子供二人を含む5人の親子が来店。大人は父と母と、そのどちらかの母と思われる、子供たちからすると祖母にあたる方。子供は中学校のなかば(2年?)あたりと小学校高学年のどちらも女の子。

カルビセットをご注文。父親は生ビールで、それ以外はお冷やとお茶。あとはご飯がふたつと、ピビンパがふたつ。家族連れの、いわば典型的なご注文パターン。当然肉の追加がちょこちょこ来て、思い出したようにキムチなんかも出る。何回目かの追加で「とんそく焼き」を僕がテーブルに運び、それは焼き網の上に置かなきゃだから「スペースを空けて頂けますか?」とやってた。

そこで父親が「上カルビをひとつ」と追加。

するとすかさず中学校なかばの娘が「カルビだよ!ただのカルビ!」と訂正する。長女は僕にではなく、父親に訂正を促したから、父親の顔を見るも、彼はすぐには訂正せず、やや間が出来た。

「・・・父親の威厳であくまでも高い方(900円と1300円の違いがある)を選択するのか?」と僕は考える。

すると、長女は再び「カ・ル・ビ!」とまさに父親に噛み付きそうな勢いで、しかし声を押し殺しながら訴える。

で・・・結果はというと。

「あ・・・カルビ。カルビのほう」とそれに従う父。

「上でなくて、普通のほうですね?」とやんわり確認。


別にいいんだけど、「娘に怒られてやんの」とおかしくなった。

ただ、父親がすぐには訂正しなかったあたりが威厳を保ちたかったのか、なんなのか?と感じた。


会計の時に僕は合点がいった。

お金を払ったのはおばあちゃんだったのだ。

息子にしてみれば、「おかあさんが(会計を)持つんだから上カルビの1人前くらいはいいだろう」と思ったに違いない。「こういうときに食っとかなきゃ」だ。

が、娘の方はがっちりしている。会計を親が持とうが祖母が持とうが、家族の財布から出るのは大局的には同じこと。外食で焼肉を選択した時点で充分な贅沢。「一定のラインで締めないと」という意識がきっと働いたのだと思う。

思えば、そばにいる時に僕の耳元に囁くような注文の仕方だったし、「どさくさに紛れていいのを取っちゃえ!」ってやつだったかもしれない。それを娘は聞き逃さなかったのだ。そうして「ただのカルビ」に訂正したのだった。

家族の中で男は父親一人。こういう家ではたいがい女性の意見がまかり通るんだろうなぁ。

がんばれおとうさん!