SLというのは蒸気機関車のことだが、鉄道ファンが多く、写真撮影に遠くまで追っかけて行くらしい。
私は熱狂的なファンではないが、少年時代から大学の頃旅行した際、ローカル線で幾度も出会っている。
数人しか待っていない田舎駅に、汽笛を鳴らし蒸気を吹きながら豪快に入ってくるのを、何度も見ている。
今思うと、1人の時に、ある時は1人もいない駅に、停車するのは不経済だが、田舎駅は単線が多く、対向車を待つためにだけで停車することもあった。
踏切で、トンネルで、鉄橋で、駅で汽笛が鳴る。
子どもの頃は、それが何のためなのか知りたくて、窓から覗いたものだ。
旅先の夜更けに、1人聞く汽笛の響きには言いようのない淋しさがある。
こうしてSLのことを書いているのは、少年時代の友達が、機関士になったからだ。
河添は、中高時代の友達の1人だ。
門司には、門鉄という国鉄の管理局があって、そこで働く人の子ども達が同級生に何人かいた。
河添もその1人だ。
毎日会っても会話は少なく、1日話さないこともあるが、勉強しない私のためにノートを取り、これ多分、今度の試験に出るぞと、教えてくれた事もあった。
彼は読者が趣味だ。
自分が読んだ本を、私の机の上に置く。
それを授業中に私が読む。
私の席は教壇の真下にあったのだが、そこで読んでいた。
彼は、私よりませていた。
その頃、数少ない彼のサージの制服には寝押しがしてあって、よれよれの綿の制服の私はみすぼらしく見えたが、私の方はそれで平気だ。
彼の方が気にして、私にもサージの制服を着ろと言っていた。
つづく

