フジテレビで割りと遅い時間に4夜連続にて放送されたスペシャルドラマを観た。かなり我慢して。原作は佐藤多佳子氏の「一瞬の風になれ」で3巻構成の長編小説。「本屋大賞」やらを受賞した、読んでみたら凄かったという知られざる名作?だったらしい。注目されて以降はバカ売れ。
陸上を扱った作品としては、その昔「小山ゆう氏」が描いた「スプリンター」を思い出した。これは漫画だが、走る主人公の感じる風、鼓動、筋肉の躍動、もうだめだと思うところからもうひと粘りする時のその気力・精神力、更にはコンマ何秒届かない時の絶望と上回った時の達成感を思い出す。「スプリンター」は短距離を走る一人の青年が主人公だったと記憶している。
この「一瞬の」は(4継と呼ばれる)リレーを中心に扱われているから仲間との信頼や友情が描かれており、違ったテイスト。
原作はもっといいものなんだろうなと思う。ドラマが放送される前に、脚本が原作とかけ離れているとして原作者が嘆いたそうだが、それを「ミスキャストだと受けとられて」あるいは「そう勘違いされて」やや揉めて、放送が危ぶまれたらしい。関係者がとりなしてどうやら事なきを得たわけだが、そういう風に話が流れるのも「無理もなかろうな」という出来だった。視聴者の誰が見ても「ひどいキャストだ」と感じた可能性があるから。だから、製作者サイドからして「これはちょっとやばいなぁ」なんて気にしてたんじゃなかろうか?
だって、出てくるのがおしなべてジャニーズ系の「これから大きく育てますよ的どんどん経験積ませなきゃ新人」ぞろぞろだから、はっきり言ってがっくしである。もう完全に演技の場数を踏ませる目的で作られた演習の場。
高校生を扱ってるから若いのは当たり前だが、なんでどいつもこいつもイケメン爽やか揃いなんだ?これだけのメンツなら、少なくとも運動場じゃなくて何か別のとこに行くよ。高校生の陸上部員なら、少なくとも最低限全員坊主だ。それがタイムにも反映するんだから当然だ。リアル感ゼロ。おかっぱ髪の根岸やお調子者の桃内があまりにも取ってつけたような三枚目でしらじらしいったらありゃしない。山下真司と内村光良はそこそこはまってたけど、その他のOBやライバルもみ~んなイケメンだらけ。感情移入できん。作品の為にトレーナーを呼んで「走り姿」を練習したんだろうか?あの走り方を見れば、それも絶対にないと思う。何を作るにしても、クオリティの低いものを妥協して出すのなら早晩客は離れる。
走る事に魅せられて、懸命に目標を追って、それを仲間同士の信頼を高めながら育てて行く展開なら、主人公以外はもちっと平凡なキャストのがよかったと思う。彼らのセリフにはなかなかいい言葉があったと思うんだが、それまで安っぽくなっちまった。
谷村美月はきっちり自分のキャラ作ってたけど、福田沙紀はかなり影響受けて学芸会かサークルっぽくなってたなと落胆した。
原作者かわいそう。番組の最後にオリジナルってうたってたけど、みそは付いたね、確実に。佐藤多佳子氏も「いい経験になった」と前向きに捉えるしかないだろうね。