午後から仕事を休んでクリニックで造影CT検査を受ける。一昨日のMRIの結果と合わせて転移の有無がわかるはず。今後の治療計画、つまり乳房の温存が切除か、それが決まる日ということ。
がんの告知よりある意味緊張して臨む。検査後の医師の診察には夫も立ち会うことに。夫は告知の際に立ち会わなかったことを気に病んでくれているようだったのでお願いした。(私は告知の際に立ち会ってもらおうとは露ほども思っていなかった。立ち会われた方が取り乱す気がしたので。)
CTを待つこと20分。意外と待たされるなと周囲を見渡すと、私だけ検査用ファイルを手に持っている。「ファイルは受付に渡すんですよ」と隣の女性が微笑みながら教えてくれた。慌てて受付へ。
「ありがとうございます」
「いえいえ、結構待たされますよね」
明るく感じの良い綺麗な人。この人も乳がんなのかと思っていると、話かけてくれた。
「CTははじめてですか?」
「はい。先日初めてMRIも受けたんですが、うるさくてびっくりしました」
「CTはうるさくないから大丈夫。私、再発なんですよ。だからCTは久しぶり」
「再発ですか、大変ですね…」
ここで女性の番が回ってきた。
じゃあね、と手を振って検査室へ。
今ここで検査を待つ人はみんな乳がんなんだ…。
仲間のように感じてしまう。
その後、その女性は検査後も手を振って「がんばって!」と去っていった。
乳がんの先輩であるその女性は、実際のところは歳下だろうが、こちらを安心させるような先輩風がとても自然で素敵だった。
本人も不安だろうに、自分に起こったことをフラットに受け止めていた。
また会えたらいいな、と思いつつ、自分の番を待つ。
その後CTを受け、次は医師の診察を待つ。検査が長引いたせいで予定時刻を1時間近く過ぎ、夫はひとり、カーテンで仕切られた男性用待合室で待っていた。
名前を呼ばれ、立ち上がる。夫も即座に出てきた。ずっと気を張って待ってもらってすまないな、と思った。
乳房の画像を見ながら検査結果を聞く。
「他に転移はなかったので1箇所だけ切除します。乳房は温存で大丈夫でしょう。場所も乳房の下の境目部分なので傷も目立たないと思いますよ」
告知の時には表情が無く淡々と冷静に話した医師が今回はニコニコと穏やかに話してくれる。
その表情にこちらもほっとして、
「よかった!ありがとうございます!」と和み、
「ガンの大きさは何ミリですか?」と調子に乗って尋ねた。
「7ミリです。触診ではわからなかったですか?」
「全くわかりませんでした」
「少し触ってみますので胸見せてください」
夫が横にいるためかなり気まずかったが、応じないわけにはいかない。
「やはり触診ではわかりませんね。検査でないとわからない大きさです」
今の触診は果たして必要?と微妙な気持ちになりながらも、転移もなく乳房温存に喜んでいる私なので、そこは気にしない。
画像に映る私のガンは米粒ほどの大きさで、夫もそれをみて安心したようだった。
その後、看護師から手術や入院の説明を受け、入院前の検査の予約を取り、クリニックを出た時はすでに夕方だった。
4時間近くかかってしまったが、想定していた中で最も軽い結果だったことの安堵からか、疲れは感じなかった。
「歩いて帰ろうか」
「うん」
「食べて帰る?」
「ううん。おうちでヘルシーメニューを作るわ」
よい結果だったこともあり、夫が横にいてくれてよかった。
日は落ちつつあったが、視界は明るく感じられた。
とても長い1日だった。
でも今日のこの気持ちはずっと忘れずにいよう。
本日の医療費:9,360円