■戦評■J1第25節 大宮VS磐田 「スクラップ&スクラップ」 | picture of player

■戦評■J1第25節 大宮VS磐田 「スクラップ&スクラップ」

最近Jの試合をレビューしてないので、これはいかんと思いました次第で。

■大宮0-2磐田

■短評
崖っぷちも崖っぷち、崖っぷち過ぎて半歩くらい踏み外してる感じの大宮、アジウソンがやけくそ辞任で内山監督が初陣の磐田。互いに問題が多そうな対決は、よくわからないままに磐田が勝ってしまった。

大宮は紆余曲折を経て結局4-4-2に回帰。迷走とも言う。キーパーが江角、DFが右から西村、レアンドロ、冨田、波戸、MFが中央に小林慶、片岡、右に大悟、左に藤本、2トップが電柱森田とスティーブン・セガール。対する磐田は、4バックから伝統の3バックに回帰。回帰ばっかか。キーパーがJだと割と普通の川口。3バックが加賀、大井、茶野、MF中央にファブリシオとマルキーニョス・パラナ、右に太田、左に村井、トップ下に西で2トップは前田と人間原子力カレン。

前半は大宮ペース。磐田がシステム変更で若干の迷いが見られ、再三にわたって藤本に左サイドの太田の裏のスペースを使われてピンチを招く。15分頃の森田へのクロスは決定的だった。太田をウイングバックで使うのは結構勇気がいるかも。ただ、大宮の攻撃もそれほど鋭かったわけではなく、チャンスをいくつか潰してるうちに徐々に沈静化。対する磐田もそうこうしているうちに西が禿げすぎて怪我をして上田と交代。かと言ってうまくいってなかった攻撃が改善するわけでもなく、のたのたとボールを回しては大宮に刈り取られるばかり。DFラインが低く、押し上げも緩慢なので、パスコースが少ない。それでも能力の高いブラジルボランチがなんとなく前に進んでいくのだが、頼みの前田はかっちりと大宮CBに捕まえられていて、中々ボールを収めることができない。そのため、両サイドも上がることができない。たまに前田にボールが入っても、動き出しが非常に鈍く、寝ている始末。カレンは相変わらず走り回っているがそこにボールが供給されることもない。うーん、手詰まり。大宮も半年くらい前から手詰まり。前半終了間際にはぼーっとしてた大悟が故障して、代わりに橋本。しかし、特に何も起こらず。そのまま終了。なんとも歯がゆいというかがっくりと肩を落としてしまうような、まあ要するに相当退屈な前半だった。なんか息が詰まりそうというよりは、呼吸すら忘れそうなほどぽやんとした試合。

「だ、大丈夫…きっと後半は極上のエンタテイメンツが見れるよ、解説の人が『ずるずる』とか言ってるけど、きっと大丈夫…だって俺サッカー大好きだもん…」と、ちょっとでも気を抜くともうテレビ消して酒でもかっくらって寝ちゃおうという気分になるのをなんとか抑えて、後半。そんな俺の願いが通じたのか、試合は若干スピードアップ。まあ、大宮が不毛なサイドアタックを止めてスティーブン・セガールのキープを軸に使い始めたからなんだけど。彼のナイスなキープ力は本物で、ボールが入ればほとんど取られないので、動きが少なかった大宮の選手が追い越し始めてチャンスを作った。また、それに引っ張られるように磐田DFもずるずると後退。それによって電柱森田の空中殺法が生きてくる。後半序盤は確実に大宮のペースだった。こりゃ時間の問題かと思われたが、ほとんど何の脈絡もなしに上田が2トップとワンツー気味に中央を抜け出して磐田が先制。なにこれ。サッカーってわかんねえもんだなあ。これでようやくこの試合の性格が決まり、磐田は専守防衛。大宮はそれをどうにかこじ開けようとするのだが、対人能力が高い磐田DF&ブラジルボランチが本気になって引くと、非力な大宮攻撃陣ではなかなか崩せるものではない。捕まえきれてなかったスティーブン・セガールもCBとボランチでしっかりと挟むようになり無効化。そうこうしているうちに、別にカウンターでもないのだけれどなんとなーくカレンのスルーパスから太田が決めて、2点目。これで勝負あり。大宮は電柱森田でポートボールを始めるが、それも実を結ぶことなく、試合終了。

大宮はこれでまた断頭台へと一歩近付いた。横浜FCはほぼ確定なので、甲府、大分あたりとの入替戦を賭けての戦いになるだろう。磐田を相手に悪くない内容だったのだが、それでも勝てないのは仕上げの仕事をする選手がいないから。パス回しはそれなりにできるのだが、PA近辺からは手詰まり感が強い。スティーブン・セガールが加入してタメが出来るようになったので、もう一人くらい仕事ができる選手がいれば…。そういう意味では、大悟の負傷退場は相当に痛かったと言えるだろう。長引かないことを願うが、戻って来れない場合にはセガール拳を炸裂させるか、森田の爆撃に期待するくらいしかないだろう。ただ、下を向いていてもしょうがない。開幕時の「もうどうにもなんねー」という絶望感漂う状況からは脱出しつつある。間違ってはいないので、セガールを中心にしてチームの完成度を上げていき、なんとか入替戦までたどり着くのが目標だろう。現状、タメができたと言っても、それをサポートする選手の動きはそれほど鋭くない。そこを改善できれば目は出てくる。ただ、完成度が低いのは中断期間終わったあとに監督を切ったからなんだよなあ…。

磐田はなんだかなあ、という内容。アジウソンの分裂気味の采配もよくわからなかったが、今日の出来も選手の質を考えると寂しい限り。DFラインが深く、全体的に鈍い押上げに終始するので、スピーディーな攻撃を見せることは稀。また、パスもつながりづらく、ブラジルボランチが苦労して前に運ぶことがほとんどで、全盛期の流麗なパス回しは見る影もない。動き出しが鈍いのは疲れもあるのだろうが、システムが変わったばかりでまだ各選手が自分の役割についての理解度が低いこともあるだろう。やはりシーズン中に監督を代えると難しいね。現実的な目標は、新戦術の理解と来シーズンへの準備だろう。ただ、順位的には目標を立てにくい位置にいるのも確かだし、さらに来シーズンも同じ監督だとは限らないんだけれどね(笑)

■picture of player カレン・ロバート
五輪代表からは三行半を突きつけられ、チームでもまるで使われずという、共産主義者ならデモでも起こしそうなほどの不満を抱えていたわけだが、久々のスタメンでうやむやのうちに2アシストの結果を残した。2トップなら前田のパートナーは彼だろう。中山の系譜を継ぐ労働者系FWのためフィニッシュの局面で力が残ってないことが多々あったが、アシストをしたということは改善の兆しありか?エースの前田も超人ではないため、彼のサポートが今後の磐田の攻撃の浮沈を決めることになるかもしれない。しかし、この人ほど見た目以外にハーフであることがプレーに影響しない人も珍しい。純日本人よりも日本人的。サッカー界のウエンツ瑛士と呼ぼうではないか。