決められた。
「どうせ今回限りで終わりだろう」
と思ったが、ないよりはいいので、
やってみることにした。

その現場が終わってからも、
事務所からは頻繁にメールが届く。
こっちが夜のバイトをしていることも
伝えてあるので、条件にあった仕事をくれる。

そこの先輩に聞いた話では、
「偉そうな人」は個人個人の
都合を考えてくれているそうだ。
まあ、時々期待はずれなこともある。
が、他のどこよりもいい会社だと思っている。





退職してから暫くは何もする気にならなかった。
失業保険なし、退職金なし。
勿論預貯金なんてありゃあしない。
されど借金は減らず…。
そのような状況下にあってなお、
「何とかなるさ」のお気楽根性は治らない。
妻とは会話さえなくなり離婚騒動に発展。
子供達を手放したくなかった俺は、
ここでようやく仕事をしなければ…、
と一念発起する。
が、失業率が更新を続ける中、
再就職はおろかバイトの口もなかなかない。
そんな俺の胸中を知っているのか、
子供達が歌う。
「明日があるさ、明日がある…」と。(涙)
ようやくありついた仕事は、
お中元の検品と仕分け作業。
面接に行ったときは手元に1000円だけ。
かろうじてその夜一晩働いて1万円ゲット!
改めて働くことの厳しさを認識した。
しかし、不慣れな仕事に腰を痛め、
軌道に乗る前に玉砕された。
それでも、なんだかんだで生き抜いて、
夏も終わる頃には定職?
ともいえるバイトにありついた。
更には、深夜のバイトも始めて
かすかにだが希望の灯が見え始めた。
借金を返しつつ、ひたすら働く。
バイトだからこそできる掛け持ち。
半年の間に生活はすっかり落ち着いた。

何の権利も与えられず、
責任だけを押し付けられていた時に比べて、
バイトでいる身のなんと気楽なことか…。

就職することの無意味さを感じた1年だった。
ゲームセンターのような小銭を扱うところでは、
その影響は最後の最後にやってくると聞いた。
バブルの崩壊が騒がれだしてから数年後に、
ついにその影響が現れ始めた。
この頃には3店舗を展開していたが、
最後に出した店は2フロアの2階を閉鎖した。
ボーナスも遅れ始め、最後には給料も遅れた。
会社側に顧客確保のための案なども提出したが、
既に焦っている幹部連中は話も聞かず、
一方的な上意下達を徹底し始めた。
現場を知らず、数字だけで判断する会社は多い。
結果、客足はどんどん遠のいていった。

5年前に「辞めさせられる」ような形で会社を去ったが、
その2年後に店は2フロアから1フロアに縮小した。
俺が辞める時には多分方向は決まっていたのだろう。
恥部を見せないための足きりだったと解釈している。

現場の声の通らない会社は崩壊する。
入社して数年はやる気に満ちていたと思う。
仕事の内容はゲームセンターの店員だったが、
それでも社長の言葉を信じていた。
頑張って売り上げが伸びれば、
必ず給料に反映させる、社長はそう言った。
次第に売上げは伸び始め、
わずかだが給料も上がった。
支店を出すに至っては店長もかってでた。
それからも確実に売上げは伸びた。
「大入り」制度を提案し、採用もされた。
実際、面白いように売上げは伸びていった。
まあ、当時はバブルの時代だったし、
今考えれば売上げが伸びるのも当然だったのだろう。
しかし、いつの頃からか「大入り」は支給されなくなり、
給料も上がる気配を見せなくなった。
売上げが落ちているわけではない。
社長に聞いても「ちょっと待て」
と言うことが続くようになった。
次第に会社への不信感は募り始め、
当然のようにやる気は一気に失せていった。
当時、高校の時の同期生は皆就職していた。
大学に行けなかった俺も、
友達の話や、親の話に焦り始めていた。
そんな折、バイトしていた喫茶店の社長から、
「社員として手伝ってくれないか?」
と直々に誘われた。
まさに渡りに船とでも言うか、
俺はその話に飛びついた。
これがいけなかったんだ…。
俺の人生、やり直せるなら、
ここからやり直したい。