脊髄から末梢への運動指令は脊髄前角に存在する2つのニューロンを介して筋肉を組織する筋線維に届けられています。今日はこの辺を勉強しましょう。

 

体内にはおよそ700もの筋肉があり、それらの組み合わせで手足や体幹のさまざまな動きが実行されています。この筋肉に大脳皮質からの指令を直接伝えているのが、脊髄から伸びる運動ニューロンです。脳・脊髄での上位運動ニューロンに対し、下位運動ニューロンとも呼ばれています。

 

運動ニューロンは、目標の筋肉にシナプスを接して、筋肉細胞に興奮信号を送って収縮させます。

 

ただし、筋肉の動きは、運動ニューロンだけが支配しているのではありません。興奮性および抑制性の脊髄内介在ニューロンが、運動ニューロンと協同して働いています。

 

また、運動には、大脳皮質から下行する経路とは別に、大脳皮質からの指令を受けない脊髄固有のニューロンなども関与します。

 

 

下位運動ニューロンは、筋肉の収縮をコントロールして、関節などを屈曲・伸展させる役割をもちます。

 

運動ニューロンには大型のα運動ニューロンと中~小型のγ運動ニューロンの2種類があります。このうち中心的な役割を果たしているのはα運動ニューロンです。

 

骨の周囲にあって体を動かしている骨格筋には、神経筋接合部という特殊なシナプスがあり、α運動ニューロン末端はここに接合すると、アセチルコリンを放出します。筋には、収縮する屈筋と伸展する伸筋があり、屈筋にアセチルコリンが作用すると活動電位が発生して収縮し、関節などの骨格筋が屈曲します。伸筋は関節の反対側にあり、屈筋が収縮すると伸展(弛緩)するという拮抗性をもちます。

 

 

骨格筋深部には、筋紡錐(きんぼうすい)と呼ばれる特殊な組織が存在します。紡錘形の線維状カプセルに、特殊な骨格筋線維が内在しています。

 

筋紡錘内部の錘内筋線維中央部には、Ⅰa群線維と呼ばれる感覚線維が巻き付いています。この錘内筋線維を支配しているのがγ運動ニューロンです。γ運動ニューロンは、α運動ニューロンの作用を調整し、筋収縮の正確性を高める働きをしています。

 

まずα運動ニューロンが筋に興奮伝導を送り、筋紡錘の外側にある錘外筋線維が収縮します。Ⅰa群線維は、自らが巻き付いている錘内筋線維の長さの情報を中枢に送っていますが、錘外筋線維が収縮すると、錘内筋線維が短くなってたるみ、長さ情報を中枢に送らなくなります。このときγ運動ニューロンも一緒に信号を送ると筋紡錘の両端が収縮し、中枢への情報伝達機能が起こります。

 

すなわち、α運動ニューロンとγ運動ニューロンの相反する作用がバランスのとれた運動を可能にしています。