今回がまとめだと書きましたが、もう少し書くことになりそうです。


この連載は、日本一のチームが決定する前に書き終えるつもりだった。しかし、ロッテは信じがたい「3試合連続2けた得点」で3連勝してしまったのだ。しかも、阪神は3試合で2点しか取れないという、悲惨な状況。僕は巨人ファンなので阪神の負ける姿が見たかった。しかし、プロ野球の将来を思うとロッテに勝ってもらっては困るのだ。これは、僕が憂えていた最悪の状況である。


前述したとおり、ロッテは投手、野手、共に素晴らしい成績を残していて、相手チームにとっては、これはかなりの脅威になる。

だがしかし、この状況をファンの目で、観る側の魅力としてちょっと考えてほしいのだ。


[野球というスポーツの魅力]


野球の華はまずは何といってもホームランだ。一振りでスタンドまでボールを打ち込んでしまうその刹那、その快感!これがあるから逆転というドラマも生まれる。そして、打とうとするバッターを空振りさせてアウトにする、空振り三振の天と地だ。攻めと守りの緊迫した空気を一瞬で弛緩させる、あの歓喜!


プロ野球の歴史はスーパースターたちが作り上げてきたものだ。王、長島、張本、掛布、江川、江夏、杉浦、野村、落合、野茂、外国人はバース、クロマティ、ブライアント、デストラーデ、キーオ、ホーナーなどなど、時代はめちゃくちゃだが。彼らが実に個性的だった事を思い出して欲しい。人気のある野手は、だいたい中軸が多い。それは、試合を動かし、決定付けるホームランを打てる人だから。投手の方は、やはり三振を取れて、完封や完投を期待できる人たちだ。そういう人たちの一挙手一投足をファンは固唾を飲んで見守った。

一方、ホームランを打てる打者というのは三振するリスクを常に負っている。また、すごい投手も暗転のリスクからは逃れられない。8回までパーフェクトピッチングでも、9回にホームランを打たれて負け投手になる可能性がある。

では、ロッテにホームランを打てる長距離打者(4番)がいるだろうか?

いないと思う。「ロッテの打者だってホームラン打ってるよ」「そう、確かに」

けれども、「ここで、一発頼む!」という周囲の期待に応えたホームランと、「さあ、どうかな?」と思ってたら打って、それが「結果的にホームランになった!」というのにはかなりの開きがあると思うのだ。

先発投手が完投するには最小失点で回を重ねるのは当然で、しかし7回や8回が一番きついとよく(解説者のコメントで)言われる。そのあたりで味方から追加点(という勇気)を貰って球が走るとか、あるいはダブルプレーでピンチを切り抜けて乗っていく。そうして完投してこそ「これで一皮むけた」「存在感を示した」などと評価される。つまり、プレーボール!の第1球からゲームセットの瞬間までは、投手にとってのひとつのドラマでもある。見る側はそこに選手ともども達成感を得る事が出来る

では、ロッテの投手にそれを期待できるだろうか?渡辺は8完投しているが、それは多分、少なくとも5点前後かそれ以上の点差があったはず。セーフティーリードがあるのなら、ドラマとしては盛り上がりに欠ける。


長島茂雄がかつて、空振りした時に派手に見えるように「わざとサイズの大きいヘルメットを使った」ことはよく知られている。元ヤクルトの池山は一発を打てる人気者だったが、ニックネームは皮肉にも「ぶんぶん丸」だった。元近鉄のブライアント(今季はオリックスの打撃コーチだったが退団)は現役時代、三振かホームラン(かゲッツー)という両極端だった。今季の巨人ローズもそうだ。阪神が久しぶりに優勝した1985年を語るには、バース・掛布・岡田バックスクリーン3連発が欠かせない。メジャーに行った中村紀「全打席ホームランを狙ってる」と常に豪語していた。(今はまだ)巨人の清原もやはりホームランを常に意識していて、それだけの数字を(本塁打数に関しては)残している。ただ、彼はデッドボールをよける技術がない。これは、西武時代のコーチ(黒江さんだったかなぁ?)が「教え損なった」と言っている。みんな愛すべき選手たちだ


時代を超えて愛されるヒーローたちは、みなウイークポイントを持っている。ウルトラマンは3分間しか戦えないし、黄門様は印籠を取り出すまではただのじじい。キカイダー(ちょっとマニアック?)は笛を吹かれるともがき苦しむし、ブラックジャックは天才的な外科医にもかかわらず無免許医師。マジンガーZだってパイルダーオンする前は鉄の塊に過ぎず、エヴァンゲリオンは・・・ちょっと暴走した。


ロッテの戦い方は、ある意味で個性を排除する。それぞれの選手が持つ能力の「いいところだけ」を取り出し、寄せ集め結果として試合には勝つ。もちろん試合に勝つことは大事で、負け続けてはつまらない。誰もが優勝を目指して戦っているが、今年のロッテの強さを見ていて、僕は応援する気にはとてもなれないのだ。


次回こそまとめです。