アーチェリーの事故について | 私は鶏になりたい

アーチェリーの事故について

同じ弓引きとして、心すべき事故がおきましたので速報します。

NHKオンライン5月20日12時36分付け記事 引用
アーチェリーの矢 高校生の肩に

19日、長野県上田市のアーチェリー場で男性が放った矢が女子高校生の肩に刺さってけがをし、警察が事故の状況を調べています。男性と女子生徒は同じアーチェリークラブに所属し、19日はおよそ20人が練習していました。19日午後3時20分ごろ、長野県上田市のアーチェリー場で、47歳の公務員の男性が放ったアーチェリーの矢が17歳の女子高校生の右肩に刺さりました。女子生徒は病院に運ばれ、手当てを受けましたが、けがの程度は軽いということです。男性と女子生徒は同じアーチェリークラブに所属し、19日はおよそ20人が練習していましたが、警察によりますと、女子生徒が自分が放った矢を取りに行き、戻ろうとしたところ、男性の矢が刺さったということです。このアーチェリー場には、的を並べた6つの小屋があり、男性は女子生徒の隣の小屋の的に向かって練習していたということですが、放った矢を取りに行く際の具体的な取り決めはなく、お互いに安全確認をしながら、それぞれの判断で取りに行っていたということです。警察は男性から話を聞くなどして事故の状況を調べています。アーチェリー場がある上田市自然運動公園管理事務所の倉島殿明所長は「事故が起きた原因を早急に究明し、再発防止に向けて改善策を考えていく」と話しています。
赤字はひよこによる、以下同じ)
私の出入りする弓道部の場合、的の前や矢道(矢が飛んでいく空間の敷地)に出る時には、射場の人に声をかけ、射場からの了解の合図を確認してから出ます。
場内が広く的が多い、または射場が隣接してある場合、まず場内から声をかけたり「第○射場」と頭につけたり、確認を2往復にしたり念を入れています。

的の前に出る人も出来るだけ早く作業して、矢が飛んでくる可能性のある場所にいる時間を極力短くします。

このアーチェリー場は射距離をいろいろ設けていろんな練習ができるようですので、自分以外の小屋への注意がなかったものと思いますが、私だったら的を見て目に入る範囲に人が居たら動作を始めませんし、人ならずとも猫や鳥がうろうろしていても集中できないので、引きません。
小屋の陰から人が出てくる可能性があったら、確認なしなんて恐ろしくて。

信濃毎日新聞5月20日付け記事 引用
肩に矢 女子高生けが 上田 アーチェリー練習中

 19日午後3時20分ごろ、上田市下之郷の市自然運動公園上田アーチェリー場で、練習中に放たれた矢が場内にいた上田千曲高校(上田市)3年の女子生徒(17)の右肩付近に刺さった。生徒はドクターヘリで佐久市内の病院に運ばれ、矢は背中側に貫通していたものの、上田署などによると軽傷とみられる。同署は過失傷害の疑いもあるとみて、矢を放った長野市内の公務員男性(47)から事情を聴いている。

 2人は上田アーチェリークラブの会員で、事故当時は同クラブの計20人ほどが練習していた。 同署などによると、屋外の同アーチェリー場は、それぞれ複数の的を掲げた六つの小屋が並んでいる。公務員男性は向かって右から2番目の小屋(距離70メートル)を目がけて矢を放ったが左にそれ、右から4番目の小屋(同50メートル)の方へ矢を取りに行って戻ろうとしていた女子生徒に刺さった。

 男性は車いすに座った状態で練習しており、刺さった矢は直径4・5ミリ、長さ70センチほど。男性は取材に「放つ前に、矢が(弓の部分に)しっかり固定されていなかったことが原因だと思う」と話した。
最後の男性の言葉はどんな質問だったのか判りませんが、もしそれが事故の原因だと考えるなら、この男性とアーチェリークラブは直ちに弓を折って活動を止めるべきです。
小屋二つ左に、記事の写真からみて5度くらい左に逸れたようです。それ自体がこの男性の技量によるものか道具の不備によるものかなんてのは問題ではなく、矢を取りに行くとき決まった打ち合わせが無いこと、そして人が視界にあるのに弓を引いてしまうような練習態度が原因です。

テレビ朝日5月20日11:52付け記事 によりますと、矢は長さ約70cm、直径4~5mmのカーボン製とのこと。(弓道のアルミ製は長さ90~105cm、直径7.5~7.9mmといったところ)。
アーチェリーには狩猟用のもっと太く重い矢もありますが、日本では鳥獣を弓矢で獲ってはいけません(鳥獣保護法に関する環境省令に規定)。

なお報道写真を見て感じることは、アーチェリーは的の高さが高いこと。人の体幹や頭を意識しているようです。
弓道の近的は中心が手前の地面から27cmの高さです。これは足を狙う高さです。

源平の合戦などの頃は弓の名手が強弓で武将の兜を射中てたなんて戦記物に言いますが、四人張の弓に見合う矢は当然太く重く飛距離は出ませんし、そんな弓を続けて何十射と引けません。
その時代以降の雑兵の持つ矢は一撃必殺より、一度に矢数を射て敵兵の足を止めるいわば補助具だったと思います。

戦で本当に殺さなければならないのは武将だけであって、雑兵は主に農兵なので全滅させてしまうと勝ってその領地を取ったとして面積は獲得しても収穫が上がらないので却って困ることになります。だから大将を狙う矢の矢じりはダメージを大きく与える形に、雑兵を狙う矢は抜けやすくと使い分けるのだそうです。雑兵はその日だけ歩けなくして戦闘能力をそげばよいのですから。
だから貫通創が大きく、当たったら死ぬか一生の大怪我になってしまう鉄砲は恐ろしい武器だったと思います。

また横道に逸れてしまいました。
今回の矢は競技用なので細い矢のようで怪我も軽かったようです(無論当たり所によります)。カーボン矢のシャフトは折れると繊維が棘の集合の様になって、人に刺さると大変なことになりますが今回は折れもしなかったようです。しかし矢を貫通されたりそれを見た人のショックは計り知れません。どうぞ早い回復を。そして絶対事故を繰り返さない対策を。

(2011年5月22日追記)
5月21日付信濃毎日新聞記事 によりますと、
『 市教委体育課によると、同課はアーチェリー場での安全面に関する規定を設けていなかった。同クラブは、独自に「前方に人がいる時に発射しない」といった 規定を明文化していたと説明している。ただ、同クラブによると、上級者は別の的の前方に人がいても矢を放つケースがあった。女子生徒に刺さった矢を放った 長野市の公務員男性(47)も上級者だったという。』
基本や常識を逸脱して何が上級者だ!