女性は年を重ねても元気なのに、

男の方は定年退職と共に老けてしまう。


私の日本の同級生とアメリカで人生を送った同年輩の日本女性をくらべてそう思うのだが、数年前まで私は女性との関わりはなかった。 


この五年くらい、詩誌『短調』と同人誌『新植林』に原稿を送って初めて女性の友達ができ、その人達の数年を見ていても、いつも生き生きとしていて、男の友達がだんだん置いていかれている気がする。


「女の七十花盛り、男の七十枯れすすき」とは、私の友達ばかりではなく、私も枯れすすきの一人だが、自分ではそれほど自覚はなくても、世間から見れば枯れすすきにすぎない。


彼女たちのエネルギーは泉のように湧いて出て、涸れることを知らない。


その中にいる私は風前の灯だが、同窓の男たちの分まで頑張りたいと思っている。


私にも青春時代はあった。


その同級生が七十を超えて同窓会をやるが、友達から連絡があっても行かない。


行かないというより行きたくない。


同窓会と言っても、七十過ぎの男の集まりだから面白い話はなく、身体の不調や薬、医者の自慢、女房の悪口、愚痴となると、行く前から結果が見えていて行きたくない。


数年前に、それほど親しくない同窓生に会った。


たまたま私の親友の家に来ていたからだ。


私は黙っているが、彼は数年振りに会って親しくもないのに多弁だ。


明らかに私よりも優位に立とうと努力している。


親しい仲なら、「うるさい、もうやめろ」と怒鳴るが友達の家だ、夫人が色々ともてなしてくれているので、じっと我慢していた。


友達は、私の性格を知っているので、気が気じゃない。


「もういい、病気の話、やめようよ」


「いや、出川、これは大事なことだ。柳田、お前、どこが悪い」


「うん、この年だ。頭のてっぺんから足の先まで、悪いところだらけだけど、医者に行かねぇから自分ではわからねぇ。そういう生活だ」


「よくねぇよ。お前みたいな奴が一番危ないんだ。そういう男が、コロッの逝くんだぞ」


「それが本望だよ」


「嘘つけ、気になるだろう。誰だって死にたくない」


「ちょっと待て…お前、医者か。医者だって簡単に診断しねぇ。お前に診断する資格ねぇよ。俺、帰るよ」


「待て待て」

と出川が止めたが、座が白けてしまった。


沈黙が続いた。


まさか私が怒るとは、思ってなかったのだろう。


同窓会に行くと似たような事が起こる。


私は酒を飲まないので酒飲みのしつこさが嫌いだが、我慢する。

                 つづく