ミルコクロコップ/座頭市
8月15日 PRIDE.28
ミルコ・クロコップ×エメエリャーエンコ・アレキサンダー1R。ゴングと共に2人がコーナーを出る。2人共ゆっくりとリング中央へ。

静かな立ち上がりだ。時計回りに半周した所で、アレクサンダーがフェイントを織り交ぜる。一定の間合いを保ちつつ、ロープ際へ詰める。
最初の攻撃はミルコの左ストレートで始まった。流石はアレキサンダー。この左ストレートに対し、右のフックをかぶせる。両者とも腕が交差するがヒットはしない。アレキサンダーが詰め寄り、左ストレートを放つが、ミルコはしっかりと左ミドルを合わせる。この左ミドルがこの試合のオープニングヒットとなる。序盤、常に先手をとるのがアレキサンダーであったが、ミルコはことごとく、スウェー、ダッキングでスルリとかわしていく。流石はK-1ファイターと言った所か。距離の取り方も抜群だ。アレキサンダーの攻撃も巨体から繰り出せれる圧力、破壊力、共に、一流である。

ミルコは時計回りに周りながら、じっくりと機を伺う。トーンと間合いを越えてくるアレクサンダーに、ピッタリのタイミングで左ローを合わせる。アレキサンダーも、これでは懐に飛び込むことができない。何度も攻撃を仕掛けるが、ヒラリヒラリと、難なくかわされてしまう。やっとの思いでコーナーに押し込んだ。ミルコはフッと重心をずらし、アレキサンダーがバランスを崩した所で、右の膝をアレクサンダーの顎にたたき込む。アレキサンダーがグラついた所でミルコはまたも簡単にコーナーから脱出する。この間未だ、アレキサンダーの攻撃は当たっていない。
再度、リング中央へ。この辺りから、ミルコが見ていて解る程、アレキサンダーを分析しているのが解る。チラチラと目線を、胸、足元、顔面へと這わせる。「ターミネーター」のニックネームは伊達ではない。アレキサンダーもこの殺気を感じたかどうかは解らないが、右のガードを上げる。更に距離を縮めて、接近戦を目論むアレキサンダーに対し、あくまで、自分の距離を保つミルコ。
この辺りから、ミルコの「見えないハイキック」つまりは、フェイントを繰り出している。この気配を感じ、アレキサンダーも、ガードを確認しながら、セオリー通り、左、左へ廻る。距離を詰めようとするアレクサンダーに対し、絶妙のタイミングで左ミドルを合わせ、徹底的に自分の距離をキープする。

やっとの思いで、距離を詰めることに成功し、首相撲へと移行する。上背のあるアレキサンダーにとって、首相撲は分がいい。右の膝でミルコの左脇を狙うが、左肘で難なくブロックされる。突き放して距離を置こうとするミルコに対し、アレキサンダーのリーチを活かした左右のロングフックでコーナーへ詰め寄り、身体を密着させ、右の膝を出すが、ミルコもコレに対し、身体を沈ませ、ポイントをずらし、有効打にならず。
その後に打った、右のロングフックもそうだ。ポイントをずらすだけで、重心をまっすぐに保っている。もはや達人だ。コーナーを背にすると今度はダッキングでかわし、スルリと体位を入れ替え、左フック、ロングストレート、左アッパー、左フック、右ストレート、左ストレートの凄まじく、的確なコンビネーションを浴びせ、払い腰でアレクサンダーの巨体をマットに転がし、クロアチアサッカー仕込みのサッカーボールキックをアレキサンダーの顔面にぶち込む。しかし、深追いはせず。
ここで呼吸を整えながら、紳士のような振る舞いでスタンドを要求する。アレキサンダーもこれに応じて、再びスタンドに。
ミルコの視線が今まで以上に鋭い。その目はアレキサンダーを捕らえて放さない。今度はミルコからアレクサンダーに詰め寄る。それも自然なゆったりとした歩き方で。そこで両者足を止め、間合いを緊張させる。ミルコの鋭い左ミドルをアレキサンダーも完璧にブロックする。ミルコがリング中央で妙にスタンスの狭い体制で構える。

アレキサンダーの攻撃する気配に対し、先に反応してみせるミルコ。
ロングレンジから左で飛び込むが、空をかすめ、密着すると今度はアレキサンダーが膝を出す。これも左手でブロックすると、アレキサンダーのフックを「コンマ何ミリ」の世界でかわしていく。ミルコが「わざとか?」と思わせる様な感じでコーナーを背負うと、なんと自分の左手に視線を移す。この動作を見逃すわけもなくアレキサンダーが詰め寄ると、
「塩田剛三」バリの合気か?と思わせる動きでひらりと右の肩を合わせると、アレキサンダーはコーナーを抱いた。ミルコの目はもう、まるでハンター。「グッ」と重心を沈ませるフェイントで獲物の反応を冷静に見極めたかと思うと、殺気を一度ニュートラルに。それに合わせ、アレキサンダーも右のガードを下げる。この動作を見逃さず、ミルコの左足はアレキサンダーの右こめかみへと大きな弧を描きながら炸裂した。

アレキサンダーの巨体がゆっくりと倒れる。更に左のパウンド2発と右の鉄槌を3発、叩き込んだ所でレフリーが試合を止めた。流石はミルコ。仕留めることを怠らない。完全な勝利を収めた。

アレキサンダーにとって、完全な敗北となったことだろう。手も足も出なかった。付け加えるがアレキサンダーは決して格下などでは無い。特筆すべきはやはり、ミルコ・クロコップ。彼はまさに現代版「座頭市」だ。なぜなら彼は、見えないハイキックを打つし、何よりこの試合で目を閉じてハイキックを打ったのだから。

順を詳しく説明すると目線を「頭」~「胸」~「パチリ(目を閉じる)」~「左ハイ」へとつなげ勝利した。