何時もの寿司屋だ、都心の有名店は健在だか下町の昔からの個人店は衰退していく中頑張ていてくれる。

ここは花街向島の端っこ、私が来始めたころは常連でにぎわっていたのですがここの所はめっきりだ。

 

以前の画像ですがかつては大間のこんなものを仕入れたり。

 

 

更にとんでもない物を仕入れてきたり。

 

 

でも今だって頑張って生マグロの良い物を引いてきてくれいます。

 

 

これを見てつやが無く鮮度が低いと思った方、それは違う、美味しくなった期を見て出すのだ。
そしてここは今も昔ながらの江戸前寿司を出してくれる、熟成した生のネタもですが一仕事したネタも出してきます。

 

 

昨日出たもの、左から煮イカ、煮ハマ、煮アナゴだ。

冷蔵技術がまだ無かったころの工夫がこれらの煮物ネタです。

この下ごしらえも面倒で材料代も高価(特にハマグリは煮てもこのサイズなのでかなりの大玉です)なものを手をかけて作る江戸前ネタは理に合わないと今は作っているところすら少なくなっている。

こんなものを下町の小さな寿司屋で堪能出るのはもう私の世代位なのだろう、寂しい限りですね。

 

親父さんと話していると今の事情が危機的なのが判る、寿司屋も組合組織が有りこちらが所属しているのは東向島地区。

面積は墨田区の1/10位なのだが昔は70店ほどの店舗が加盟していたという。

思えば私の子供の頃は町内1分も歩けば寿司屋が有った、それもどこも繁盛していた。

家庭と寿司屋がとっても近かったんですね。

100メーター四方に2~3軒の寿司屋や蕎麦屋が有ったんですよ、観光地じゃなく住宅地にです、嘘じゃないですよ。

それが激減しています、寂しいですがし方無しかなぁ。

 

昔の下町の人々はお金もらうとパッと使うんですね、後先考えずに今現在に使っていた。

なので給料はいれば美味しいものとか飲みに行ったりとかね。

今の方たちは35年のローンとかで、近隣にマンション出来て住民が増えても街の寿司屋には来ない、グルグル回るので満足している。

 

 

もう少しすると鯵、梅雨になれば鰯だ。

そしてシンコの旬を迎えます、江戸前寿司の華といえば断然この新子だろう。

 

 

左がコハダ、これだって普通の寿司から比べると小ぶりなのだがシンコの大きさはどうだ。

1Kで120匹くらいはいる、これをちまちまと裁き塩で締めて酢で洗う。

 

 

こんな気の遠くなるような作業の末出てくるのがシンコの握りだ。

なので採算は殆ど取れないという。

 

 

シンコは意地で握るなんて寿司屋は言う。

出てくるのが待ち遠しいです。

 

 

そしてエビだって違う。

江戸前で使うエビは才巻海老というクルマエビの若いやつ。

皆さんが良く見るエビの握りとはちょっと違う形をしているでしょう。

それは頭の方だ。

 

 

先がとがってて頭の殻の中に入っている身も付いている。

これ注意しながらそーっと引き出さないとこうならない、かなり面倒なのでふつうはみんな切っちゃうんですね。

そしてネタとシャリの間にはそぼろがちょこっと仕込まれている。

すこし甘いそぼろがエビの旨みをよりふくよかにしてくれる、これらが江戸前の一手間なんですよ。

 

 

こちらの常連も次々と世を去り今では私が最年少です。

昔は行けば誰かがいてワイワイと楽しかったんですがね。

親父さんももうすぐ79だ、3代目には厳しく今だツケ場には立たせていない。

でももうすぐ世代交代ですね、その際まで親父さんの握る寿司を楽しんでいく事にしましょう。