HLA-ハプロタイプバンクとiPS細胞
「日本人9割カバー iPSバンク可能・・・京大・中辻教授試算 」
で紹介した京都大学の中辻憲夫先生らのグループによる研究がCORRESPONDANCEとしてですが、Nature Biotechnologyにpublishされました。
Nature Biotechnology 26, 739-740 (2008)
HLA-haplotype banking and iPS cells
Norio Nakatsuji, Fumiaki Nakajima & Katsushi Tokunaga
http://www.nature.com/nbt/journal/v26/n7/full/nbt0708-739.html
まず、HLA-A, HLA-B, HLA-DRの3遺伝子座がホモ型の異なった組み合わせのiPS細胞株を30株作製すれば、82.2%の日本人にとって3遺伝子座がマッチングしたiPS細胞が見つかり、50株作製すれば、90.7%の日本人にとって3遺伝子座がマッチングしたiPS細胞が見つかることが分かりました。
次に、HLA-A, HLA-B, HLA-DRの3遺伝子座がホモ型のドナーが見つかる確率を調べたところ、骨髄バンクもしくは臍帯血バンクに登録されているドナーのうち、15000人のデータベースを調べれば、異なった30種類のHLAタイプのホモ型のドナーが発見でき、24000人のデータベースを調べれば、異なった50種類のHLAタイプのホモ型のドナーが発見できることが分かりました。
既存の細胞バンクを使うことができるのもiPS細胞バンクの大きな魅力ですね。
また、非常にまれなHLAタイプに関しても、ドナーが見つかれば、リスクはほとんどないのに対し、iPS細胞を作製しておくことでドナー自身にとっても大きなメリットが発生するので、比較的簡単にバンクに登録していただくことが可能と考えられます。
これに伴って、少し記事を改変した
「将来の再生医療-遺伝子治療との融合- 」と、
「単為発生ES細胞(pES細胞) 」の中盤で紹介したHLAタイプがホモ型のES細胞バンクの話を、合わせてご覧になられると理解が進むかもしれません。