医師、地方定着へ新奨学金、「地域枠」医学生に、厚労省、9年現地勤務で返済免除。

2016/10/28  日本経済新聞 朝刊  


 厚生労働省は地域によって医師の数が偏らないよう新たな奨学金を作る。


地域医療への貢献を条件とする「地域枠」で入学した医学生は6年間借りた場合、9年以上卒業した地域で働けば修学資金を返さないでよくする。


従来の都道府県の制度とは別に全国共通の制度を作り、地方に医師を導く。全国の医師の経歴を自治体が参考にできるデータベースも整える。


 年末までにまとめる医師の偏在対策の一つとして同制度を盛り、2017年度から導入する。


 国の新たな修学資金制度は毎月一定額を医学生に貸し出す。最大3千人が対象。具体的な貸出額は各都道府県が独自に実施している修学資金制度をもとに決める。月10万~20万円とする都道府県が多く、国の制度もおおむね同水準になる見通しだ。


 利用した医学生は借りた期間の1・5倍以上の期間、医師が足りない地域の診療所などで働くと返済が免除になる。


 都道府県が実施する修学資金制度は返済免除になる期間や貸し出しの条件などが異なる。例えば、群馬県は同県内の病院で10年間働くことが返済免除の条件だ。期間の短い宮城県は6年間で免除になる。厚労省は各地の医師不足地域での勤務を義務付ける。全国で統一した基準を設け、より地域に定着する制度にしたい考えだ。


 医師不足解消を担う各都道府県の「地域医療支援センター」の育成カリキュラムと連携することを条件にする。


 地域枠は医学部の定員の一部を割り当てている。文部科学省の調べでは15年度時点で1541人。医学部定員数の17%を占める。地域枠が全国で広がり始めたのは06年度ころからだ。


 04年度に導入した臨床研修制度で、自ら研修先の病院が選べるようになった結果、大都市病院に集中した。医師不足に危機感を強めた地方で有効な対策として普及した。


 厚労省によると、地域枠で入学した医師は臨床研修終了後に出身大学と同じ都道府県にある医療機関で働く割合が68%。地域枠でない医師の51%よりは高いが、ペナルティーの金利込みでお金を返して他の地域で働く医師も少なくない。


 14年時点の医師数は31万人で10年前に比べ、15%増えた。ただ、都道府県により最大2倍の差がある。人口10万人あたりの医師数は全国平均が234人。都道府県別で最も多いのは京都で308人だ。一方、最も少ない埼玉は153人にとどまる。福島(189人)や岩手(192人)、青森(193人)など東北も少ない。


 厚労省は医師の偏在を解消するため、全国の医師の診療科や勤務地など経歴を登録したデータベースも作る。医師不足に悩む都道府県が医師確保策を検討する際の基礎データにする。



地域枠 大学の医学部が地元の医師確保に向け、入学者の定員の一部を割り当てている。返さないでいい修学資金を支給して、一定期間の地元の診療所などの勤務を卒業生に義務付けることが多い。全国で70の大学が導入している。