最期にできること | ~なんちゃってお弁当と ピグライフ?~

~なんちゃってお弁当と ピグライフ?~

ID作っているのを忘れていました(^-^;)
ネタは……てきと~・手抜き料理ところによりピグ? チワワ好きですが
現在我が家にペットはいません。故チワワを思い出したら書くかもです。

可愛いちわわんに癒されつつ、10の約束後半は

まだちょっと書けないので……汗


介護関連の業務に携わっていた頃のことを書いてみます。


有料老人ホーム、常勤ナース1名のところに派遣された時の話です。


常勤Ns1人は、病院等での実務経験の無い方でした。

派遣依頼1名で何とか回している現状の建て直しで入りました。


驚く方もいるかもしれませんが、こういう施設では実務経験の無い人、

ブランクの長い人等がまだまだ多いのです。


それでも看取り加算や慢性疾患・胃ろうの必要なご利用者様も

受け入れています。

胃ろう:(腹部から直接胃にチューブをいれて栄養補給する処置)

ちょっと怖い話ですが、その事についてはまた後日談とします。


配属されてすぐ、ある問題を抱えた ご利用者様のケアに関わりました。


男性 105歳。

慢性腎不全と肺炎で入退院を繰り返しており、先日退院したばかりとのこと。

極度の難聴で、補聴器を使ってもなかなか意思疎通しにくく、筆談がメイン。

しかし、意識はしっかりしており 認知症状はほとんどありません。

ベッド上生活のみで全面介助、食欲もなく 床ずれもできていました。


ご家族はよく来訪され、とても心配なさっている為 スタッフに苦情が多いとの

情報でした。


まずはご家族様のお話を伺い、看取りは病院ではなく施設で行いたい事、

できる限り苦痛がなく、安楽に過ごしてほしい事、角部屋でしたので どうしても

スタッフの目が行き届きにくい事等を訴えられました。


スタッフの目が行き届きにくい事については、部屋の移動もお勧めしたのですが、

「あまり環境を変えたくない」 

というご意見でしたので、こちらから定時訪室をする、ということで

折り合いがつきました。


食事が食べられない、との事でしたので 食事介助をしてみました。

メニューは 腎機能を考えた減塩・ペースト食です。

お世辞にも『美味しい』とはいえない代物でした。

これを毎回完食していただくのは、自分だったら と思うと無理! でした。


年齢が年齢だけに、胃ろうを入れる事は ドクターもご家族も賛成できず、

最低限のカロリー点滴を行いつつ、何とか食事をしてもらえれば、との事です。


105歳ということを考えれば、美味しくないものを無理に食べたいでしょうか?

そしてここは 病院ではなく施設です。


ご本人様に、まず食べたいもの 好きなものを食べていただいてはどうでしょう、

と提案をしてみました。


お豆腐等はお好きとのことでしたので、まずは卵豆腐を購入して頂き、

誤飲に気をつけながら 介助してみました。


すると、卵豆腐だけはミニパック1個全部食べられ、笑顔も見られたのです。

ご家族もとても喜びました。

数日間、卵豆腐・絹ごし豆腐~具だけペーストにした茶碗蒸しと介助しましたが、

どれも喜んでいただけました。


ご家族様も、口うるさいどころか とても積極的にご協力くださり、遠方のお孫さん

(曾孫様?)などは ノートパソコンのビデオ会話から 声援くださりました。


相変わらず点滴は外せませんでしたが(IVH・中心静脈栄養も施設適応外の為)

ご自身も協力くださり、点滴の痛みに耐えてくださいました。


食事と言うよりは 好きなものだけ食べて頂く介助でしたし、ワーカーさんとしては

きちんと食事で栄養を取ってほしい、という意見もありましたが 配膳食はやはり

拒否なさっていました。


卵豆腐を食べられるならと、ペースト食に混ぜて介助もしたそうですが、やはり

卵豆腐は卵豆腐として味わうから美味しいし 食べられるのであって、混ぜご飯に

してしまえば、治療食と代わりありません。


栄養を摂らせようとするよりも、食べる事の楽しみを思い出してもらいたい、

という意図がうまく通じなくて、なんどか衝突はしました。


そして、お豆腐が問題なく食べられることから、大好物だったお刺身はどうか? と

ご家族から相談を受けました。


咀嚼も弱いし、固形物は誤飲の危険性があります。


そこで、マグロの中おちならどうでしょう? と提案してみました。

これならペースト状ですし、ワサビやおしょうゆの香りも楽しめます。

ご家族の方は 早速購入してきてくれ、まずはサビ抜き おしょうゆのみで介助。


「おいしい」 といってくれました。


次にワサビも少し足して介助。いつも閉眼がちだった方の眼が開き、

ほころぶように笑って口をあけてきます。

ご家族様も泣いて喜んでくれました。


半月ほど状態が落ち着いていたので、その後も色々話し合いながら

今後できる事や ご本人が喜んでくれるケアを考えます。


記録等を確認すると、もう1年以上入浴なさっていませんでしたが 

お風呂も大好きだったそうです。


これは是非、お風呂にも入っていただきたい と思いました。


ドクターやご家族ともよく相談し、比較的暖かい日に準備を整え

入浴を決行する事に決めました。

前日、

「明日はお風呂に入りましょうね」 とお話しすると、笑顔で頷いてくれます。


当日は ご家族様がこれなかったのですが、終始満面の笑みで

ジャグジー中は ご自分でタオルを絞り、頭に乗せて見せてくれました。

その様子はデジカメに撮り、後日ご家族様にお渡しすると、ご家族様も

とても喜んでくれました。


3ヶ月ほどたったある夜、急に熱を出し 夜間当直に来た派遣ナースの判断で

救急搬送入院となり、ご家族は危篤でも施設に戻したかったそうですが、

結局は病院で最期の時を迎えてしまいました。


お見舞いに伺う時間もとれず 悔やまれましたが、

後日ご家族様がいらしてくださり、入浴時の写真をプリントしたものも

お棺に入れた、病院で というのは残念だったけど、好きなものが食べられ、

気持ちのよいこともできた思い出が作れてよかった、と仰ってくださいました。


もっと もっと、してあげられる事は無かっただろうか、

あの時ああしてあげれば……と やはり後悔は残ります。


でも、美味しいものを口に入れた時や 入浴中の笑顔は、

今も鮮明に浮かんできます。


痛く苦しい思いで延命をするよりも、その人がその人らしく生きられること。


そのお手伝いが少しでもできれば、とてもやりがいを感じる事ができるでしょう。


傍にいて 手を握っているだけでも表情は和らぎます。

ホスピス等においても、今後は同じように看取りへの見直しが

行われつつあります。


医療者としてだけではなく、

人間が人間を看取ることとしてできることは何か、

高度なスキルや薬物投与だけではないと思うのです。


原点への回帰? なのかな、とも思います。


人としての尊厳死なんて難しい言葉ではなく、もっと身近に できる事はあると思います。