ザ・プログレッシヴ デザイン ライトマン 最高責任者の山本です。
 
 前回、20数年前に開発を手掛けたホイール、ディスモンド社の【リーガマスター】が山本にとって特別な存在の旨の記事を書きましたが、その反響が想像以上に大きく、正直驚きました。

 この【リーガマスター】というホイール。 
 ナゼ 山本にとって特別な存在なのでしょう?

 それは「すごいから」
 では、ナゼ すごいのか? 開発当時に書いた論文を基に、かいつまんで(ほんの一部ですが)紹介させていただきます。

イメージ 1


 前回も書いたように【リーガマスター】はロシア製です。
 しかも、長く社会主義の超大国として独自の科学・技術的進化を遂げてきたソビエト連邦が崩壊した直後の軍事技術、いわば「ガラパゴス・テクノロジー」を使って開発・生産したのが、この【リーガマスター】なのです。

 では、何が「ガラパゴス」なのか? いろいろありますが、まずはそのダイナミックな鍛造方法があります。

 なんとビレット55Kgものアルミ素材を、1万トンプレスで4工程にわたり鍛造し、加工後(1780サイズで)6.8Kgの製品重量までそぎ落とします。つまり、素材の 85%以上を捨て去るという贅沢さ!
 コスト管理が利益に直結する、資本主義社会では考えられない製法です。
 また、ただ鍛造するだけではなく、リム部の鍛造メタルフローを最大限考慮した鍛造比率の高い加工であったことも忘れてはいけませんね。

イメージ 2

 次に、素材となるアルミ合金の特殊性です。前述しましたが、ロシアの「ガラパゴス・テクノロジー」は日本のJIS規格に当てはまるような素材ではなく、ロシア 独自のアルミ合金を使用していました。  

 これは、日本で最もポピュラーな鍛造素材 A6151-T6と比べても、各種強度で10%以上も高強度な素材であり、このような素材を1万トンプレスで鍛造し、精密加工で仕上げるのですから高性能な製品ができて当然ですね。

 また、ここまで簡単に書きましたが、実は開発着手から2年以上の時間をかけて製品化したという経緯もあり、何度もロシアに出向き、試作品のトライアンドエラーを繰り返したという事実もまた、現在の製品開発期間の常識から かけ離れた手法だったのです。

イメージ 3

 さらに【リーガマスター】のすごいところは、発売直後、当時 自動車レース界で全く無名だったにも関わらず、瞬く間にメジャーレーシングチームに採用されたことです。

 画像を見て、感慨深く思う方も多いのではないでしょうか?

イメージ 4

  この時、ベースの【リーガマスター】をさらに軽量化し、タイヤの空回りを防ぐリムへのナーリング加工等、特殊加工を施した競技用モデルが【EVO】モデルです。

 20年以上経った今 見ても本当にかっこいい、雰囲気のあるホイールだと思います。

イメージ 6


 そして、1996年 業界最高峰の「日刊 自動車新聞『用品大賞』を受賞します。

イメージ 5

 ところが、この後 本格化するバブル経済の崩壊によってモータースポーツ業界と自動車用品業界は急速に縮小することになり、キラ星のごとく現れた【リーガマスター】は、後継モデルを開発する事もなく、一代限りで生産を終了する事となったのです。

 残念ですね。

 ちなみに、販売元のディスモンド社もこの数年後に閉鎖される事となります。

 このような、特殊な開発経緯と性能、マーケットでの抜群の注目度、そして栄光の直後の悲運が20年以上たった現在において、ある意味レジェンドとなっているように感じています。



  【リーガマスター】が用品大賞を受賞の時とほぼ同じくし、開発責任者だった山本はディスモンド社を退社、現在のライトマン社を設立、現在に至るわけです。

 ライトマン社は今年で創立20年。

 山本がここまで会社を維持できたのは、ひとえに【リーガマスター】を開発した経験とノウハウのおかげです。

 若かりし頃、人生の前半、感受性の強い時期にこのようなエポックメイキングな製品の開発にかかわれたことが、一生の財産となったのだと実感し、そして感謝しています。

 チャンスがあれば、復刻版でも企画してみたいですね。

 ただ、当時と同じ製造方法は、現在では行えないと思いますが・・。