ワールドカップ短評 21 | picture of player

ワールドカップ短評 21

■ドイツ0-2イタリア
■短評

もう理屈も何も関係なくなる準決勝。ドイツは出場停止のフリングスに代えてケール、シュバインシュタイガーに代えてボロウスキー。対するイタリアはベスト8と全く同じ形。序盤は激しいプレス合戦、そして信じられないくらいの攻守の切り替えの早さ。特にイタリアのプレスはすさまじく、ボールを持った選手にオートマティックに2人、3人と囲い込んでいく。試合終了まで持つのか、というほどの勢い。ボールを奪ってからはピルロ、トッティのキープ力を生かして、後方からザンブロッタ、グロッソ、ペッロッタがどんどん進出してくる。ドイツもプレスをかけてはいるのだが、トッティやピルロの技巧に翻弄され、捕まえ切ることはできない。それでも、大会開始前の出来が嘘のような高いパフォーマンスを見せるドイツDFラインが瀬戸際で止め、徐々に試合は落ち着き、15分過ぎくらいからは徐々にドイツもチャンスを作り始める。ネスタの代役のマテラッツィにスピードがないため、ポドルスキーにはいいように振り回され、2トップ間のコンビネーションにボロウスキー、バラックが絡む展開。しかし、それも単発に終わる。前半の決定機はシュナイダーのシュート1本くらいか。チャンスの質、内容ともに、総合的にはイタリアのペースの前半だった。ピルロの低い位置でのゲームメイクにプレッシャーをかけなかったので、イタリアは比較的自由にゲームを組み立てることができたが、しかし得点を奪うことができず、0-0のまま後半を迎える。後半も流れはあまり変わらない。しかし、前半のハイペースが祟ったのか、徐々にイタリアの寄せが遅れはじめ、中央のバラック、ケールがゴール前に進出し、ドイツに試合の主導権が移る。ここで、この試合の転換期が訪れる。イタリアは、25分過ぎから試合を一時的に「眠らせた」。自陣に引き、トニへのロングボールが多くなり、DFラインでのパス回しが増えた。まさかこんな約束事があるとは思えないのだが、それでもイタリアは共通理解を持って作戦を遂行していた。苦しいときには引いて、不恰好でもとりあえず守り切る。それがイタリアのDNAということなのだろう。試合運びのうまさ以上の、何か得体の知れない集団戦術を見せられたようだった。この一時的冬眠が、延長に入ってから功を奏すことになる。後半の終盤攻め立てていたドイツは、延長に入るとぱったりと足が止まり、ゲームは完全にイタリアのものに。1度のポスト、1度のクロスバーなど、終始攻め続ける。交代も積極的なものだった。イアクィンタ、デル・ピエロ、ジラルディーノを投入し、3トップ+トッティという、一体どこの国なんだというくらいやけっぱちの攻め方。攻めに出たために危ない場面もあったが、そこは現在世界GKランキング1位のブッフォンが防ぎきった。そして延長後半終了間際のグロッソのゴール、最終盤のデル・ピエロのゴールが試合を決める。この2つの得点は決して偶然ではない。イタリアは、2度の消耗戦を経て94年以来の決勝へ。ネスタ以外には欠場もなく、ほぼベストのメンバーで臨むことができる。試合内容もバランスがよく、相手はどちらが来ても、いい試合を期待できるだろう。ドイツは、途中投入の選手があまり機能しなかったのが痛かった。シュバインシュタイガーは明らかにキレをなくしていて、ノイヴィルには時間が足りなかった。オドンコールだけは相変わらずの無法っぷりだったが、やはりクロスの精度が松木安太郎の解説並に的外れではどうしようもない。ただ、それほど地力の高くない戦力で、地元の後押しがあったとはいえ、ベスト4は立派な成績。大会前の出来では、ライブドア株の値動き並に不安定だったが、この1ヶ月で最も成長したチームだったのではないだろうか。ただの変な人だったクリンスマンも、積極的な采配とモチベーターとして奮闘、これで男をあげた。ただ、この後、どうすんでしょ、監督。若いチームで、2年後、4年後が楽しみなため、是非ドイツ協会には舵取りを間違わないで欲しいものだ。


■picture of player ファビオ・カンナバーロ
1対1で無敵の強さで得点王クローゼを完封。空中戦、地上戦ともに穴がないが、特にくさびのボールに対する出足の鋭さは常軌を逸している。相棒のマテラッツィがイマイチおとぼけのため、カバーリングまで数多くこなさなければならなかったが、まだまだ余裕がありそうな感じ。君臨する一人カテナチオ、このまま無失点(ザッカルドの超絶オウンゴール除く)でいけば、MVPあげてもいいんじゃないか。たぶんもらえないけど。