この番組は四月に放送があったそうです。そして、第1回日本放送文化大賞グランプリ及び平成17年日本民間放送連盟賞最優秀賞を受賞したのだとか。

いい番組でした。この感動を忘れない為にも、番組の中で取り上げられていた高校生たちの、印象的な言葉を残しておきます。


自分がどんなにきつくても、誰かを支えてあげたい。

浪人はしない。親に迷惑かけるので。ダメだったら就職します。

がんばります。どんなに難しくても、決めた事なので一生懸命やります。

看護学校進学を目指す田鎖(たぐさり)さんの言葉。漁師の娘。


自分の事ををダメな奴と思いたくない

光をあてられて、やっと輝くんじゃなくて自分から光っていけるような大人になりたい

さん。北海道大学進学を目指すが、番組内では不合格となり、予備校へ行くところまで描かれる。


物心ついた時に思った夢が「教師になる」こと。

≪1年間の期限付き採用で≫別海高で国語の教鞭をとる佐藤圭子先生。7年連続で教員採用試験に落ちている。学校から帰宅すると、自分の勉強を始める。毎週土曜日の夜、深夜バスで札幌の予備校へ片道9時間。札幌に着くのは日曜日の早朝。週に一度の集中講義を受ける。夜10時、深夜バスで再び別海へトンボ帰りをして、そのまま高校での通常勤務。他人が聞けば、「もうやめなよ、そんなの」と言われそうです。


「人の弱みがわかる、人の痛さがわかる。そういう人間であり続けてくれれば、充分ですよ」

清野(せいの)先生の父親の言葉。清野先生は独身の32歳。東京から教員採用試験に合格して赴任した初めての地が北海道でした。この別海高校で10年を過ごしています。30歳前半で、既に頭部は涼しくなっています。それでも生徒たちに大いに人気があるそうです。小学校の時から愛読している少年ジャンプを毎週欠かさず買い、夕食はコンビニの“具のない”ヤキソバ。僕はいくらか同情を持って見ていましたが、番組の後半、可愛らしいヘアカッターと結婚すると聞いて、びっくらこきました。よかった。


酪農をやっていると、自分で色んな事を・・「こんなこともできる」「あんなこともできる」・・可能性があるじゃないですか。これは大学進学を夢見る森重(もりしげ)君の言葉。就職して欲しいと願う親の希望に敢えて抗い、先を見据える。


他にもたくさん登場しました。

過労で倒れた酪農科の漆原(うるしはら)先生。

中学から新聞配達を毎日続ける金井(かない)君は母1人子1人。

交通事故で父親を失い、進学をあきらめて就職した佐藤さん。彼女がキャプテンを務めるバレー部は全国大会に出場しますが、準々決勝で敗れました。番組後半で、彼女の姉(同様にかつてのバレー部キャプテン)が大学を卒業すると教員採用試験に受かり、あの佐藤先生と入れ替わりに別海高へ赴任します。そして、妹の成し得なかった夢を姉が引き継ぎます。


番組は淡々と描かれていました。北海道の自然を殊更に礼賛するわけではなく、都会で過ごす人たちより大変なのだと強調する事もしません。普通の人たちの、それぞれの家族とその事情。親は子を思い、子は親への感謝を決して忘れない。金井君がいい例です。彼は言います。「親父いないのに、ここまで育ててくれて、母を尊敬してます」その母は言います。「子供がいるおかげで、今がある。(子供が)いるから全部頑張って来れた。私一人で生きてるんじゃない」この町で就職して母の傍にいるつもりだった息子に、母が反対する。「親の傍にいても・・・やっぱり社会勉強した方が」

息子は番組後半、自動車整備の学校へ進学します。


田鎖さん、志望校のひとつに合格!

佐藤圭子先生、8年目にして教員採用試験に合格!

森重君は大学に進学しました。これからの酪農をきちんと学んで、近い将来、新しい酪農を実践してくれそうです。


北海道に生きるという事は、それだけで大変です。自然と闘い、自然の中に生きる。それぞれの目標をきちんと見つめて、それをちょっとやそっとでは決してあきらめない強さ。学ぶべきところ大です。しかも、彼らはみな定時制の生徒たちです。仕事をこなしながらの日々。

番組では、この別海町を離れて東京の大学に通う柏葉(かしわば)さんも描いています。「自分が変わってしまった。もう(別海には)たぶん戻らない」それでも、「みんな元気にしていますか?」と心配する様子も見せていました。


最果てのまちで、誰の目に触れることもなく、草原にぽつんと立っている1本の桜の木。長い冬の、厳しい風雪にさらされて、木は傾き幹はぼろぼろに剥がれています。桜の開花を伝えるニュースが人々から忘れ去られた頃、その桜の木が花をつけました。本土に咲く桜のように華やかではなく、華やかさを隠すようなささやかな花です。しかし、その控えめな姿の中にある懸命な美しさ。にっぽんの桜の花です。


フジテレビも、こんな素晴らしい番組が作れるんだから、やらせだとか、特定の企業を貶めるギャグをそのまま放送するとか、そういうポカはもう勘弁して欲しい。これは僕の勝手な推測だけども、あの「北の国から」を製作したスタッフの精神が息づいていると感じました。「白線流し」もそうかなと思います。実にいい番組でした。


彼らは、きっとそれぞれの場所で懸命に今を生きているのだと思います。素晴らしい時間を過ごしながらも、人間は環境が変わるとたやすく「折れる」面を合わせ持っています。そんな時、「あぁ、自分は変わってしまった」と気付いたら、またあの凍れる海や、横なぐりの吹雪や、緑豊かな大地を胸に取り戻しに、別海に戻ったらいいと思います。故郷はいつでも故郷のまま迎えてくれる事でしょう。


かつて東京で10年ほど過ごして、「田舎には帰りたくない」と考えた時期が僕自身ありました。故郷で日々を送る今、東京に帰りたいなどという気持ちは全く湧きません。