9月1日、広島市民球場での対中日戦。史上38人目の2000本安打を達成!

95年に右アキレス腱を断裂し、2000年には左アキレス腱も手術するという両足に故障を抱えての、それを乗り越えての勲章。野球選手が両足ケガしたら、もうほとんど絶望的かと思うが、それでも彼はあきらめなかった。頭が下がる思いだ。


データを見ると、彼は三振が少ない打者だそうだ。今季ここまでの24三振はリーグ最小で、過去3シーズンを見ても規定打席到達者で最も三振が少ないそうだ。更に、過去9度の規定打席到達シーズンにおいて6度のリーグ最小三振だそうだ。簡単にはあきらめない男なのだ。

また、前田の長打率4割8分9厘は秋山幸二(現・ソフトバンクコーチ)4割9分1厘や野村克也(現・楽天監督)5割8厘と遜色がない。2000本安打達成者の中で、前田以上の本塁打を打ち、かつ打率3割以上をマークしているのは王貞治、落合博満、張本勲、長嶋茂雄、松井秀喜の5人しかいない。

つまり前田は長打力があり、3割を打てて、更に三振が極めて少ないという相手球団が最も恐れるタイプの巧打者だとわかる。


どうりで、広島での巨人戦では何度となく最終回に同点本塁打を打たれたし、中盤にあっさり追加点のタイムリーを放つのも前田だった気がする。敵ながらあっぱれ!!

そういうデータを見ると凄いことがわかるのに、今ひとつスポットライトを浴びる機会に恵まれないというのは、やはり広島カープにいるからかもしれない。彼がヒットを打っても後続が続かず、打点をしっかり挙げてもあとの投手が打たれて敗戦というパターンがままあるのかなと思う。黒田投手もそうだが、自分の仕事を他球団の主力と同等或いはそれ以上にこなしても、どうしても目立たない。悲しき弱小球団・・・。

が、その分黒田も前田も広島カープを人一倍愛している。

「俺なんかを応援してくれて・・・ありがとう」

やっと絞り出した前田のそのひと言に、もう見ている方ももらい泣き。

巨人の敵なんだけどもらい泣き。


「打席で集中できなかった。あんな凄い声援の中で打席を迎えた事なんてなかった。慣れるまでに4打席かかった」このコメントは彼らしい。あと1本に迫って迎えた試合で、ようやく5打席目に出た安打についてだが、これは4打席凡退した事の負け惜しみというよりは、やはり異常な緊張状態にあったという正直なコメントだろうと思う。


故障との戦いについては「現実を受け入れるのに時間がかかった。リハビリが自分の残された道だった。やらなければ、全てが終わり。きれいごとは言ってられなかったし、夢中でやってきた」この言葉には、とても重いものがあると僕は思う。人は誰でも挫折を味わい、その現実から目を背けたり、言い訳を用意したりするもの。が、彼は時間はかかりながらもそれを受け入れた。そうして、自分に出来る事は何か・・リハビリして復活する以外にないと心に決め、そしてやり遂げたのだ。やった人間だけが口に出来る言葉だ。


ナイター中継で江川卓がよくこうコメントする。

「このホームランはきっぱり忘れて切り替える事でしょうね」

そう、前田に打たれたホームランに関してだ。

「あの高さであそこに投げた、あのボールを、ホームラン出来るのは前田選手だけです」

「失投でもなんでもありません」「前田選手にしか打てません

そう言わしめるほどの天才打者が、リハビリに精を出す以外ない状況と、その心境は他人には絶対に想像できないだろう。

凄い事をやってのける人は、プロフェッショナルとしての技術、ケガで挫折しても不死鳥のように甦る体力、そして、何よりもそれを支える心が強いのだなと改めて思う。

心・技・体という事だ。

本当にこころからおめでとうを言いたい。


朝青龍に伝えたいニュースだ。


データに関しては、小野俊哉氏のサイト↓を参考にしました。添付の写真もです。

http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/column/200709/at00014519.html



前田2000本