『黒澤明』監督作品をドラマでリメイクしたのを観ました。

2作ありましたが、2作目の「生きる」は実は観なかった。観たんだけど観なかった。

10分で不快感を覚え、20分で苦痛を感じ、30分で耐えられなくなった。

オリジナルの映画版は志村喬が演じており、僕は観てないけど、松本幸四郎はまだ若いと感じました。それをメイクで老けさせてるんだが、そこにはどうしても無理がある。最初の不快感はそこでした。本来はもっと別の役者にオファーがあったんでは?などと考えてしまいました。役者はそこそこのを使ってるんだが、そこに登場した深田恭子さん、あなたは浮いている。それが次の苦痛。合う合わない以前に「学芸会じゃないんだから」。まぁ、ああいうキャラとはいえ、それで通用する役というものがほかにあるだろうと思います。筒井康隆の原作だったか、「富豪刑事」とかいうやつ。ああいうキャラクターならそれでよかろう。つまりコメディ色のつよい作品です。人間ドラマに深キョンは耐えられない。いや、もう思い出すのもきつい。義理の娘役の畑野浩子?トゲのある役なんだろうけど、現場はよくあれでオーケーしたもんだ。その辺にいたコンパニオンにセリフ棒読みさせて間に合わせた印象。若過ぎて違和感ありを我慢しながら松本幸四郎の懸命な演技に付き合ってたけど、周囲を固める役者のトーンが噛みあってない。ちぐはぐだった。途中で観るのやめました。


その点「天国と地獄」はとても楽しめましたね。佐藤浩市といい、鈴木京香といい、やっぱりよかった。刑事として登場した面々がまた揃ってる。阿部寛に杉本哲太、伊武雅刀に・・・あと誰だ?犯人役の妻扶木聡も影をよく出してたし、誘拐される男の子の父親で運転手役平田満の必死さがまたまたよい。

ストーリーやらはもう言いません。僕はオリジナルを観てないけど、劇中に携帯が登場して、それを駆使しているところを見ると、かなり現代風にアレンジされたもののようです。純粋にはらはらドキドキがあって楽しめました。終盤で犯人を泳がせて、刑事を総動員して追跡するくだりはやや間延びした感がありましたが、売人を演じた女の子が思いのほかよかったから許す。キャリアはそれほど感じない、見慣れない顔でしたが、あのキスシーンはかなり印象的で、きちんと影も演じる力があるようです。これからちょくちょく出てきそうな女優さんです。刑事役にかんでた(たぶんモデル出身の)女性よりよっぽどよい。もしかしてキスミントのCMに出ていた子ではないかなぁ。


難を言えば、阿部寛は相変わらずカツゼツが悪く、「今なんて言った?」とたびたび巻き戻しを余儀なくされました。それに、これは自分が悪いんだが録画時間をミスって5分ショートしちまった。妻扶木が死の恐怖に怯えて叫び狂う場面で切れちまった。まぁ話の結末そのものは終わってたからいいか。


吹石一恵は女の子からぐっと脱皮しましたね。2年くらい前、NHKの「氷壁」で山本太郎の妹役を観ましたが、あの時はまだまだ力入りすぎてて、「まぁ可愛いから許す」ってレベルでした。TBSの「山田太郎ものがたり」を観てますが、ここでやってるマゾ役はなかなかおもしろくていいです。現実にはいないけど、一瞬を切り取ったらばあぁいう仕草はうなずけるという表現をちゃんとデフォルメして、独特のキャラを作ってます。役者はやはり、濃淡や明暗、光と影を自然に演じきれるようになって一人前なんでしょうね。抑制を効かせた中での複数の顔ですね。


それにしても今回の「黒澤明スペシャル」。第一夜と第二夜の出来の差が激しいと感じたのは僕だけでしょうか?第一夜に予算を割き過ぎて、第二夜はやっつけになっちゃったんじゃぁないでしょうね?

レギュラードラマがひととおり最終回を迎えるようで、ぼちぼちまた単発のスペシャルドラマがいくつかあるようです。楽しみですね。