これまでのストーリー

彼が仕事に出る時に、私も一緒に仕事を手伝う。

庭の仕事にアメリカも日本もない。

友達は、名越を不器用な男と言う。

私の友達には多いタイプだ。

出世も求めず、大きな家も望まず、美しい妻と連れ立って、夫婦で1日中一緒に仕事をするのが楽しみな男だ。

それでも、しっかり者の彼女が家も建て、2人の子どもも育った。

彼1人なら、酒に溺れて何一つ残っていない。

細い体で、よくも熊のような主人を操縦したものだと、彼女を見る。

私が1人の時は、流木を拾って来て春蘭を植えたり、流木で名越造園の看板を作ったりして楽しんだ。

看板もない植木屋はない。

近隣の友達や兄弟が車を止めて、その変化に驚いていた。

私が長居していることは近隣でも評判になっていて、店に行くと、私を兄弟だと思っているようだった。

1ヶ月経っても、彼女は変わらない。

始めの頃と同じように、もてなしてくれる。

40日を過ぎると、まるで家族の一員のように馴れてしまって、違和感はない。

名越には見慣れた景色でも、私には珍しいし楽しい。

丘の上から見渡せば、一方は果てしなく続く太平洋。

西側には、遠く屋久島の宮浦岳が見える。

紅く燃えて咲く彼岸花も、砂に埋もれて咲く浜木綿の花も、見に来る人もなく咲き乱れる。

柿の木に、つくつく法師が鳴き、赤とんぼが飛ぶのを見ると、南国にも秋の気配が漂っている。

日本国内であれば、いつも人、人が重なるように訪ねて来て、これほどの花を1人で楽しめない。

丘の上のきび畑の土手に寝転んで、秋の青い、青い空を見上げた。

ゆっくりと舟のように、空の海を白い雲が流れて行き、その中に空高くとんびが舞っている。

その美しさの中で、1人眠っていた。

目覚めると黄昏ていた。
                  つづく