中平(絶品!)

11月のある日、仕事で海岸を歩いた後、近くの小さな漁港にたどり着いた。
ここは、先の記事にも夜景を載せた池の浦漁港である。
しばらく漁港内を散策し、周りを見渡すと
『中平』という一軒の飯屋らしきものを発見した。
同僚とともに店の中に入って行くと、いきなり予約の方ですかと聞かれた。
いえ、違いますと答えると、うちはイセエビの専門店ですが
よろしいですかと返された。
港内散策中、湾内に生簀らしきものが浮かんでいて、おばあさんがそこから何匹か
タモで掬い、釣り人に渡していたのを思い出した。
養殖イセエビを現地でリーズナブルに食べさせてくれる店なんだろうと、
『はい、結構です』と答えて、そのまま奥の個室に通された。
席についてしばらくして、メニューのないことに気づいたが、
すぐに中居さんがやってきて、いきなり、
『コース料理となりますのでよろしくお願いします』と言われ、
間髪入れずに一尾まるごとの刺身が机の上に置かれた。
実はわたし、イセエビの刺身は余り好きではなかった。
あの甘い味が磯の風味や歯ごたえと相反して、どうしても好きになれなかった。
が、しかし!この刺身を一口食べて、この考えが間違いであることを思い知った。
う、うますぎる
なんじゃこりゃぁ(松田優作風)
や、ヤバい。イセエビの刺身ってこんなにうまいんや!
伊勢で食べたイセエビとは別格の上品な味

こりゃみんなイセエビ、イセエビって言うわ~
次に、刺身に添えてあったミソを口に入れる。醤油は付けない。
そしてまた感動。もう詳しくは書かないが、高級ホテルで出される
ズワイガニのスープをさらに濃厚にしたような味で、
なにも手を加えていないのにそれを凌駕している。
と、ここで、本当にこれ養殖のイセエビなのだろうかと疑問と
ともに不安が走る(財布にいくら入ってたっけ・・・)。
刺身をゆっくりと堪能しながら食べていると、
今度は鍋が運び込まれた。

またまた一尾まるごとである。先ほどの感動があったので、
もう驚かないぞと思っていたが、またまたやられた。
想定外の旨さ
出汁にはしお味が少し付けられていたが、これは素材の良さを最大限に引き出す最良の方法であろう。そして思った、
カニ鍋はもういらない。だってイセエビのほうが何十倍もうまいんだもん。
これは本当にカルチャーショック。高知という土地の奥の深さを感じた
瞬間であった。
そうこうしていると今度は野菜が山盛りのお皿が運ばれてきた。

ポン酢などのタレはない。イセエビの出汁だけで野菜を味わえということか。
殻を取り出し、野菜を入れて暫く待つ。そして、
イセエビの出汁をたっぷりと吸い込んだ野菜を頬張る。
もはや不味いはずがないことがわかっていたが、それでも感動!
また、取り出したイセエビの殻を見ると凸凹した複雑な構造をしているのに
左右が美しいほどの対称性を保っている。
よっぽどいい環境で大切に育てられたのだろう。
ん?だんだんと飯が欲しくなってきたぞ。
と思っていたら、絶妙のタイミングで中居さんが来たので、
『あ、あ、あのっ、ご飯とかは・・・』と言いかけたら、
次は雑炊ですよと言いながら鍋を回収していった。
そしてしばらく待つとまた鍋が登場。

出汁の味は先の野菜で十分味わっているので、
雑炊の味に関してはほぼ詰んでいた。
安心して雑炊を味わう。こんなに出汁の効いた雑炊は初めて。
おそらく少し塩を足した程度だろうが、タイやカニ、
その他の魚介類が寄ってたかっても、簡単には勝てないだろう。
それほどまでにこの料理の完成度は高かった。
で、少し疑問に感じていたことを中居さんに聞いた。
『このエビって養殖なんですか?』
その瞬間、中居さんの首がフクロミミズクのように回転し、
『うちの店では養殖なんか出さんき!
近場の磯で獲れたエビやき!本物やき!』
と説教されてしまった。そして最後にフッと笑われた。
おそらく最初は味を馬鹿にされたと思ったのだろう、そして最後に
この客は味のわからんかわいそうなヤツだと笑ったのだろう。
そらそうだよなと納得し、窓から景色を眺めながら
食後の余韻に浸っていた。
そしてドキドキの会計!
『7000円です』
おお、安い!この味で2人7000円なら問題なし。
『あっ、お一人様7000円です』
な、7千円だとぉ



ちょ、おまっ、い、いやっ、たしかにうまかった、うまかったけど、
手持ちはあるんか、いやないで。でも同僚がおったわ。たすかったぁ~
・・・ということで同僚に少し借りてなんとか済ませることができた。
7千円は大金だったけど、イセエビの認識を180°変えてくれた
料理に感謝したいし、よくよく考えるとかなりリーズナブル。
そして会計を済ませる頃には多くの客が集まっていた。
帰路につき、相方に顛末を話すと、
『そんなもん、メニューがない時点でわかるやろ!』
『っていうか行ったことあるし、でも自分だけ食べてズルいわ!』
『まあ、小遣いが無くなるだけやしな!』
と、呆れとも怒りともジェラシーとも取れる、罵雑言が次々と出てきた。
高知ネイティブの相方は幼い頃に家族で時々行ってたらしく、
後日お義父さんからも、
『あそこは高かったやろう、でも美味かったろう?』
『昔から7千円ぞ』と言われた。高知の超有名店であることがわかり、
市内中心部で食べると倍以上の料金であることも知った。
ちなみに同僚も、奥さんに伝えたところ、
『何してんのよ!』(青木さやか風)と怒られ、
『今度私も連れていきなさいよ』と、同じようなことを言われたそうな。
でも、この店は超お勧め

本物のイセエビが食べれる。
#パーマ屋のおじさん曰く、池の浦漁協は命をかけて地元のイセエビを護っているらしく、
#密猟者には容赦無いとのこと(○○されるよと言われた)。
#また、桂浜近くでは命の危険を冒せば天然のイセエビが捕れるそうな。
#それを考えると7千円は安いよね。
#また、水産関係者に聞くとイセエビは幼生の生態がよくわかっていないので、
#養殖できないそうな。なので、イセエビがよく育つよう海岸に手を入れながら、
#漁獲制限など環境保全し、継続してイセエビが捕れるようにしてるんだとか。
#漁港内の生簀は近場で獲ったイセエビを出荷前の数日間だけに入れておくとのこと。
#生簀のエビを受け取った釣り客が渡していたのが千円だと思い込んでいたが、
#今ではアレは万札であったと断言できる。
#絶対にまた行くぞ!