『徒然草』の「鼻のほどおこめきて言ふ」虚言の三タイプ。a | barsoのブログ

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 ものみな進化するのが自然界の法則なら、精神も進化しているはずだ。
 ところが、現代人は真実を語る「良心」の点では進化どころか、停滞したままか、むしろ退化しているように思える。

 というのも、いまから七百年ぐらい前にも現代と同じような風潮があるからだ。
 それが吉田兼好が見た三タイプの「虚言」。これがけっこう面白いのですよ。

 

 

『徒然草』第七十三段 (下段は現代語訳)

世に語り伝ふる事、まことはあいなきにや、多くは皆虚言 そらごと なり。
世の中に語り伝わる話は、真実を言うと面白くないからか、多くはみな嘘話である。
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かつあらはるゝをも顧みず、口に任せて言ひ散らすは、やがて、浮きたることと聞ゆ。
すぐ嘘話だと知られるのをかまわず、口から出まかせに語り散らすのは、やがて根拠のない嘘話だと分かる。

また、我もまことしからずは思ひながら、人の言ひしまゝに、鼻のほどおこめきて言ふは、その人の虚言にはあらず。
自分でも真実ではないと思いながら、ひとの語った通り、鼻の辺りにおどけた表情を浮かべて話すのは、その人の嘘話ではなく、受け売りである。

げにげにしく所々うちおぼめき、よく知らぬよしして、さりながら、つまづま合はせて語る虚言は、恐しき事なり。
本当っぽく、所々を曖昧にし、よく知らないふりをして、それでも、うまく辻褄を合わせて語る嘘話は、恐ろしいことである。

 


 一番目の嘘は、語るそばから嘘だと分かる、口から出まかせの嘘。
 童話の「狼少年」や「ピノキオ」でも、嘘をついたら必ず損をすることになっているが、実社会でもあまりに白々しい嘘はひとから相手にされなくなる。
 『ビッグモーター』の保険金不正請求事件では、2016年に週刊誌に暴露され、昨年は従業員が「工場長の指示があった」と内部告発したが、会社は損保各社に対して「指示はなかった」と書き換えて報告書を提出していた。
  このたびの会見も報道から日数が経っているので、創業社長が第三者のように、「工場長がやったんじゃないか?」と疑問形の推測的な回答をしたのはおかしく、口から出まかせに聞こえる。https://www.youtube.com/watch?v=J5dF8w7SJRE
 ただ、息子の副社長に実務・人事を任せ、会社も世代交代したのが悪かったのではないかと言う元幹部社員もいる。https://www.youtube.com/watch?v=iPS9-AIXu7A

 二番目は、嘘と分かっていながら「鼻のほどおこめきて」話すウケ狙いの嘘。
 「おこめきて」は、平安時代「烏滸めきて」と漢字をあてた。「烏滸」とは中国の後漢時代に使われていた言葉で、水辺を意味する「滸」と「烏(カラス)」を合わせて、「黄河や揚子江の港に集まる、カラスのように騒がしい人々」を表す。
 日本では、散楽、特に「物真似や滑稽な仕草を含んだ歌舞やそれを演じる人」を指すようになった。
 南北朝から室町時代に入ると、「気楽な、屈託のない、常軌を逸した、行儀の悪い、横柄な」など、より道化的な意味を強め、これに対して単に愚鈍な者を「バカ(馬鹿)」と称するようになった。江戸時代になると、「烏滸」という言葉は用いられなくなり、「馬鹿」という言葉が広く用いられるようになった。
 現代では高田純次が若い女性に、「キミ、松嶋奈々子に似てるって言われない? つめの形が」といったような冗談話が近い。彼は二枚目でお洒落なのに、鼻のあたりを「おこめきて」道化っぽく語り、自分の滑稽話がウケるのを面白がっている。

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  この一番目と二番目の嘘はすぐ嘘だと分かるので、そう恐ろしくはない。


 問題は三番目の嘘で、これは嘘なのに真実っぽく語るので「恐ろしい」。  三番目の嘘は、現代では誰が得意だろうか。
 それは、一部のことを全体のように言い、疑惑を煽り、証拠を捏造し、影響力が大きくて「恐ろしい」となれば「マスコミ」が筆頭だろう。  おおむね、宗教は教祖で決まり、会社は社長で決まり、国家は首相で決まるが、国家の場合は首相から一般大衆にまで大きな影響を及ぼしている「大手メディア」が、日本を悪くしている内部の元凶ではないか(もっと強い外部の元凶は内政指示もしてくる米国大統領)。 

 政府、閣僚、官僚がいつも弱腰で日本の益にならないことをしているのは「事なかれ主義」もあるが、メディアに叩かれるのを恐れているからで、選挙の票しか関心がない、信念欠如の政治家が多いのが情けない限り。

 また、「多様性」とか「平等」という美しい言葉を標榜していても、やっていることは日本を貶め、反日隣国を喜ばせることばかり。それでいて、良心が痛まないどころか、むしろ得意になっている勢力も、その「元凶」の一部だろう。
 それゆえ、日ごろネット情報を見ず、『朝日新聞』や『毎日新聞』、また『サンデーモーニング』や『報道特集』を見ている人たちは、 " 日本下げ "のプロパガンダに洗脳され、「日本は悪い。欧米に劣る」と思うようになっている。

 バーソごとき政経の素人が言うのも烏滸おこがましいが、昨今の虚言きょげんを兼好風に言えば「恐ろしき事」となり、ギャル風に言えば「まじおこ」となるのである。






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※「鼻のほどおめきて言ふ」を「鼻のほどおめきて言ふ」と、「」に濁点を打つ読み方もあり、その場合は、鼻をぴくぴくさせて得意そうに嘘を語るという意味になります。

※画像は「steadydiffusionweb.com」を利用させていただきました。
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