2020年に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患した成人の4人に1人以上が、罹患後6~8カ月経っても完全には回復していないことが、新たな研究で明らかにされた。チューリッヒ大学(スイス)のMilo Puhan氏らによるこの研究結果は、「PLOS ONE」に7月12日掲載された。

 COVID-19が身体面および精神面に長期的な問題を引き起こすことを示すエビデンスが相次いで報告されている。このような「ロングCOVID」と呼ばれる後遺症の症例は、医療システムにおいて次第に大きな問題となりつつある。

 Puhan氏らは今回、COVID-19の罹患者を対象に、感染から6~8カ月が経過した時点での、患者の回復状態や、身体的後遺症(倦怠感、息切れ)および精神的後遺症(抑うつ)の有無について調べた。対象者は、スイスのチューリッヒで2020年2月27日から8月5日の間にPCR検査で新型コロナウイルス陽性が判明した18歳以上の成人431人(平均年齢47歳、女性50%)で、研究登録時はCOVID-19の診断から中央値で7.2カ月が経過していた。対象者は研究登録後に、年齢や性別などの人口統計学的属性、併存疾患や新型コロナウイルス感染にまつわる詳細、現在の健康状態などに関するオンライン調査に回答した。

 調査結果からは、対象者の89%(385人)はCOVID-19の診断時に症状があり、19%(81人)は診断時に入院していたことが明らかになった。診断から6~8カ月時点で、26%(111人)が「完全に回復していない」と回答した。回復が完全ではないことを報告した人の割合は、女性の方が男性より、また、診断時に入院した患者の方が入院しなかった患者よりも高かった。感染当初から症状のあった385人を対象にした多変量解析では、重症~非常に重症な急性期の症状と併存疾患の存在が、完全ではない回復と関連することが判明した。

 後遺症としては、対象者の55%(233人)に倦怠感、25%(96人)に息切れ、26%(111人)に抑うつの症状が認められた。また、40%(170人)の患者が、長引くCOVID-19の症状を理由に、一般医の診察を1回以上受けたと回答した。さらに、診断時に入院した患者の10%(8/81人)は再入院していた。多変量解析では、回復が完全でないこと、倦怠感や息切れ、抑うつ症状と、医療機関の受診との間に関連が認められた。

 こうした結果を受けてPuhan氏は、「この研究結果は、COVID-19の後遺症に苦しめられている患者のニーズに合わせて、医療リソースの配分を計画し、サービスを提供する必要があることを明確に示すものだ」と主張している。