題名不明 #3 | ひっぴーな日記

ひっぴーな日記

よくわからないことを書いてます



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「ここの高校、桐生大付属高校は中高大の一貫というのは知ってるよな。まあとりあえず俺は桐生大の二年生なんだわ。で、ここから話がめんどくさくなるんだが、この高校には生徒会が二つある。この高校は大学の付属であるから大本の大学からの補助金がほとんど無いため、こんなものが作られた。一つは正規、高校の生徒会だ。でもう一つ、俺が所属しているほうは大学が自治している生徒会であって、金がある。別段分化してるわけではないじゃあないからな金があるかないかの違いだ。生徒会といっても金が必要になる。部活動の部費や、文化祭の経費、そういったものは付属高から出るわけじゃなく、大学の上のほうで決定されて配分されるわけだな。そして暇なときは高校に出向いて高校の生徒会から諸事務を受け継いで主に経理やらなんやらを大学に回すことをしている。結論から言えば、中高大一貫の金の流れも一貫になってるっていうことだ。ちなみに自分が着ている制服は校内私服厳禁なためであって仕方ないから」
 そこまで坂崎は一気に喋ってぼさぼさした髪を一回なでてタバコを吹かす。
「…………、さっきのやり取りでだいたいわかったけどさ、というかなんでこんな有名なことを佐久間さんはしらないのかね」
 そう坂崎は楓に尋ねるが、目の前のパイプ椅子に座ってる楓は微動だにしない。なんか目を丸くしている。坂崎は複雑な表情をしてから、
「それで、ゼミってわかるか? ……ま、いいや、その学科っつーのがあってその中で慣例のようにじゃんけんで選ばれてそれでくんの。んで一応俺が生徒会長になんのかな、わからんけど。生徒会長つっても形式だけど。俺の弟も一緒にやってんだけどさ、あ、大学一年な、いるけど二人だからね。そこで、」
 すこし長く語った坂崎はタバコは灰皿に押し付けた。楓は本当に動かない。
「現地の生徒が生徒会役員なってくると庶務だの経理だのめんどくさい仕事を本来あるべき生徒がやるから助かるんだけど、それじゃ生徒会が二つあることになる。なので俺らが推薦でもだせばその生徒をここにおけるわけだな」
 しばらく沈黙が続いた。楓は目を丸くしたまま動かず。それに我慢強く付き合う坂崎。夏らしい匂いがする風が部室内に一陣拭いて入ってきて二人の髪を揺らす。そこでぼーっとしていた坂崎は楓の髪は黒、というより地毛で赤にちかいなあ、なんて思っていた。
 楓は黙って頭の中を整理して、すこしだけ首を右に傾けたあと、あーと、とかえーととか言い出す。
「つまり、ここに大学出張の生徒会ありますよー、でも人いないよー、じゃぁ入らない? ってこと」
 坂崎が物凄く渋い顔になった。それに楓はあれ? と思い頬を掻きながら訂正しようとするが、
「…………随分はしょったな。まあー、だいたいそんなところだけど、」
「いいよ」
「は?」
 かなりあっさりした楓の返事に抜けた返事をしてしまった。すでにさっきまでのぶっこわれた顔筋ロボットの表情はなく、まるでなにかいいことでもあったかのような笑顔になっていた。
「なってもいいよー、でもさっきもいったけど飽き易いから辞めちゃうかもねっ!」
「でも、そうすると、えーと佐久間さん一人になるってことだぞ? いいの?」
 楓はんーっとすっかり暮れた空を見て、そして顔を戻す。
「大丈夫っ、なんとかなるなるっ! その時に考えればいいの」
 坂崎は心底疲れた顔をした。
 きっと楓は話しの半分も理解していないだろうから、またパンフレットを加え、説明しなければならないからだ。


「……で、結局掃除サボって写真取りに行ったと思ったらそんなこと引き受けたの。大丈夫なの? ていうかよくよく男に縁があるよねー」
「なんだよー、心配してくれちゃってる? ゆかりちゃん」
 深夜の学生寮、楓はパジャマ姿で机のパソコン向かって、ベッドに座っているルームメイトのゆか―円藤ゆかりに笑顔をむける。
 十八時の門限が過ぎると寮の鍵は閉まるので、過ぎてしまったときは楓はこっそりゆかりにウラの鍵を開けて置くように頼んでいるのだった。ついでに夕飯の寮食も。その代わりに翌日に学食で奢ると言う取引なのだが。これは横領、贈賄なのだろうか。
「なんとかなるなる。大学とかおもしろうそーじゃん。はいっ! 写真パソコンに入ったー」
「ま、いいけどね。生徒会ねぇ。そんなもんうちにあったとは。まあ、楓はそうやっていっつもなんでもなく帰ってくるから。拉致されても大丈夫かも」
 にやにや笑うするゆかりは楓に電気を消すように言って、二人がベッドに入ると同時に明かりを消した。