うちの店は狭いので、食材の保管用に、店の裏に冷蔵庫を置いています。裏口から出ないといけない。実際、営業中に何度も裏の冷蔵庫と店内を行ったり来たりする羽目になります。店内にいる姉の横をすり抜けて裏に行ってた時に、姉が母に話し掛ける言葉が耳に入りました。
「朝、醤油ば蹴ったって?」
僕は冷蔵庫をまさぐりながら思ったものです。全く、母にも困ったもんだ。なんで醤油を蹴ったりなんかするんだ。だいいち、蹴るような場所に置いとく方が悪い。どうせ、びんから醤油差しに移してて、その作業がきちんと終わらないうちに他の事をやり始めて、それで床に置きっ放しにしていたんだろう?それをすっかり忘れて、また更に、何かをやってる時に蹴ってしまったというわけだ。そんなの子供だってしないぞ。
僕はあきれつつ、店内に戻って二人に向かって、つい、やや問い詰めるような口調で聞きました。
「醤油ば床に置いとったとね?」
「・・・は?」
「醤油ば蹴ったとやろが?」
「・・・何の話?」
何だよ?今言ってた事を・・・とぼけんなよ。
「今、言いよったやろ?朝、醤油ば蹴ったって!」
しばしの沈黙の後、二人同時に口を開きました。
「『朝青龍負けたって』言うたとぉ!!!」
「朝、醤油ば蹴った」
「朝青龍負けた」
負けるなんて滅多にない朝青龍が、負けたという事で、いくらか信じられないという勢いで言ったみたいです。「あさしょうりゅまけぇたぁ~てぇ?」
3人揃って大笑い。
お客さんがいたから口を抑えて、腹も抑えて苦しみ笑い。